King Gnu【白日】MVの意味を解説!モノクロの映像から伝えたいこととは?クールな作品に釘付け!の画像

今回のMVはこれまでのKing Gnuの楽曲MVと比較すると、明らかに異質な映像です

これまでの彼等のMVは全体的に賑やかな極彩色の映像が多く挙げられます。

前述の『Prayer X』やアルバム『Sympa』のリード曲『Slumberland』。

これらの楽曲などはその際たるものと言ってもよいでしょう。

そんな中、なぜ敢えて彼等は『モノクロ』でこの映像を作り上げたのでしょうか

その真意を解釈していきたいと思います。

解釈1:シンプルさを追求するが故のモノクロ

2つの魅力を鮮やかに魅せる為に

前述の通り、今作の映像を製作する際に最も重視されたのは『シンプルさ』。

その為映像から色彩を抜いた、という理由だけでは面白くありません。

それでは、なぜ映像をシンプルにしようとしたのか

理由は2つの魅力を浮き彫りにさせたかったからだと考えられるでしょう。

1つ目の魅力『King Gnuというバンドそのもの』

King Gnu【白日】MVの意味を解説!モノクロの映像から伝えたいこととは?クールな作品に釘付け!の画像

疾風の如くインディーズシーンを駆け抜けてきたKing Gnu。

彼らに紐付けて語られてきたイメージはあくまでバンドスタイルでした

ギターがあり、ベースがあり、ドラムがあり、時には打ち込みの音色も用いながら。

彼等がこれまで前面に出していた物はミクスチャーロックを軸としたバンド音楽でした。

ですが、バンドリーダーの常田は以前からバンドの別軸の魅力を度々口にしています。

バンドの真の魅力、それはボーカル井口の声です

『誰にも嫌われない』と常田に言わしめた穏やかで透き通るような彼の声。

これこそが、今後彼等がメジャーシーンに挑む際の大きな舵となる事でしょう。

今作【白日】は、そんなボーカル井口の魅力が遺憾無く発揮された作りとなっています。

人間の哀しみや危うさを孕んだような吐息混じりの井口の声から始まるイントロ。

そんな不安定さを少しずつ綺麗なファルセットで包み込むように歌う井口。

彼の姿を写した映像には思わず釘付けになる不思議な引力が働いているようです。

そんな中で的確に入ってくるビートやベースライン。

穏やかな井口の声とは対照的な荒々しい常田のボーカルやギターフレーズ。

これまでの賑やかなバンドのイメージから一転したポップバラード

それをKing Gnuという4人の生身の男達が奏でている、という事実がそこにはあります。

4人の演奏シーンをシンプルなモノクロの映像で映す。

それによって、より多くの人々にKing Gnuというバンドの真の姿を周知させる

そんな狙いがこの映像にはあるのではないでしょうか。

2つ目の魅力『【白日】の歌詞』

楽曲にMVを製作した際、その映像作品を構成する要素は大きく4つ。

まず1つは視覚に訴えかける映像そのもの。

それから楽曲の楽器陣の演奏、ボーカルのメロディ。

そしてメロディに乗せられて歌われる歌詞、の4つです。

本来五感でいえば聴覚だけに訴えかける音楽。

それがMVを製作する事により、聴覚と視覚に同時に訴えかけるものとなります。

それによって、曲そのもののメッセージ性がより強く打ち出される事となるのです。

今作【白日】に関しては、全編モノクロの映像が制作されました。

その為、後述の歌詞のメッセージ性がよりはっきりと輪郭を持つように思われます。

解釈2:色褪せた現在(いま)の象徴であるモノクロ

歌詞の対比にもあわせて注目

今回の楽曲の歌詞で歌われているもの。

それは鮮やかな『過去』と、ある瞬間から全てが色褪せて見える失望の中の『現在』

それでもいつか一筋の色彩が見えるかもしれない、見えないかもしれない。

分からないままでも歩み続けるしかない『未来』

この3つの時系列を抱えて生きる人間を歌ったものです。

この楽曲で歌われている人間は、間違いなく今を生きている。

そんな人間の目から見えるこの景色は、モノクロの世界のはずではないでしょうか。

色鮮やかな過去を失った今、それでも

もう戻れないよ、昔のようには
羨んでしまったとしても
明日へと歩き出さなきゃ
雪が降り頻ろうとも

いつものように笑ってたんだ
分かり合えると思ってたんだ
曖昧なサインを見落として
途方のない間違い探し

季節を越えて
また出逢えたら
君の名前を
呼んでもいいかな
その頃にはきっと
春風が吹くだろう

出典: 白日/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta

昔の事を眩しく思うのは、今見える景色が色褪せて見えるからではないでしょうか。

そして今の景色が、これからもずっと続いていくだけだと思っているからでしょう。

それでも恋しく思えた昔があったからこその今。

いつか今のモノクロの景色も鮮やかに見える時が来るかもしれない。

もしかしたら煌めく昔のように、また目の前の景色が色彩を取り戻すかもしれない。

それがおこがましい事だとはわかっていても、そう信じて生きていくしかない。

そう信じていないと、生きていく事が出来ない。

過去と現在、未来の狭間で葛藤し苦悩する。

モノクロの景色を通して、歌詞に歌われている人間の今現在を描いている。

そんなメッセージがこの映像には込められているのかもしれません。