10曲目の「GRY」もDAOKOの新境地です。
一聴するとインディーズ時代の曲調を彷彿とさせます。
しかしポエトリーリーディングを交えたラップというスタイル。
Tha Blue HerbのO.N.O.によるシンプルなエレクトロニカのトラック。
派手さのない引きの美学をDAOKOが手にしたことは今後の曲作りにも影響を及ぼすでしょう。
世界的に実力を認知されるTha Blue Herbはストイックな曲作りで有名です。
そのトラックメイカーのO.N.O.もDAOKOの実力を認めたという事実は見逃せません。
ヒップホップのトライブに属してないと自称するDAOKO。
ヒップホップの世界で頂点に立つTha Blue Herb。
これも奇跡の邂逅が成し得たマジックなのでしょう。
もしも僕らがGAMEの主役で
11曲目はシングルカットもされた「もしも僕らがGAMEの主役で」です。
80年代ポップスの持つきらびやかなサウンド。
ポジティブに振り切った歌詞。
この曲でDAOKOはメジャーの世界で主役になることを高らかに宣言します。
人生とはゲームのようなもの。どのコマンドを選ぶのかはあなた次第。
そんな想いを込めて作詞をされたそうです。
自信を持てない人々への肯定もDAOKOは大切にします。
人生には「逃げる」という選択肢があることも示唆します。
「平成生まれインターネット育ち、死にたい奴は大体友達」。
Zeebraの有名な歌詞へのオマージュです。
過去の自分同様「死にたい」思う人への連帯感。
この曲で救われる人がいるのです。
『ゆめみてたのあたし』
楽しいな
楽しいよね
嬉しいな
嬉しいよね
あなたもそうならみんな同じ
話しましょう
何から話そう
ワクワクするね
ドキドキするね
今が一番幸せ
みんなと出会えて良かった
あたしひとりじゃないんだ
出典: ゆめみてたのあたし/作詞:DAOKO 作曲:DAOKO,小島英也
12曲目は「ゆめみてたのあたし」です。
「さみしいかみさま」と同様スタジオカラーの「GIRL」への書下ろし曲です。
この曲でも自身の内面との対話がキーとなります。
内面を振り返ることで徐々に心が救われて行きます。
しかし最後に「あたしは壊れていた」ことを悟り、「ゆめでもみれて嬉しかった」と語ります。
聴き手の胸を締め付けるような感傷を残す哀しい曲ですね。
『Cinderella step』
13曲目は「Cinderella step」です。
「Cinderella step」はアニメ「進撃のバハムート」第2期のED用に書き下ろされた楽曲です。
本作は既発曲とコラボ曲の比重の大きいアルバムです。
その中にあって曲作りを最初からDAOKO主導で行った楽曲であることの意味は大きいでしょう。
今後DAOKOはセルフプロデュースのできるアーティストを目指しています。
この曲でDAOKOは初めて自身の伝えたい音を表現できたと語ります。
今後のDAOKOのターニングポイントになる楽曲といえるでしょう。
『ワンルーム・シーサイド・ステップ』
「THANK YOU BLUE」のフィナーレを飾るのは「ワンルーム・シーサイド・ステップ」です。
この曲はDAOKOが新しい取組みとして作り上げた同名小説のサウンドトラックでもあります。
サウンドを手掛けるのはDAOKOが「今一番好きなバンド!」というTempalay。
初期サニーデイサービスやフィッシュマンズのような世界観。
アンダーグランドなサイケデリックサウンド。
二つを同時に併せ持つ唯一無二の若手バンドです。
「ワンルーム・シーサイド・ステップ」がアルバムの最後を飾ること。
それはDAOKOの今後にとって必要不可欠なことだったのでしょう。
一見音楽性の離れている両者。
しかしDAOKOは彼らのライブを体験して忘れていた大切なものを思い出します。
「自分は何を表現したいのか?」という初期衝動です。
メジャーの仕事は華やかな表舞台に立つことだけではありません。
主題歌、タイアップという新しい使命。
そういったことを忘れて純粋に良い曲を作ることに熱中すること。
TempalayとのコラボはクリエイターDAOKOの後世にとって転機となる楽曲なのです。