退屈とネガティブに包まれて

This is beams
慢性退屈
蛆のソープランド

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA

beamは光線などの意味ですが、希望の光などの意味も持ちます。

この「俺」には、やさぐれ疲れ切りながらも希望の光が見えているのでしょう。

慢性の病のように、いつどんな時も頭から抜けない退屈な感情

蛆という言葉にはネガティブなイメージがつきまといます。

腐ったものに蛆が湧くように、ソープランドに男たちが群がるように。

自分の中に湧いた退屈が腐って蛆が湧いていくような、不愉快な感情を抱えているのです。

そういった退屈と不快感から抜け出すための光

それこそが、「俺」にとっての音楽なのでしょう。

モンスターの正体とは何か

Black line on eye
ミス 財布 何もない分
うちのモンスター育っていくんだよ…
He 神父 完全トラップ
後ろ向けたらほんと良かったよ

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA

目にある黒い線は何を意味しているのでしょう。

目の周りにある黒いものといえば、眉やまつげを除けば思い浮かぶものが「隈」でしょう。

目の下に深い隈を作るほど、精神的にも肉体的にも「俺」は疲れています

そして、何もない分育っていくという「モンスター」。

この「モンスター」は何を指しているのでしょうか。

心の中にある退屈や不快感、そういったものを指しているのかもしれません。

ですが、その後ろには、「神父」と「完全トラップ」と韻を踏む言葉が控えています。

神父は一般的には救ってくれる人、正しい人という印象でしょう。

しかし直後にそれをトラップ、罠だと言い換える。

そして、後ろを向けたら良かったと語るのです。

それはつまり、今の「俺」は後ろではなく前を向いているということ。

先に出てきた希望の光のことも思い出されます。

退屈や疲労、虚無感に苛まれながらも希望の光が消えない。

前を向くことをやめることができないのです。

そう考えればこの「モンスター」は、前を向き進むための「希望」なのでしょう。

モンスターのように自分ではコントロールできない希望

それを抱え、退屈や不快といった負の感情の間で揺れながらやさぐれて道を歩くのです。

虚無感に包まれる日々

刹那的な毎日

当然、昼間のツケ払おうとしたよ
ああ 何は無くとも誰もいない
思いのほか腹も減っていない

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA

夜中になってやっと自分を取り戻せたと感じる「俺」。

それは言い換えれば、昼間のうちは何も得るものがなく無為に過ごしていたということです。

先送りしたツケを今払うように、夜中の時間を充実させようとする。

ですが、歩く街道には誰もいない。

そしてこんな時間に連絡を取れるような相手も誰もいないのでしょう。

ぼんやりとした虚無感を感じます。

腹も減っていないと繰り返す「俺」。

健康ならば、仕事をして疲れたときにはお腹も減るもの。

そこで食べてエネルギー補給というのが健康的な生活ですが、「俺」はそれも感じません。

身体から発せられるシグナルも感じ取れないような壊れた感覚。

生き物としての感覚が麻痺したまま、「俺」は街道を歩きます。

で、やたらセンチアホらしい頭ん中
明日生きてるのかもわからんのに
贅沢に泣いてほんと治らんね

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA

「俺」は引き続きセンチメンタルな考えに耽ります。

人間は今生きているとしても、突然その人生が終わりを迎えることもあります。

限りある人生の中で意味もなく感傷に浸ったり、自分を哀れんで泣く。

そういった行動は、時間を無駄に消費しているという意味で贅沢なものだと感じているのです。

それがわかっているのに贅沢に、泣くことに時間を使う。

刹那的に生きている自分の愚かさや弱さを改善するべきだと思いながら「俺」は泣くのです。

自分自身を自嘲しながら、「俺」は歩いていきます。

世界に取り残されて

取り残されていた
一人の夜は楽しくて

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA

歩く道にも誰もいない。

連絡を取る相手も誰もいない時間。

そんな時間は、世界から取り残されたように感じます。

自分だけが何も結果を成さないまま、世界や時間から取り残されている

けれどそんな一人の夜を、「俺」は楽しいとも感じています。

夜の道をたった一人、気分のいい空想やセンチメンタルな考えに浸りながら歩く。

そんな孤独な時間が客観的にはくだらない時間なのかもしれません。

けれど「俺」にとっては大切な時間なのです。

He 神父 完全トラップ
後ろ向けたらほんと良かったよ
いつからこここんなん建ってんの?

出典: やさぐれカイドー/作詞:KIRO AKIYAMA 作曲:KIRO AKIYAMA