ちょっと上海まで行って来ます
「ちょっと上海まで行ってきます」。
井上陽水さんでしたらさらっと言ってしまわれそうな台詞です。
ユーモア溢れる歌詞の中にさり気なく悲哀のあるエピソードを織り交ぜる。
「なぜか上海」はそのような世界を十二分に楽しめる楽曲ではないでしょうか。
半世紀近くも愛され続けている大家の歌詞の世界を覗き見ることは勇気がいりますが…。
今回は「上海まで行かれたのは井上陽水さんではないでしょう」と思いながら考察して行きたいと思います。
また記事の中で「井上陽水さん」と親しみを込めて書かして頂きますことをご了承ください。
井上陽水のファミリーヒストリーから考察してみる
戦前の「上海」
井上陽水さんのご両親には随分とロマンチックな馴れ初めがあるようです。
ご両親は戦時中異国で出会われ異国で終戦を迎えられたというお話があります。
そして終戦後お父様は日本に戻られお父様を追いかけるようにお母様も日本に戻られたということでした。
どちらに行かれていたかは存じませんがいわゆる引き上げということです。
戦後の激動の時代日本に戻って来ても、暫くの間は大変だったと思います。
ご両親が結婚なさるまでのお話を井上陽水さんもうっとりと聞かれていたのではないでしょうか。
ではその頃上海はどのような様子だったかというと…。
他の国に統治されていたとはいえ「東洋のパリ」といわれるほどの繁栄と享楽の都市だったようです。
自由貿易港として栄え日本人も沢山出入りしていたようですね。
「上海租界」の繁栄はいつまで?
「上海」にある外国人街のことを上海租界(しゃんはいそかい)と言っていました。
上海租界の繁栄が終わった時期。
これは容易に想像できることではありますね。
100年近いアメリカやイギリス、フランスなどの統治が終わったのは1945年の終戦の時期だそうです。
西洋の文化と中国の文化が入り乱れた異様な街並みも太平洋戦争が始まった頃から徐々に廃れて行きました。
この不思議な情景は映画の題材としてもよく使われていますね。
このわずか数年の間に日本人の甘い夢も消えて行ったのでしょうか。
では次で「なぜか上海」の歌詞考察をしてみたいと思います。
歌詞考察~夢をのせて「上海」まで
出航
星が見事な夜です
風はどこへも行きます
はじけた様な気分で
ゆれていればそこが上海
出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
「上海」にある外国人街では今でいうバブル景気のようなことが起こっていたのでしょうか?
そのような夢の街に向かって出航です。
夜空の星もいつになく大きく眩しく輝いて未来への希望を照らしています。
吹き付ける風の動きも心地よく一緒の船旅を喜んでいるようです。
日本の港からはビザなしでいけたそうですから、まさに自由への航路でした。
波が荒れたりする不安なんてなさそうですしハイな気分の旅立ちでしょうね。
今では船旅というと豪華客船などを思い浮かべますがそのような旅でも丸一日位はかかりそうです。
賑やかな別れ
そのままもそ もそ も もそっとおいで
はしからはしのたもと お嬢さん達
友達さそ さそ さ さそっておいで
すずしい顔のおにいさん達
出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
ここで楽しいばかりの旅路にちょっとした疑問が沸いてきます。
列をなす若い女性達に囁く誰かさんの甘い言葉?
しかも明るく大っぴらに声をかけるのではなく、こっそりとです。
男の人にとって女の子は沢山いた方が楽しいに決まっています。
「上海」に行けば欲しいものはなんでも手に入るのでしょうか。
洋風の街並みに見たこともないような社交場でモダンガールに大変身!
そこは元々の中国らしい町並みとはバランスのとれない不思議な世界だったようです。
そのような世界が本当にあったのだったら見てみたかったですね。
そこでは贅沢三昧の日々が待っているはずです。
そんな別天地を夢見る女の子達とは別に…。
彼女達を見つめる男性の表情が気になります。
含みのある冷たい眼差しです。
なにが起ころうと自分には関係ないといわんばかりですね。