ヴィジュアル系の代表格
今も走り続ける3人
左 O-JIRO :ドラムス、プログラミング
中央 HAKUEI :ヴォーカル
右 千聖(ちさと):ギター、リーダー
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/PENICILLIN
ヴィジュアル系バンドとして1992年に活動を始めたPENICILLIN(ペニシリン)。
インディーズ時代に出した2枚のシングルは「Penicillin」と表記していました。
大文字表記は1996年、メジャーデビュー後のシングル「Blue Moon/天使よ目覚めて」からです。
男性が麗しいメイクをしてステージに立つ「ヴィジュアル系」が出現したのは80年代後半。
その後、90年代初頭にLUNA SEAが新勢力として台頭。
94年は特に勢いが増し、黒夢、GLAY、L'Arc〜en〜Cielがメジャーデビューを飾ったのです。
こうして実際にアーティストの名前を見ていると、当時をの記憶が蘇(よみがえ)ってきませんか?
PENICILLINは当時よくGLAYと対バンのライブが多かったそうです。
そんなGLAYがメジャーデビューしてさすがに凹(ヘコ)んだのでは……?
でもHAKUEIさんはGLAYがデビューしたことで「オレ達もいけるかも!」と希望を持ったそうです。
考え方がポジティブでいいですね。
では、まずは「ロマンス」の映像から見ていただきましょう!
最大ヒット曲・ロマンス
情熱溢れるPV
最近のアーティストのPVはドラマ仕立てになっていることがほとんどです。
でも90年代はアーティストが演奏している姿を余すところなく見せる作り方がされていました。
なので、このPVもバンドの演奏がメインになっています。4人体制は懐かしいですね。
ベース担当のGISHOさんが2007年に脱退しました。
その後はメンバーが変わることなく、休止もなく続けているのはすごいことです。
ですがPVを見ていると「マイクをガン無視で歌うHAKKUEIさん」が気になります。
「マイクいらんやん!」とツッコミ待ちのような……。
時折ひとりでぽつんと座っているカットは、彼女を一途に待つ姿を表現しているのでしょう。
そんなHAKUEIさんの姿が飼い主の帰宅を待つワンコに見えてきそうです。
HAKUEIさんの可愛さにPVの見方がちょっと歪んでしまいました。
この歌は、切なく狂おしいラブソングなのです!
次は切実な想いがつづられた歌詞を見ていきましょう。
気づいて、僕の、愛に……
歌い出しから最高潮!
愛に気づいて下さい 僕が抱きしめてあげる
夢も涙も忘れて 君を求めていた
誰も知らない世界で 僕がささやいてあげる
窓に映る切なさは 生まれ変わるメロディー
出典: ロマンス/作詞:HAKUEI 作曲:PENICILLIN
物悲しいメロディが鳴り始めて「さぁ聞くぞ」と思っていると、急にサウンドに脳を叩かれます。
そしてサビにもなっている「愛に気づいて下さい」の叫びが心にズンとのしかかってくるのです。
「聞く人を引きつける始まり方選手権」があれば優勝レベルじゃないでしょうか。
この主人公「僕」は、彼女の愛を欲しています。
「僕はもう自分のことなんてどうでもいい。夢なんていらない、涙なんて知らない。
君が一緒にいてくれるだけでいいんだ。
君と僕がいればそこが世界になる。僕は君にずっと愛をささやくよ」
ひたすら彼女に語りかけています。
でも彼女には届かない……。
彼女はある「切なさ」を抱えていたのです。
密かに思っていたけど……
壊れてしまった バランスが崩れた
手探り探す指先が震えて
戸惑うくせに絡みつく花びらは
溜め息重ねて浮かぶイメージ
目を閉じてごらん どこまでも行こう
鮮やかに奪われた君が離れない
愛に気づいて下さい 僕が抱きしめてあげる
夢も涙も忘れて 君を求めていた
誰も知らない世界で 僕がささやいてあげる
恋に落ちる切なさは 生まれ変わるメロディー
出典: ロマンス/作詞:HAKUEI 作曲:PENICILLIN
何が「壊れて」「バランスが崩れた」のか。
もしかしたら「僕」は彼女に何も言っていないのでは? と思いつきました。
「気づいて下さい」は、彼がずっと心の奥で願っていること。
彼女には恐らく彼氏がいるのではないでしょうか。
しかも「僕」の友人なのかも……。
彼女とも、その彼氏とも友人関係の「僕」。
2人の恋を見守っているフリをしながら、実はずっと彼女のことが好きでした。
だから彼女から「彼氏のことで相談がある」と呼び出され、2人で会うことに。
そのときに、彼女に気持ちがバレてしまった……。
当然「僕」は指が震えます。後悔と、ほんの少しの期待に胸が高鳴ったのでしょう。
彼女は困った様子を見せるけど「この人、私を好きなんだ」そんな安心感があるような……。
彼女は彼氏とは上手くいっていません。
だけど「僕」の脳裏には焼きついています。
彼氏が彼女に告白して、彼女がその手を取り、2人で歩いて行く姿が。
多分2人がカップルになる瞬間を「僕」は見ていたのでしょう。
「僕もずっと君を見てたのに。君以外に何もいらないのに……」
呆然と、2人が歩いて行くのを見つめるしかなかった。
この切なさは今でも「僕」のトラウマなのかもしれません。