日の当たる部屋が作る時間
少しはしゃいだ表情になったのは、揺れるカーテンと窓越しの光のせいでしょうか。
食べてふざけて笑うだけで3人の時間は一瞬輝きました。
切り揃ったほぼ同じ長さのボブスタイルが、ハルとレオの距離の近さを表しています。
終わり方はフェイドアウトで
「ハルレオ」というユニットでもある2人はまだ歌い続けなければいけません。
2人の歌を聴きたい人たちが待っています。
付き人でありサポート役であるシマもその役割を果たす必要があるのです。
2人が歌ってシマがサポートをする時間の中から、3人は何かを探し出せるのでしょうか。
例え輝く未来や普通の幸せがそこに無くても、今は3人でステージを作ります。
もう少し進めばどこかにたどり着けると信じて巡り歩く3人。
MVの最後で映像はフェイドアウトしました。でも歌はまだ続いているのです。
歌が終われば3人が同じ道を歩くことはもう無いのかもしれません。
歌があればつながっていることを信じて、3人は別の道を歩くのでしょうか…。
秦基博さんが作る「ハルレオ」の世界
今回「さよならくちびる」の主題歌を担当したのはシンガーソングライターの秦基博さんです。
様々な場面の出会いから別れまでをドラマ仕立てにできるマジックの持ち主。
そして普段であれば秦基博さん自身で歌うのですが、今回は楽曲提供です。
しかも映画の中だけで歌うユニットのための曲…、ちょっと舞い上がります。
でも秦基博さんはいつも通り完成形を見せてくれました。
せっかくですから歌詞の世界も少し覗いておきましょう。
痛みも愛に…変えられる
この棘は抜けないままでいい
ずっと 忘れないでいるから
さよならくちびる
私は 今 誰に 別れを告げるの 君を見つめながら
さよならくちびる
私は 今 はじめて ここにある痛みが 愛だと知ったよ
出典: さよならくちびる/作詞:秦基博 作曲:秦基博
この歌詞の中で一番印象的な言葉は「棘」ですね。
刺さると痛い「棘」はリアルに体験すれば大慌てで抜くことを試みます。
それでも刺さったままにしておきたい「棘」が意味するものは「愛」、簡単に結論を出してしまいました…。
でも刺さった「棘」が愛に変わるまでの時間は計り切れないほど長かったはず。
楽しいことより悩みや苦しさの方が多かったのでしょう。
それでも過ごした時間は無駄ではなかったのです。
目の前の君の表情を見れば分かります。同じ痛みが君にもあったことを。
君の心にも私の愛がいたことを、君がくちびるを動かさないで伝えてくれました。
そしてこの後も「棘」を忘れない、君の愛を忘れずに生きていくことを決めたのです。
3人のためにある歌が♪
灰色の後悔が 世界を塗り潰しても
君だけ 鮮やかに 映るんだ
この歌はどこへも届かない
きっと 空に消えていくだけ
出典: さよならくちびる/作詞:秦基博 作曲:秦基博
辛くても悲しくてもユニットの2人とサポートの1人の間に常にあったものは歌。
歌が無ければこの3人が結びつくこともありませんでした。
でもこんがらがった結び目を上手くほどくことが出来なくて、あきらめるしかなかったのです。
ああすれば、こうすればと悔やむ過去。ほどくことができる間に絡まりを解消しておけば良かったと。
白からより明るい色に変わるはずの心は、黒に近づくように後戻りします。
それでも残っているのは君が歌う姿と声。
3人でステージに立つことは無いけれど、心の中に歌は残されています。
どこかの誰かに届かなくても3人をつなぐだけの歌。
悲しみと苦しみの過去はもうここにはありません。
「さよならくちびる」にさよならを
さよならに続きがあれば…
つめたいくちびる
君は 今 なんて 優しい 悲しい 眼差しをしてるの
ほどけるくちびる
私は でも 確かに 救われてたんだ
さよならくちびる
私は 今 誰に 別れを告げるの 君を見つめながら
さよならくちびる
私は 今 私に 別れを告げるよ ありがとう さよなら
出典: さよならくちびる/作詞:秦基博 作曲:秦基博
歌うくちびる、しゃべるくちびる、食べるくちびる、触れるくちびる。
くちびるは沢山の役目を持っています。くちびるの温度は触ってみないとわかりません。
くちびるの温度は心の温度?そうでは無いのです。言いたいけれど言えない言葉を噛みしめるくちびる。
君を傷つけたくないから、簡単にくちびるが動かせなかったのです。
見つめ合って君から掛けてくれる言葉で、本当に思っていることが分かります。
君がいない場所に行くために、何かを変えなければいけないのは私自身。
それを気が付かせてくれた君に贈るものは、愛しかありません。
届かなくても受け取ってもらえなくても、ハルとレオとシマに愛を贈りたくなる歌詞。
本当のさよならは心に留めたままで歌は終わりました。