風はまた吹く
気付かないなら
かざしな人差し指を
陽はまた昇るゆっくりと
決して立てるな
己にその中指を
風はまた吹く
気付かないなら
かざしな人差し指を
陽はまた昇るゆっくりと
その時立てろ親指を
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
フックにあたる部分のリリックです。
新たに行動を始めた彼らに吹き付ける風。
それは時にその背中を押すような追い風となり、ある時には行く手を阻む向かい風にもなるでしょう。
また、ここでの「風」という存在は「時代の流れ」を指しているようにも感じられます。
「人差し指」を立てて、その「風」を読むべきであると説く彼ら。
夢に向かって旅に出る冒険者を描いたような、壮大な世界が広がって行きます。
「ONCE AGAIN」の歌詞をチェック!(後半)
言葉を葬ってしまわないために音楽を作る
キミの知らないオレの歴史
オレの知らないキミの景色
繋げるのはこのタフなリズムだって
信じてまたペンを取る
紙に滲む黒い衝動が
よそ行きのベベ着た肖像画に
なってしまわないうちに
音楽に変えよう
灰色な鍵盤に命与えよう
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
フックが明けた後の、Mummy-Dさんのヴァースです。
宇多丸さんの書くリリックに比べて、こちらはちょっと二枚目でより詩的。
自分の想いをリスナーの想像できるイメージによって描いてもらうために、ラッパーは今日も言葉を綴ります。
「よそ行きのベベ」という描写は、生み出した言葉たちが息絶えてしまうことを意味しているのでしょうか。
そうならないように、彼は「灰色な鍵盤」を色鮮やかなものにするように、リズムとメロディを作り出します。
ありのままの自分
右肩上がりの人生なんて
そう続きゃしないさ
オレの背中押す風が
時に頬を殴る つぶれちまえと
オレは生身のままでそれに耐えた
いつか生身のままのキミに逢えた
キミは生身の声で誉め讃えた
オレは生身の声でそいつに応えた
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
この部分後半の「耐えた」からの構成は、いかにもMummy-Dさんらしい形です。
似た言葉と言い回しをあえて重ねることで緊張感を生み出す手法は、他の作品でもよく耳にすることができます。
リリック前半で韻が仕込まれていないところもポイントですね。
自分の背中から吹く追い風が、時に「頬を殴る」ように襲いかかる。
夢を実現していく過程では、挑戦する世界の大きさと、こなすべき仕事の量に飲み込まれそうになるものです。
決して見栄を張らず、等身大の自分で一生懸命それに取り組むことで道は開けると彼は伝えます。
新たに立ち向かう場所
否、応えて行きたいんだ
否、否、答えなどありゃしないんだ
ありがとう My man
ありがとう My haters
この足で立ち上がれそうだぜ
さあ、取り戻せそのラフネス
見せつけろそのタフネス
孤独の果てに浮かんだフレーズは
Three times, twice,
once again!!
出典: ONCE AGAIN/作詞:宇多丸,Mummy-D 作曲:BACHLOGIC
最後のヴァースで語られているのは、周囲への感謝の言葉です。
「haters」とは、自分に対して批判の目を向ける人々の総称。
応援してくれる人も厳しい言葉を掛ける人も、それぞれが自分を成長させてくれる存在なのです。
取り戻すべきだと説く「ラフネス」は、障害を跳ね飛ばす「荒々しさ」を指しているのだと読み解きました。
「once again」というセリフと共に、ここからまた彼らは新たなステージを目指し進んでいきます。
「ONCE AGAIN」のリミックスについて
「ONCE AGAIN」といえば、リミックスバージョンの存在もファンにとって外すことのできないもの。
アルバム「マニフェスト」の初回版は、その「ONCE AGAIN Remix」によって締めくくられます。
客演はDABO、TWIGY、ZEEBRAの御三方。
ヒップホップ集団「FUNKY GRAMMAR UNIT」を率いていながら、こんなコラボを忘れない所もRHYMESTERらしさです。
本家「ONCE AGAIN」も素晴らしいですが、このリミックスにはそれに勝るとも劣らない魅力が詰まっています。
リミックスバージョンの構成
曲冒頭、Mummy-Dさんによって放たれる言葉は「HIP HOP is back」。
ユニットの垣根を越えて日本のヒップホップ文化を共に高めていこう、という意気込みが感じられるセリフです。
ヴァースは「DABO」「TWIGY」「ZEEBRA」の順に回されます。
DABOさんのヴァースは、先輩にあたるRHYMESTERの三人に向けられた敬意のような内容。
自らの青春そのものとも言える、日本語ラップの黎明期を支えた彼らの活躍を讃えています。
そこに続くTWIGYさんのヴァースは、同世代の仲間に向けられたエール。
「戦友」や「兄弟」という言葉の響きには、当時を知るファンの胸を熱くするものがあります。
最後のヴァースはZEEBRAさんで、語られているのは同じく親友の実績を称賛する内容です。
また、「king」という言葉を使ったリリックによって、日本語ラップにおいて自分たちが果たすべき役目も示しています。
まさに日本のヒップホップ文化を引っ張る、ZEEBRAさんならではの言葉だと感じました。
「ONCE AGAIN Remix」は、多くのラッパーたちに向けたアンセムのような作品に仕上がっています。