大人同士の別れ
席を立つのは あなたから
後姿を見たいから
いつもあなたの影を踏み
歩いた癖が直らない
出典: 外は白い雪の夜/作詞:松本隆 作曲:吉田拓郎
お互いを知り尽くし、リスペクトしあっていたのでしょう。
いつも見てきた後姿を視界に焼き尽くしたい。
彼女の中でこの別れは消化しきれているのでしょうか?
このあとの日々も度々、この恋を想い出して泣いてしまうことがありそうです。
乱暴に傷つけあう喧嘩別れではない大人のお別れ。
美しい情景は別れのシーンとは想えないです。
雪の舞い散る夜
だけど Bye-bye Love
外は白い雪の夜
Bye-bye Love
外は白い雪の夜
出典: 外は白い雪の夜/作詞:松本隆 作曲:吉田拓郎
季節は冬。
雪が舞う夜。
サヨナラをするには寒く侘びしすぎる季節です。
店の窓の外に広がる銀世界。
ふたりは店を出て降り積もった雪を踏みしめてそれぞれの家路へ歩いていくのでしょう。
あまりに映画的なシーンを想起させます。
映画的なラストシーン
松本隆の歌詞に感服
Bye-bye Love
そして誰もいなくなった
Bye-bye Love
そして誰もいなくなった
Bye-bye Love Lu…
Bye-bye Love Lu…
出典: 外は白い雪の夜/作詞:松本隆 作曲:吉田拓郎
「そして誰もいなくなった」はイギリスのアガサ・クリスティの名作推理小説のタイトルで有名です。
名匠・ルネ・クレール監督が映画化していますので、この歌詞に映画的な側面があるのもうなずけます。
ふたりが別れ話を終えて店を出てしまったあとの閑散とした情景が目に浮かぶのです。
最後まで聴いた私たちは一本の映画を観終わったような不思議な錯覚に陥ります。
美しい別れのシーンが胸に迫る。
吉田拓郎のぶっきらぼうな歌い方も心に沁みますが、松本隆の作詞のチカラには感服します。
吉田拓郎と松本隆とフォーク・ソングと
怖かったはっぴいえんど
吉田拓郎と松本隆は1971年の第3回全日本フォーク・ジャンボリーでニアミスしています。
吉田拓郎はソロで、松本隆ははっぴいえんどで出演。
このときのことかは不明ですが著名なエピソードがあります。
当時のはっぴいえんどは外見からして非常に怖くて楽屋で他の出演者に恐れられていました。
若い無頼漢の吉田拓郎をもってしても近寄れなかったそうです。
今では大瀧詠一が鬼籍に入り、他のメンバーはとても穏やかな印象と佇まい。
隔世の感があります。
松本隆によるフォーク・ソング
その頃から幾年月を経てのふたりのタッグで生まれた「外は白い雪の夜」。
松本隆の繊細な観察眼と大胆な話法による歌詞が心に沁みます。
美しい別れのシーンを切り取る。
松本隆は日本語のロックの始祖であり、また数々のポップス、歌謡曲の作詞家です。
それでも松本隆にフォーク・ソングの歌詞があることはあまり知られていません。
「外は白い雪の夜」はそんな松本隆の意外な側面を知ることができます。
声高なプロテスト・ソングだけがフォーク・ソングの魅力ではありません。
この歌のような繊細な愛の歌もフォーク・ソングの真骨頂です。