実在の橋をタイトルに
タイトルになった「アメリカ橋」は今でも渡ることができます。
恵比寿南橋(えびすみなみばし)は、東京都渋谷区にある道路橋(跨線橋)である。アメリカ橋の通称で認知されている。山手線の目黒駅と恵比寿駅の間にあり、鉄製で青色。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/恵比寿南橋
地名と方角を合わせた正式な名もあるようですが、今でもエキゾチックな名前は無くなっていません。
「アメリカ」という国の名前が付いた理由にはこのようなことがありました。
もともとはアメリカセントルイスで1904年に開催されたセントルイス万国博覧会に展示されていたものであった。それを日本の鉄道作業局(当時)が買い取り、鉄製の橋のモデル橋として1906年(明治39年)に現在地に架設したことが愛称の由来である。橋は1970年(昭和45年)に改築されている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/恵比寿南橋
暮らしに欠かせない橋になり、近隣の街並みも整備が終わった時代です。
それでも、残された名前に作詞家の山口洋子さんは郷愁を感じたのでしょうか。
そして、作曲は平尾昌晃さんというこれ以上ないコラボで作り上げた「アメリカ橋」。
この後は歌詞の解説にうつります。
あの日のように
再会
風が足もとを 通りすぎてゆく
久しぶりだねと 照れてわらいあってー
出典: アメリカ橋/作詞:山口洋子 作曲:平尾昌晃
歌詞に出てくるのは歌の主人公と君です。季節は冬でしょう。
冷えた「足もと」の空気を感じた時に君と再び会ったのです。
この出会いが偶然なのか、約束されたものなのかが、気になりますね。
風は通り過ぎて行ったけど、歌の主人公と君とは目が合ったのでしょう。
お互いが立ち止まったところでかけた声が歌詞に綴られています。
歌の主人公の少し大げさなくらいの「久しぶり」は周りの人にも聞こえてしまったかもしれません。
別れてから時間が経った出会いの「照れ笑い」。
思わず「笑い合う」という2人が瞬時で過去に戻ったような表現をしています。
この後の歌詞がどう展開するか、想像が膨らみますね。
2人が顔を合わせた描写から「偶然出会った」という設定がこの歌詞には相応しいでしょう。
心残り
アメリカ橋のたもと ふと通うぬくもり
やるせない恋 埋(う)めた街 角部屋の灯り
出典: アメリカ橋/作詞:山口洋子 作曲:平尾昌晃
橋は道で偶然再会をした2人の思い出の場所。
その場所であったことが頭の中を駆け巡ります。
今は別々になっている2人の間に通じる「ぬくもり」。
心に残っているのは悲しいことばかりでは無いことを、うかがわせる言葉ですね。
残念ながらその時の2人の「恋」は叶わぬものでした。そしてそれを忘れる街だったのです。
心の奥に「埋め」たことを言い聞かせて見上げた時に目にしたものは、2人が一緒にいた所の「灯り」。
思い出の中には街の建物も一緒に映り込んでいるのでしょう。
恋を失った日に見た情景に出てくる「角部屋」という細やかな描写。
山口洋子さんだから表現できる世界ですね。
若かった
石だたみ石だたみ 想い出続く
いつかいつか 熱かった青春
出典: アメリカ橋/作詞:山口洋子 作曲:平尾昌晃
アスファルトではなく「石だたみ」で作られた道。耳に残る響きで呼ばれる橋。
2人はこんなエキゾチックな空気に酔わされたのかもしれません。
あの日の2人が心の中で「想って」いたこと。
それは若かった2人がただ「熱く」燃えた恋でした。
今日の再会まで続いていると思ったのは、あの日と同じ空気の中にいるからでしょう。
「いつか」それが叶うと信じた過去の日。
そして「いつか」あの日のように再び恋がしたいという願いは今も失っていないのです。
「青春」は儚く過ぎていったけれど、一途な思いを後悔することはありません。