大人の女性の失恋を歌った佳曲
愛のもつれを心強いメロディで歌いあげた名作
「さよならだけは言わないで」は、1978年に発売された五輪真弓の13枚目のシングル曲です。
それまでテレビへの露出をほとんど行わなかったのですが、この曲で一気にブラウン管に登場しました。
大人の女性の愛のうつろいを歌ったラブソングとして、大いに注目を浴びた楽曲です。
女性に突如、訪れようとする別れの瞬間。
それまでの幸せだった時間が嘘のように通り過ぎてゆく。
今、目の前にあるのは幻影なのだろうか?
そんな、女性の自問自答のような心の響きを感じさせる作品なのです。
今、忍び寄る別れの瞬間
愛に出会いがあるのなら、別れの時もまた避けられない現実でしょう。
「さよならだけは言わないで」に登場する女性の主人公は、まさにその別れを予感しているのです。
昨日までの幸せだった毎日。それが一瞬にして崩れ去ってしまう。
原因は何だったのか?主人公の女性に非があったのでしょうか?
しかし、歌詞中にはそのような表現はありません。
ただ、切々と愛していた男性との別れを恐れる1人の女性の姿を描いているのです。
では、早速1番の歌詞からみていきましょう。
愛を失ってしまった…
別れの宣告の予感
別れ雨がわたしの
心を濡らす
あなたはもう傘さえ
寄せてくれないのね
出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓
主人公の女性は、愛していた男性から別れを切り出されることを恐れています。
その現実を受け入れつつも、女性はどうしたらいいのか戸惑うばかりなのです。
もしかしたらこういう日がやってくるかもしれないという事を、予想はしていました。
しかし、現実にもしそうなってしまったら。きっとどうしようもない寂しさがこみ上げてくることでしょう。
昨日まではあんなに優しかったはずの彼が。
それが今は、そのかけらも感じさせなくなるくらい嫌な予感がするのです。
あんなに愛していたのに
あの楽しい日々は愛のかげぼうし
夢だというの
出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓
愛している男性との暮らしは、本当に夢のような毎日でした。
人を愛することがこれほど満ち足りた気持ちにさせてくれるものとは。
主人公の女性は愛した人との暮らしで心からそう思ったのです。
男性はとても優しく私に接してくれました。
こんな暮らしが終わるはずがない。いつまでも続く。
この歌詞からは、女性のそういった思いが切々と感じられるのです。
しかし、女性の思いは次の歌詞で残酷な現実を歌うのでした。
虚脱状態
この街の角に春が来ても
明日からはひとり歩くわたしの前に
うしろすがたのあなたが見えるだけ
出典: さよならだけは言わないで/作詞:五輪真弓 作曲:五輪真弓
去っていくかも分からない男性を追いかける夢を見てしまう。
男性は、書き置きの手紙を残して立ち去ったのかも知れません。
ひとりぼっちになってしまった女性に、猛烈な孤独が襲い掛かってきました。
季節はまだ冬。容赦ない木枯らしが女性の傷ついた胸の内を襲うようです。
女性だけがこの広い世界に1人だけ取り残されたような感覚。
これが愛を失った時の気持ちなのでしょうか?
たまらないほどの絶望感と寂しさが主人公の女性に容赦なく襲いかかるのでした。
そんな女性の気持ちを、この後の歌詞が綴っていきます。