「ルージュ」について
ちあきなおみへの提供曲
実は「ルージュ」は中島みゆきが作詞作曲を手がけていますが、歌ったのはちあきなおみです。
もちろん中島みゆき本人もセルフカバーをしています。
当時中島みゆきはニューミュージック系アーティストと分類されていました。
ちあきなおみがその系統のアーティストから楽曲提供を受けるのは初めてのことだったのです。
その後もちあきなおみはニューミュージック系アーティストの曲を歌っています。
中島みゆきがちあきなおみの作風を変えたきっかけになったといえるのではないでしょうか。
アジアでも知られている曲
アジアの歌姫と目されるフェイ・ウォン。
中国出身の香港で活躍する歌手、女優です。
彼女が「ルージュ」を中国語カバーしたことでこの曲はアジア圏で知られることになります。
1992年にリリースされました。
そしてフェイ・ウォンはその年の香港の音楽賞を総ナメするという快挙を成し遂げたのです。
日本ではゲームソフト「ファイナルファンタジーⅧ」の主題歌「Eyes On Me」で名を馳せました。
こなれた自分
口をきくのが うまくなりました
どんな酔いしれた人にでも
口をきくのが うまくなりました
ルージュひくたびにわかります
出典: ルージュ/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
酔いしれた人に上手に口をきく。
察するに主人公は酔っ払いの相手をする職業についているのでしょう。
バーかスナックか分かりませんが、客商売だということです。
そのような職業ではお客さんとお話するのがお仕事。
どんなことをいわれてもうまく対応していかなければなりません。
大変なお仕事ですが主人公はすっかり慣れているようです。
「ルージュをひくたび。」
つまり席につくたびそのことを実感するのでしょう。
最初は不慣れだった仕事にもすっかり慣れてしまったことに一抹の寂しさを感じているのかもしれません。
今はもう会えなくなってしまった、あの人を思いながら。
自分はこんなところで何をしているのだろう。
ずっとこのままで良いのか。
そんな思いが錯綜します。
愛しいあの人はいずこ
あの人追いかけて この町へ着いた頃は
まだルージュはただひとつ うす桜
あの人追いかけて くり返す 人違い
いつか泣き慣れて
出典: ルージュ/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
実は主人公がこの町でそのような仕事をしているのには訳があったのです。
それは愛しいあの人の後を追ってきたから。
この町にいると風の噂で聞いたのでしょう。
矢も盾もたまらず飛び込んだ見知らぬ町。
あの人の姿を探します。
でも来る日も来る日も人違い。
懐かしい彼の姿は目にすることができません。
それでも諦めきれない主人公。
仕事を見つけて腰を据えて探すことにします。
夜のお仕事ならもしかしたらあの人が偶然来てくれるかもしれない。
もしかしたらどこかであの人の噂を耳にすることができるかも。
そんな淡い期待もあったのでしょう。
人違いを繰り返しながら泣いて過ごす日もあります。
それでも希望を捨てずに主人公は強く生きて。
いつの日か泣くのにも慣れてしまいました。
主人公が使っているルージュはうす桜色。
きっとあの人との思い出のルージュなのでしょう。
デートの時につけた時、「その色似合ってるね」などと褒めてくれたのかもしれません。
他の色を使う気になれなくて。
ずっと同じうす桜色のルージュをつけてお店に出るのです。
切ない主人公の心情が伝わってきます。
自笑めいた心情
口をきくのが うまくなりました
ルージュひくたびに わかります
出典: ルージュ/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
いつまで待っても消息の掴めないあの人。
先が見えない毎日を繰り返す中、こなれていく自分だけがいる。
そんな自笑めいた気持ちを表すこの一節です。
仕事は仕事でしっかりとこなしている。
接客のスキルだけは毎度アップしているけれど。
肝心のあの人には会えないまま。
このままいつまで経っても、もしかしたら一生会えないで終わるのかも。
そんな焦りにも似た気持ちが主人公の心の中を支配します。
自分はここで愛しいあの人に会えないまま一生を終えるのか。
彼はもうこの町にはいないの?
でも他にあの人に繋がるような手がかりはありません。
どうにかしたいけどどうにもならない現状がある。
辛くて切ない気持ちがこの一節に込められています。