最後はもう塵になって吹き曝される
すべては今薄暗くて寒い場所に立つ
出典: 宇宙の季節/作詞:ぬゆり 作曲:ぬゆり
ついに望まない朝が来て、これまで見ていたはずの夢の世界は跡形もなく消えてしまいました。
あんなに強く手を握っていたはずなのに、ベッドから体を起こしてみても君の姿は見えません。
窓からは明るい太陽の光が差し込んでいるにも関わらず、主人公の世界は暗くよどんだまま。
夢の欠片が消えていく様子を、動きもせずにただ見つめているだけなのです。
主人公にとっての毎日は、もはや生きていないのと同じくらいに感情のないものでした。
ぬくもりなど1つも感じられないこの場所で、今日もまた苦しい1日が始まります。
別の場所を求める理由
憂うべきことはない 涙流すこともない
ただこの場を(この場だけを)
望むため生きている
暇なく
出典: 宇宙の季節/作詞:ぬゆり 作曲:ぬゆり
これまでと同じ苦しい日々が始まったからとはいえ、主人公の気持ちには少しの変化が見られました。
それは、再びあの夢の世界を訪れたならば、君との時間が始まることを知っているから。
太陽の光が痛いほどに照り付ける1日さえ乗り切ってしまえば、また君に会えることを分かっているからです。
希望が芽生えた主人公の目には、もう涙が浮かぶことはありません。
同じ仕打ちを受けたとしても、同じだけの悲しみを感じることはなくなったのです。
そう思わせてくれたのも、あの日見た夢の中で君が手を握ってくれたからに他ありません。
あのぬくもりをもう一度感じたいと思うだけで、どんな日々も乗り越えていける気がする……。
もう、主人公の心を悲しみで満たすことはできません。
どんな時も、人を救うのはたった一筋の希望の光なのです。
光をもたらしてくれた君
影すらも薄くなっていく
僕はいまここに居て そこにあるいのちを見て
透き通る影とハイライトに満ちた筋書きを辿っている
出典: 宇宙の季節/作詞:ぬゆり 作曲:ぬゆり
この世に生きる全ての人にとって、毎日は希望と絶望に溢れたものといえるでしょう。
順風満帆な人生などなければ、始めから終わりまで苦痛に満ちた人生もなかなかありません。
その真実に気がつけたのは、主人公の心が荒れた傷を癒し、未来を見ることができている証拠ともいえます。
ここにあるのは、紛れもなくこれまで歩いてきた自分の「命」です。
そして、これからを歩んでいくはずの「命」でもあるのです。
影が見えないほどに真っ暗な道を歩んできた主人公ですが、今彼にとっての影は薄くか弱いもの。
その先にある光が強すぎるがために、影の存在ですら失われようとしているのです。
1人で闘ってきた主人公にとって、君の存在がどれだけ大きいものだったかを示しているようにも見えます。
突然訪れた終わりの日
春が来て裸足になってしまいたい僕ら
姿を認めて手を振って
青空が茜になってお終いを告げる
伝わるのはただの小さな音
出典: 宇宙の季節/作詞:ぬゆり 作曲:ぬゆり
待ちに待った夢の世界で、君と2人幸せな時間を過ごす毎日。
何も履いていない足の裏から伝わるのは、これまでに気がつくことすらできなかった地球の息吹でした。
君といるうちに、今まで目を向けずにいた世界の素晴らしさを知ることができた主人公。
その経験は、これからの未来に向けて大きく背中を押してくれるものでした。
ある日、夕焼けと共に訪れる「夜」を心待ちにしていた主人公。
しかし、その日はいつもと何かが違っていました。
「もしかしたら、今日はあの夢を見られないのかもしれない」
ベッドに入る前、なぜかそう悟ってしまったのです。
その予感は的中し、再びあの世界へ行くことができなくなってしまい……。
再び孤独を感じることとなった主人公は、どうしてこうなってしまったのかを頭を悩ませます。
夢の世界へ行けなくなってしまった理由、それは主人公が夢に逃げる必要がなくなったから。
勇気をみなぎらせ、昼の世界を生き抜く力を手に入れることができたからです。
うつむくのを止めた主人公に、もう君の助けは必要ありません。
これからは自分の足で、大地を踏みしめながら精一杯生きていくのです。
「出会い」と「別れ」
主人公の言葉をかき消すように
ここにいて
帰らないと
戻れないよ
笑ってよ
置いていかないで
今更もう
遅くないよ
分かるよ
分からないよ
でもきっと知っていた
出典: 宇宙の季節/作詞:ぬゆり 作曲:ぬゆり
突然すぎる君との別れに、戸惑いを隠せない様子の主人公。
昨日別れた時はまだ、今日もまた会えると信じて……それが最後になるなど思ってもみませんでした。
君がいなくては、またあの日の自分に戻ってしまう……。
そんな不安が芽生えては、主人公の頭を埋め尽くしていきます。
君から語りかけられる言葉を全て否定するかのように、現実から逃げている主人公。
君の存在は主人公の心を暗闇から引っ張り上げてくれた救世主だったのです。
ここでどんなに駄々をこねても、君にはもう二度と会えないのでしょう。
しかし今は小さな子供のように、泣きじゃくりながら現実を否定したいのです。
よく考えれば、2人の出会いはまるでおとぎ話のように淡く、儚げなものだったはず。
それでも終わりが来ないと信じていたのは、君が主人公に生きる希望を授けてくれたからなのです。
つついただけで消えてしまいそうな夢は、ついに目の前から姿を消してしまいました。