YOASOBIの8作目の配信作品
「優しい彗星」は2021年3月にYouTubeに公開された楽曲です。
TVアニメ『BEASTARS』のエンディングテーマとして起用されています。
アニメの世界観を見事に表現しており、静かな力強さを湛えたメロディが印象的な楽曲です。
歌詞とMVをあわせることで、登場人物達の関係性を知ることもできます。
両方を深く読み解くことで、より楽曲の世界観に浸ることができるでしょう。
2人の出会い
あてもなく進む車
今、静かな夜の中で
無計画に車を走らせた
左隣、あなたの
横顔を月が照らした
出典: 優しい彗星/作詞:Ayase 作曲:Ayase
歌い出しでは主人公と「あなた」がともに車でどこかに向かっている様子が描かれています。
2人はどこに向かっているのか、決まっていないようです。
車を運転しているのは主人公の方で、助手席には「あなた」が座っています。
MVではライオンと鹿の2人が描かれており、運転しているのはライオンです。
このことから、ライオンの視点で描かれていることが分かります。
主人公は運転をしながらも時折相手の様子を伺っているのでしょう。
月に照らされた相手のことを気にしていることが読み取れます。
脳裏をよぎる思い出
ただ、思い出を探る様に
辿る様に言葉を繋ぎ合わせれば
どうしようもなく溢れてくる
日々の記憶
出典: 優しい彗星/作詞:Ayase 作曲:Ayase
主人公と「あなた」は車の中で互いに無言でいるのではなく、何か会話をしています。
その話題は2人の思い出に関するもののようです。
話しているうちに、その時のことを頭の中で自然とイメージできるのでしょう。
その記憶は、2人にとって大事なものであり、出会ってからの日々全てが大切な思い出なのです。
その思い出をあてもなく走る車の中で話している様子が想像できます。
見せかけと本物
演じる強さ
あなたのそばで生きると決めたその日から
少しずつ変わり始めた世界
強く在るように弱さを隠すように
演じてきた日々に
出典: 優しい彗星/作詞:Ayase 作曲:Ayase
主人公にとってあなたとの出会いは人生を変える大きな出来事だったのでしょう。
それは、自分を変えてくれる出会いだったのです。
主人公はあなたに出会うまで、常に自分を強くみせようと、虚勢を張っていました。
自分を少しでも良くみせたい、という思いがあったのかもしれません。
もしくは、弱い自分では生きていけない世界だったということも考えられます。
そうした状況の中で、自分の弱い部分を人に知られるわけにはいかなかったのでしょう。
そのために、弱さを隠して強いふりをし続けていたのだと読み取れます。
自然に生まれる強さ
ある日突然現れたその眼差しが
知らなかったこと教えてくれた
守るべきものがあればそれだけで
こんなにも強くなれるんだ
出典: 優しい彗星/作詞:Ayase 作曲:Ayase
強いフリをしていた主人公は、あなたとの出会いが考えを変えるきっかけになりました。
あなたが主人公とは違った生き方や考え方を持っていたからです。
そして主人公から見れば、あなたはどこか非力なところがあると考えていたのかもしれません。
しかし“強さ”とは本来単純に力だけをさすものではなく、様々な“強さ”の形があります。
あなたは主人公が今まで思いもよらなかった“強さ”を持っていました。
あなたが教えてくれた“強さ”は、物理的な力ではなく精神的な強さだったと推察できます。
主人公はこれまで自分の弱い部分を隠して、強いフリをしてきました。
しかし、本当に心の強いあなたに出会ったことで本当の強さを知ったのでしょう。
そのことが、主人公は自分の考えを変えるきっかけになったのです。
自分と違う意見に触れ、主人公は今まで自分が知らなかったことを知ることができたのだと読み取れます。