「ONCE AGAIN」の概要
「ONCE AGAIN」は2009年にリリースされたRHYMESTERのシングルです。
当時、二年以上活動を休止していた彼らの復帰作となりました。
タイトルは直訳すると「もう一度」。
そこに込められているのは「新たな一歩を踏み出す」という、グループとしての決意です。
アルバム「マニフェスト」
本作は、彼らが2010年にリリースしたアルバム「マニフェスト」に収録されています。
アルバム冒頭に収められているのは、「午前零時」と名付けられたトラックです。
約30秒の短い音声は、実質のオープニングナンバーである「ONCE AGAIN」につながっていきます。
実はこの「午前零時」という言葉は「ONCE AGAIN」の冒頭に登場するリリック。
日付が移り変わる「午前零時」を、グループとしての活動再開を意味するものとして引用しています。
明るくなっていないその時間に、人知れず静かに始まる新しい一日。
「新しく始まるもの」の象徴である「午前零時」という言葉から、彼らが持つ静かな熱意が感じられます。
「ONCE AGAIN」の歌詞をチェック!(前半)
「午前零時」から始まるリリック
午前零時 日付の変わる瞬間
雨上がりの冷気
感じながら誓う またリベンジ
気がつけば人生も後半のページ
なのに未だハンパなステージ
時には手痛く食らっちまうダメージ
まるでいつか使う予定のマイレージ
みたいにひたすら溜め込む
デカいイメージ
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
曲冒頭の宇多丸さんのヴァース。
既に述べた「午前零時」というセリフをベースとして、韻が重ねられていきます。
本作のテーマとなっているのは、彼らの曲に頻繁に登場する「まだ成し遂げていない自分」です。
ヒップホップを愛し、その本場である海外にも見劣りしない日本のヒップホップ文化を作り上げていく。
そんな彼らの心意気は、グループとしての活動再開における原動力となっています。
まだ暗いうちから、もう一度チャレンジしようと心に決める「リベンジ」。
「よし、やるぞ」という声が聞こえてくるようです。
「マイレージ」という言葉は、ハードコアな表現に寄せすぎない、宇多丸さんらしいものだと感じました。
諦めきれない想い
誰のせいにも出来ねぇし、
したくねぇ
「夢」別名「呪い」で胸が痛くて
目ぇ覚ませって正論 耳が痛くて
いい歳こいて先行きは未確定
きっと映画や漫画の見過ぎ
甘いコトバ聴き過ぎで
時間のみ過ぎ
ガキの好きそうなことばっか病みつき
この男、誇大妄想家につき
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
いつまでも心に描き続ける願望は、良く言えば「夢」であり「憧れ」です。
近い将来に達成することが出来るそれらは「目標」でもあり、「展望」とも言い換えることができます。
しかし、叶いもしないものに対して執念深く送り続けるその想いは、言い方を変えれば「怨念」のようなもの。
「目ぇ覚ませ」という周囲の言葉に、「自分は間違っているのではないか?」と感じる日もあるはずです。
彼らの奮闘を描いたこのヴァースは、夢を持って行動するすべての人の心情を言い表しています。
「この男」部分のリリックは、北野武監督のデビュー作をもじったものでしょうか。
アイテムから感じられるライフスタイル
くじけなさは異常
ほとんどビョーキ
ゼロからスタートは一緒
荷物は放棄
失うもんは最小 得る方が大きい
財産は唯一最初に抱いた動機
気分はヤケにトウが立った
ルーキーズ
午前零時 新しい日の空気
オレは古着 だが洗い立ての
ブルージーンズ
そのドアを開いて振り絞る勇気
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
彼らのファンであれば、「ほとんどビョーキ」というセリフに思わずニヤリとしてしまうはずです。
もともとは映画監督である山本晋也さんが、深夜番組で発していたこの言葉。
2011年にリリースされたRHYMESTERのアルバム「POP LIFE」に、同名の曲が収められる流れとなりました。
夢に向かって頑なに行動を続けるその姿勢を、「ほとんどビョーキ」であると宇多丸さんは表現します。
身に着けた「古着」のジーンズから感じられる、主人公の信念やライフスタイル。
「ルーキーズ」という言葉からの韻によって生まれたリリックですが、聴き手の想像を掻き立てる表現です。
こういった何気ない描写から、ストーリーテラーとしてのセンスが感じられます。