そしてとうとう、ここでタイトルと同じ歌詞が登場しました。

2人一緒にいるはずなのに、なぜ「ゼロ」?

一見するとネガティブなこの言葉ですが、決してそんなことなどありません。

その秘密は、算数で習う掛け算に隠されていました。

掛け算は掛ける数字の大きさによって、元の数字が大きくなったり小さくなったりしますね。

でも0を掛けると…?

もとの数がどんなに大きかったとしても、その結果はすべて「」になるのです。

つまり会えるまでの5日間でさえ、0を掛ければなかったことになる

これはカップルに置き換えれば、「同棲」や「結婚」を意味するのかもしれません。

相手を想う気持ちの大きさが滲み出ている、素敵なフレーズですね。

もう1つのゼロの意味

会えない日の方が多い2人は、デートを終えて離れるたびに苦しい想いをしていました。

辛いなら次の楽しいデートを想像すればいいのでしょうが、ネガティブがその想像に勝っているのでしょう。

当然会えない期間をなくす=0にすることも1つの手段です。

しかし同棲や結婚はそう簡単にできるものではないかもしれません。

であればせめて時間的な、そして物理的な距離がなくなるまで、そのネガティブな感情とおさらばしたい。

そう願うのではないでしょうか。

つまり次のデートまで自分の心が「ゼロ」であれば、ネガティブが1つ増えても掛け算でゼロにできます。

2つに増えたって、3つ降りかかってきたって、すべてなかったことにできるのです。

自分自身の心を守るための「ゼロ」なのだという解釈もできますね。

繋いでいた時は温かかったのに…

離すまで気がつかなかった

繋いだ手を離せば この街はとても寒くて
遠くに消えていく背中 1人で待つことしか出来ない

出典: ゼロのままでいられたら/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

この楽曲が描き出すストーリーは、冬が舞台なのでしょう。

凍えるような空気の中、繋いだ手だけとても温かく感じられます。

しかしそれを解いてしまえば、守ってくれるものが何もありません。

近くにいたってその肌に触れていなければ、何だかすきま風が通り抜けるような感覚です。

橋の向こうにあるバス停に歩いていくあなたの後ろ姿。

その様子を見ながら、ただ寂しさを募らせていきます。

それはバス停に向かうあの人も同じ。

振り返って相手の姿を見たい…。でもそれをしないのは、寂しさが募ってしまうから。

また会いに来てくれる日を待つわたしと、また会いに来てくれるあなた。

一時の別れを迎えたカップルの切ない心模様が、ぎゅっと詰め込まれています。

こうして別れの切なさ、寂しさを歌っているということは、まだ2人は「ゼロの状態ではない」ということ。

2人に「ずっと一緒にいられる日々」が訪れるのは、まだまだ先のことになりそうですね…。

季節を感じさせる繊細な表現

「街が寒い」という表現から、雪が降り積もる情景が思い浮かびませんか?

2人がお別れを告げた途端に降り始めた粉雪。

大好きなあの人が隣にいなくなった瞬間に感じる、この季節の寒さがピリピリと突き刺さります。

これまでは気候に触れられることなく進められてきた歌詞

ですが「寒い」というワード1つで、寂しさを表現しているような、季節そのものを表現しているような、様々なイメージが浮かびませんか?

たった1つ。その1つの単語だけでここまでリスナーの想像力を掻き立てるのです。

彼らの楽曲が多くのリスナーを感動させる要因。

それがここからも感じ取れる、人の心模様を歌う繊細な表現でしょう。

彼らの持ち味が、この楽曲でもいかんなく発揮されています。

作詞したのは男性の藤原聡さんですが、「揺れ動く女性の心」の表現がとても丁寧だと思いませんか?

儚げで危なげな、恋する女性の心理状態がとても繊細に表現されているのです。

願いはただ1つ…

別れの寂しさはもう味わいたくない!

笑顔で見送って、会えない日々が始まって
言葉よりもずっとずっと長い「あと5日」
寂しさはいつだって抑え込んで隠して
「隣に居られるなら、それでいいから…」

出典: ゼロのままでいられたら/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

何回、何十回、何百回繰り返しても慣れることができない、お別れの寂しさ

それほどまでに相手を想い、深い愛情をもって接していることがわかりますね。

まさに理想の恋愛!一途に想い合うことの美しさに、心打たれます。

「5日」。言葉に出してしまえばたった一瞬です。

でも実際には、待てど暮らせどやってこない、遠い先の未来

寂しさに耐えられず、神様に祈るような様子さえ見せ始めました。

決して多くは望まない。だからせめて…一緒にいさせてほしい。

心の底から相手を想っているのでしょう。一途すぎる愛が眩しいですね。

でも、その一言が言えない…

一体 何年先の未来までこうやって
永久の愛なんてあてにしていけるだろう?
心から「幸せだ」なんて言えるような未来を
待ち焦がれて今日も1人が辛いよ
ああ そんな不安も わがままも 哀しすぎて言えない

出典: ゼロのままでいられたら/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡