スピッツの「愛のしるし」とは?
スピッツの「愛のしるし」は草野正宗がPUFFYに提供した楽曲のセルフカバーで、アルバム『花鳥風月』に収録されています。
また、スピッツの通算20作目のシングル「流れ星」のカップリングとしても収録されていて、
こちらは「SPITZ JAMBOREE TOUR '98 “fake fur”」の、1998年11月15日赤坂BLITZ公演でのライブを収録したバージョンです。
今回はそんなスピッツの「愛のしるし」が生まれた経緯、
「愛のしるし」はPUFFYに提供した曲!その経緯は?
デビューから4作連続でミリオンヒットを記録し順風満帆に見えていたPUFFYでしたが、
彼女らのプロデュースを行っていた奥田民生が曲ができないと、雑誌月刊カドカワにて草野さんに依頼したことが、
「愛のしるし」がPUFFYに提供されたきっかけです。
また草野さんと同時にトータス松本さん、桜井和寿さんにも依頼し、トータス松本さんは「ネホリーナハホリーナ」を提供、
桜井和寿さんは、彼女たちらしい曲はうまくできないというような理由で断ったそうです。
ちなみに、この依頼を受けたトータス松本さんはまず草野さんに電話したところ、草野さんは、
曲のストックがあるから別に構わないと言っていたという話も残っています。
これだけの名曲を世に送り出しながら、その口ぶりだとお蔵入りになっているストック曲がたくさんあるんでしょうか...。
草野さんの才能が恐ろしいですね。
しかし、このエピソードからわかることはもう一つあって、
「愛のしるし」がストック曲の中から提供されたということは元々はスピッツで歌おうとしていたということですね。
というわけで、PUFFYの曲の歌詞解釈なの?と思っていた人もいるかもしれませんが、
今回はスピッツの「愛のしるし」として、歌詞を解釈しますよ。
まずは、PVから見ていきましょう。
PUFFYを意識?次々と衣装を変えていくポップなPV!
松岡小椰さんが演じる女性と一緒に、メンバーも次々と衣装を変えていくPV。
まずは衣装をまとめてみました! (女性/スピッツの順です)
- ロックな服装の女性/ロックバンド
- OL/サラリーマン
- スチュワーデス/パイロット
- ナース/医者・入院患者(三輪さん)
- 強盗/警察官
- 赤ずきん/狼
- セーラー服/学ラン・学生帽
- 白雪姫/小人
- ドレス/タキシード
どれも似合っているのですが、個人的には警官のコスチュームの時に拳銃を構えるものの一瞬もたついたようなところがお茶目で好きです。
また、PUFFYの「愛のしるし」のPVがキューピッドたちと空の上のような世界観だったので、パイロットは空繋がりかなと思ったりもしますが、どうでしょうか。
このPVから「愛のしるし」の歌詞につながる意味を見出すとするならば、
赤ずきんを求める狼や、白雪姫を慕い守ろうとする小人、また、強盗を捕まえなければならないはずの警官でも手を上げてしまっていることから、
たとえ自分が何をしていても、「あなた」がどんな人でも、きっと惹かれてしまうだろうということを象徴しているのかもしれませんね。
スピッツ「愛のしるし」の歌詞を紹介!
ここからはスピッツの「愛のしるし」の歌詞を解釈していきます。
草野さんが以前のインタビューで、本当は愛という言葉をあまり使わずに歌を作ろうと思っていたのに最近使ってしまうと、笑いも交えながら、
例として「愛のしるし」を挙げたという話もあるのですが、この曲に込められた「愛」とはどのような愛なのでしょうか。
歌詞を解釈しながら考えてみたいと思います。
心が痺れ、それだけで人生が輝くのが「愛」
ヤワなハートがしびれる ここちよい針のシゲキ
理由もないのに輝く それだけが愛のしるし
出典: 愛のしるし/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
これが恋なのか、愛なのかわからないとか、恋が愛に変わった時だったとかどこかで聞きそうな言葉ですが、実際「愛」を語るのは難しいですよね。
この歌詞で草野さんが綴ったおそらく草野さんにとっての「愛」は
自分が傷つくのを恐れるような「ヤワな」心でも「しびれる」ような程よい「シゲキ」。
そして明確な「理由もないのに」人生が「輝く」もの。
それが、自分にとっては「愛」である証拠だと言っているのですね。
「愛」による刺激を「針」と例えているのは、自分の心を「ヤワなハート」と言っているように、本来は刺激に弱い傷つきやすい心なのでしょう。
しかし、ちょっとしたことで不安になったり、小さなことで傷ついたりしてしまうのも同じように刺すものでも少しチクっとする、
「心地よい」刺激だと思えてしまうのがその人に抱いている感情が「愛」であるという「しるし」だということなのでしょう。
自分が旅に出てもいつまでもそこで待っていてくれると信じられるのが「愛」
いつか あなたには
すべて 打ち明けよう
少し強くなるために
壊れたボートで 一人 漕いで行く
出典: 愛のしるし/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
「いつか あなたには すべて 打ち明けよう」などと意味深な言葉を残して、どこかへ行かれたら普通置いて行かれた方は不安になりますよね。
しかも、その旅に出るのは船は船でも、いつ沈むかもわからない「壊れたボート」です。
「少し強くなるために」という言葉もまた戻ってくることを本来なら示唆するものですが、
そんな壊れた船で一人どこかへ漕ぎ出して行ってしまった人が帰ってくるかどうかなんて普通信じられませんよね。
しかし、「いつかあなた」の元へ帰ってきた時には「すべて打ち明け」るから、「少し強くなるために」僕は旅に出るけど、信じて待っていてくれ。
そんな曖昧な約束でも心から理解し、相手を信じて待っていられるのが「愛」ということなのでしょう。
また、自分の目標のために少し距離を置くことになったとしても、自分を待っていてくれると信じられるのが「愛」だとしているとも考えられますね。
また、少し深読みすると、「一人」ということと、いずれ沈んでしまう「壊れたボート」の旅は、もしかしたら死を暗示しているのかもしれません。
そうだとしたら、自分がもし死んでしまったとしても、自分のことを想い続けてくれると信じられるということが「愛」であり、
死という人間の抗うことができない期限に対して、愛は人生に価値を与え、永遠という形で抗えるということなのでしょう。