音楽のジャンルが噛み合わないように思えるこの2人。
ではどうのようにして、IKUZONEがhideにこれほどまで憧れるようになったのか。
時は20年以上遡ります。
X JAPANのYOSHIKIが立ち上げたレーベル『エクスタシーレコード』に“VIRUS”というバンドが在籍していました。
そのVIRUSのベーシストがIKUZONEだったのです。
『エクスタシーレコード』と言えばLUNA SEAやGLAYも在籍していたレーベルであり、今で言うヴィジュアル系バンドが数多く在籍。
在籍していたとは言うものの、当時のバンド業界は体育会系縦社会。
まだまだ下積み段階のバンドからするとX JAPANのメンバーは雲の上の存在であり、IKUZONEもhideとは直接的な接点は持てなかったようです。
そんな中、ライブ後の打ち上げの席でこっそりとhideへ視線を送るのが精一杯というほど憧れの存在だったのです。
「エクスタシーサミット」にも出演!
当時、レーベル主催の『エクスタシーサミット』というイベントがあったのですが、IKUZONEはこのイベントへの出演歴もあります。
もちろん黒髪ボブというヴィジュアル系らしい風貌で出演していました。
VHSとなってしまいますが映像化もされているので、もし観ることができる機会がありましたら是非チェックしてみてください。
ちなみにこのVIRUSですが、hide with Spread BeaverのメンバーであるKIYOSHIも在籍していました。
こうして接点を辿っていくと、世間は狭いものですね。
hideの死後
亡き後もhideのそばに
hideの死後、IKUZONEはhideの右腕でもありhide with Spread BeaverのメンバーでもあったI.N.A.と知り合うことになります。
“hideのことが大好きなヤツ”として紹介され年齢も近かったせいか、得意のお酒を共にしたり、楽屋へ訪れるなど親交を深めていったようです。
hideの記念館“hide MUSEUM(2005年閉館)”では、酔っ払ってテンションの上がってしまったIKUZONEが、建物の壁に落書きしてしまうという珍事も。
そして2012年4月、IKUZONEこと馬場育三は急性心不全により急逝。
IKUZONE最期の作品である「Run to the Sun/Walk with Dreams」では、I.N.A.がカップリングのリミックスを手掛けています。
hideによる「ROCKET DIVE」
今だから知りたい「ROCKET DIVE」
この楽曲自体を知らない世代も増えてきたと思われるので、ちょこっとご紹介したいと思います。
約20年前、1998年1月28日の発売にリリースされた「ROCKET DIVE」。
X JAPANのラスト・ステージである、1997年12月31日の第48回NHK紅白歌合戦への出演から間も無くリリースされたのですが、ここにも理由があります。
hideの死に対する衝撃へは遠く及ばないかもしれませんが、当時X JAPANの解散も、それはそれは大きな衝撃を与えたのでした。
そして情に厚く、ファン思いな人間性でも知られるhide。
解散にショックを受けているファンへ向けて、いち早くとこの楽曲を贈り届けたのです。
X JAPANが活動中も、並行してソロ活動は行っていましたが、“hide with Spread Beaver”名義での音源はこれが初となり、バンドという形態にこだわっていたhideは、この楽曲で再びデビューを果たしたのです。
プロがカバーしたくなる名曲
個性的で流行にも敏感…というよりも1歩も2歩も先を行っていたhide。
奇抜で独特なPVも多く、「ROCKET DIVE」のPVもポップなカラーとファッションからか、度々“◯◯年前のものとは思えない!”と言われ続けてきました。
そしてhideの死後も、楽曲は世代やジャンルを問わず様々なアーティストやバンドにカバーされています。
「ROCKET DIVE」もその中の1つ。
これまでカバーしたアーティストは、布袋寅泰、小室哲哉、氣志團、HISASHI(GLAY)、韓国からEXOのチャンヨル、SHOKICHI(EXILE)、そして今回のDragon Ashと、錚々たるメンバー。
この幅広さから、hide本人と、彼が生み出した楽曲の影響力は一目瞭然でしょう。
さいごに
みんなの個性を加速させる「ROCKET DIVE」
今回のDragon Ashのカバーによる「ROCKET DIVE」。
毎回、カバーが発表されるたびに、アーティストやバンドたちの、自分たちの色を踏まえた選曲のセンスに感心させられます。
今回のDragon Ashにも、もちろん驚かせられました。
アレンジを加えていても消えることのないhideの色、そしてその強烈なhideの色にも負けないDragon Ashの個性、カバーではなく、共作に近い一体感。
一聴しただけで、当時を思い出させながらも、待ちに待った新曲を聴いた時のような新鮮さをも感じさせました。
はるか向こうで、hideもIKUZONEも喜んでいることでしょう。
いえ、IKUZONEは“自分も「ROCKET DIVE」のカバーに参加したかった!”なんてちょっと悔しがっているかも…
たくさんの人の繋がりと、そのたくさんの人の尊敬と愛情で繋がれてきたこの「ROCKET DIVE」。
Dragon Ashの「ROCKET DIVE」を聴いたことによって、さらに次の世代のアーティストやバンドによるカバーも生まれるかもしれませんね。