海を越えたら上海
どんな未来も楽しんでおくれ
海の向こうは上海
長い汽笛がとぎれないうちに

出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

待っている「未来」には何があるのでしょう。

皮肉めいたニュアンスにもとれます。

日本は島国ですから船に乗って島を出るというのはその当時大きな決断だったのかもしれません。

故郷を捨てたとしたら、信じれる人も頼れる人もいなくなるのでしょうか。 

それとも戻る所がなくなっても知りませんよ、という意味にも取れますね。

あともう少しのところで新しい港は見えて来ます。

胸の高鳴りと共に、その高鳴りが止まる前にきっと船は港に着くはずです。

状況はより具体的になって来ます

海を渡ることの意味

流れないのが海なら
それを消すのが波です
こわれた様な空から
こぼれ落ちたとこが上海

出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

先ほどは海を渡るということが故郷を捨てるということになるかもしれないとお話しました。

ですがここではより具体的に「海」について書いてあります。

「海」は川と違い分岐してどこかに流れて行くということはありません。

そこに留まってしまうと逃げ道はなくなってしまいます。

あるのは荒波や難破という不安だったはずです。

遭難してしまうとじりじりと身を焦がす太陽との戦いになってしまいます。

太陽は空のシンボルですが場合によっては悪魔にもなるということですね。

ここでは海の怖さを新天地で待つ本当の怖さとして暗示しているように思います。

誘い出す方法

いまからまそ まそ ま まそっとおいで
ころがる程に丸いお月さん見に
ギターをホロ ホロ ホ ホロッとひいて
そしらぬ顔の船乗りさん

出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

女性達を油断させ誘い出すには充分なものが揃っています。

港を心の拠り所とする男達にとっては手慣れたことです。

美しい夜空も哀愁のあるメロディーも女性を酔わせるには好都合ですね。

不誠実な横顔に女性達は何をみたのでしょう。

そして港は夜の街、享楽の棲み処でした。

享楽のある所には札束が飛び交いますから勿論それを仕切る怖い人がいるわけです。

そもそもこの悪夢のような、パラダイスのような上海租界というのはアヘン戦争がきっかけでした。

マフィアとは切っても切れない世界であったはずです。

どのような状況で女性達が船に乗り込んだのかはわかりません。

ですが待ち受けているものは容易くはなさそうです。

手遅れになる前に

長い汽笛がとぎれないうちに
海を越えたら上海
君の明日が終わらないうちに

出典: なぜか上海/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

この曲の冒頭の歌詞から推測していくうちに随分とこの曲の印象は変わって来たと思います。

バカンスに行く場所は「上海」でなくても良かったかもしれません。

ですがそのうち辿り着く場所が「上海」でなくてはいけないとわかって来ます。

そして何のためにそこに行くのか?

その理由が解った時、行ってはいけない場所であることがこの最後の歌詞で解りますね。

そこに行ってしまったら君の将来はないよとさりげなく教えています。

まだ港を離れる音が聞こえる内に気が付いて引き返せと言っていたのですね。

さすが井上陽水さんです、お見事な締め括りでした。

まとめ~「楽しんで」の嘘、本当は悲しい歌

井上陽水【なぜか上海】歌詞の意味を徹底解説!実際に上海にいるのだろうか?海の向こうに見えるものとは?の画像

 この歌の一番の気になる所といえば船に乗り込むために港に並ぶ女性達と冷たい素振りの男達でした。

あえて企みをかくすかのように男性側の表情をさらりと描いているところです。

そこでこの女性達が上海に出向く理由ですが、大方の予想としては身売りだと思います。

残酷な時代背景があったとしても騙されて船に乗り込んでいるのかどうかはわかりません。

上海租界の中では娼館などはアメリカ軍が仕切っていたとされています。

わかっていても女性にとって憧れの異国だったのかもしれません。

ですが問題なのは異国で娼婦として働いていたことではなく、その後の彼女達の人生です。

その後の人生をどうやって生きたかということに焦点を当てた読み物で有名なものがあります。

山崎朋子さんの「サンダカン八番娼館」です。

学校の課題図書などにもなっていた時期もありますのでご存じの方も多いと思います。

日本に戻った後「からゆきさん」だったために辛い人生を送った方の実話です。

思い出してみるのも悪くないかも知れません。

そして上海に出稼ぎというのは女性に限ったことではなく一攫千金を狙って出向いた人も多かったようです。

いつの時代もこのような話は絶えることはありませんね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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