Waiting for your call, baby, night and day
I'm fed up, I'm tired of waiting on you
出典: ハング・アップ/作詞:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS 作曲:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS
「あなたからの電話を待ち続けているの 昼夜問わずね
私はうんざりなの 私はあなたを待つことに疲れてしまったわ」
私は毎日、昼も夜もあなたからの電話を待つ暮らしをしていました。
こうしたときの過ごし方をしていたら1秒、1分、1時間が長く感じられるのも当たり前でしょう。
イントロ部分の「ときの流れがあまりに遅すぎる」という感覚。
こうした感覚は私のこうした日常生活によって裏付けられています。
何でも待っているときは時間が長く感じられて仕方がないものです。
学校の授業に飽きて終業時刻を待つとき、時間の流れは果てしなく長く感じられたものでしょう。
ときは「待つ」ものではなく「使う」ものです。
夢中になって時間を使うとデートはあっという間に終わっていたなんてことがあるはず。
いま語り手の私は生産的な時間の使い方をしていません。
「待つ」姿勢では他に何もできなくなります。
ときの流れはいつまでも語り手を時間の牢獄の中に監禁するでしょう。
囚われた私はときの流れからの解放を願って、あなたを「待つ」こと自体を放棄するのです。
こんな状態ではダメだ、メンタルがとても持ちそうにない。
私はあなたの電話を「待つ」ことをやめることで自分を時間の流れから解放するのです。
私の混乱の元凶
「待ち」の姿勢はやめて
Time goes by so slowly for those who wait
No time to hesitate
出典: ハング・アップ/作詞:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS 作曲:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS
「待ち侘びる人たちのために時間はゆっくりと過ぎてゆく
ためらっている時間はないの」
果報は寝て待てが信条の「待ち」の姿勢でいる人にはときは惰性の中でゆっくり過ぎます。
語り手の私も恋愛に対してずっと「待ち」の姿勢でいました。
しかしマドンナはこうした「待ち」の姿勢の人をせっつきます。
人生それでいいのかなという思いのもとにこうした女性たちに発破をかけるのです。
恋愛は自分で積極的に出歩いて奪ってゆくもの。
マドンナのこれまでの作品から透けてくる彼女の恋愛哲学はいわゆる「肉食系女子」と相性がいいです。
自分から主体的に相手を愛してゆく哲学こそが至高の愛と考えています。
相手からの電話を待っている時間なんて無駄よとマドンナは吐き捨てるのです。
こうした哲学の裏付けがあって語り手の私も「待ち」の姿勢を崩します。
私は八方塞がりに
Those who run seem to have all the fun
I'm caught up
I don't know what to do
出典: ハング・アップ/作詞:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS 作曲:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS
「走っている人たちは完璧に楽しんでいるように見えるのに
私は捕獲されてしまったわ
私はどうしたらいいのか分からないの」
時間を有効に使っている人たちは人生を楽しんでいるように見えるものです。
彼らは「待ち」の姿勢などせずに自分から物事を捉えるために走り回ることで時間を費やします。
その満足した充実ぶりがまぶしく映って仕方がないです
一方で「待つ」タイプの私は時間に捕まえられてしまいます。
私は自分で時間を費やす方法を知りません。
そのために八方塞がりになるのです。
どこに行こうともデッド・エンド。
こうしたときの監獄から逃れるためには、もうあなたのことを「待つ」のをやめる必要があります。
ゆっくり過ぎる時間の流れからの逃走は、あなたから逃れることでもあったのです。
ABBAの「ギミ!ギミ!ギミ!」
先人たちの大ヒット・ダンス・ナンバーとの関係についても詳述します。
「ハング・アップ」とABBAの「ギミ!ギミ!ギミ!」との関係です。
Time goes by so slowly
Time goes by so slowly
Time goes by so slowly
I don't know what to do
出典: ハング・アップ/作詞:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS 作曲:MADONNA, BENNY ANDERSSON, STUART PRICE, BJOERN ULVAEUS
「ときはとても静かに過ぎゆく
時間はとてもゆっくりと去ってゆく
ときはとても静かに過ぎてゆく
私はどうしたらいいのか分からないの」
この曲「ハング・アップ」のモチーフになったABBAの「ギミ!ギミ!ギミ!」。
夜中に退屈になってしまった女性が、「真夜中過ぎの男」を私にちょうだいとねだる歌です。
積極的に相手を探して自分のものにしようとする。
そのことで真夜中の退屈な時間を紛らわせてみせる。
そんな内容の歌になっています。
基本的に「攻め」の姿勢で愛を求める女性の姿を歌うのです。
「ハング・アップ」の私は「待ち」の姿勢であなたを求めるために酷く退屈します。
もうどうしたらいいのか分からないと自暴自棄になるほどに追い詰められるのです。
それならば「ギミ!ギミ!ギミ!」に倣って自分から男性を積極的に求めるべきでしょう。
愛に主体的であるために
マドンナは夜のダンス・シーンの歌をたくさん残したABBAを深く愛します。
ABBAが描くのはダンスに臆病な女の子がある夜、ダンシング・クイーンになるまでの成長だったりしました。
若かった頃のマドンナの心に火を灯した存在がABBAであったのでしょう。
ABBAの楽曲の中の女性は自分から主体的に男性を愛します。
欧米のダンス・クラブ・シーンの実際の風景がどんなものであったのかは想像するしかできません。
しかしABBAは愛については主体的な姿勢の女性を好んで歌詞にしました。
マドンナもまた同様です。
きっとABBAの歌詞から愛についての多くの哲学を学んだのでしょう。
「ハング・アップ」の私は愛に対して従属的な存在です。
しかしマドンナはそんな私に変化を与えます。
従属的な愛で八方塞がりになった先で自分を積極的に解放する姿をこれから描くのです。
ここでもABBAから学んだ恋愛哲学が花開きます
先を見ていきましょう。