しゃっくりの歌に収まらない魅力

星野源【いち に さん】歌詞の意味を解説!1から9まで数えるのは何故?風をのんだり泡をかむ意味とはの画像

クライマックスはリフレインを含んでいます。

繰り返しこそが基調なのですが最後のラインが変わっているのです。

泡と風、噛むか飲むかで区別されています。

実際の行動としてはこの両者に大した差はないです。

同じように1から9までカウントして息を止めた後にホッと空気を吸い込む姿でしょう。

ただどちらも詩的な表現に昇華されているので美しさを感じます。

その美しさは極めて簡素なものです。

侘び寂びさえ感じさせる日本的な美しさであります。

また歌詞表記の仕方は現代詩の叙述の作法を踏襲しているのです。

数字の間の空白、1から9を3つのブロックに分け隔てる、その間に短い動詞や助詞を挟む。

叙述の仕方の新しさに星野源の文学的素養がうかがえます。

数を区切るように歌うこと。

リスナーは数と数の間隙に意識が吸い寄せられるのです。

泡を噛み、風を飲むことはすべてしゃっくりを止める作業の後の解放感を指します。

これで実際にしゃっくりが止まったかどうかは上述した通りに書かれていません。

大切なことは少年がある困難を乗り越えた後に一息ついて生を取り戻す仕草の美しさにあるのでしょう。

いち に さん

数をカウントしている間のしゃっくりを止めたいという祈り。

1から9までのわずかな時間に捧げられる神にも祈る思い。

しゃっくりという身体現象はささいなことですが当事者を不安にさせます。

この曲の見事な点は子どもの頃の切実な祈りと、現在の成人した語り手のしゃっくりへの余裕ある態度。

このふたつの有り様を見事なコントラストで描いていることでしょう。

いまの語り手も子どもの頃の語り手もしゃっくりに見舞われています。

子どもの頃にはそれが何かすごく大きな出来事のように解釈された様子が見て取れるのです。

一方で大人になった語り手はあわてず騒がず飲食店で水を口にします。

泡でも風でもなく、水道水で何とかしようとしたのです。

子どもの頃はなぜしゃっくりくらいで動転していたのだろう。

そんな自分の可愛い想い出が甦り、目を細めて回想しているような様子がうかがえるのです。

ああ、何か子どもの頃が遠くなってしまったなという感慨を抱いているのでしょう。

どこかセンチメンタルな気分をリスナーに抱かせる愛らしい作品です。

星野源自身の解説がなければしゃっくりの歌とは思えなかったかもしれません。

ただしゃっくりの歌に収まりきらないこの曲の可能性に気付けたのが収穫です。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEと星野源の軌跡

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