遠い国の山のふもと この世で一番綺麗な水が湧いた
やがてそれは川になり そこに群れを作った魚を
腹を空かした熊が食べて 猟師が熊の皮をはいで
それを市場で売りさばいて 娘の為に買った髪飾り

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/928487384647319552

この部分は人が生活する原始的な様子があらわされています。この曲の歌詞は、過去・現在・未来への世界が連なっていくことが特徴です。

また、自分という主観だけでなく、意図的に他の作品の要素を入れ込むことで客観性を高めているように感じます。

「腹を空かした熊が食べて」の部分は、人間のずるさや自然の中の一部である人間という存在を考えさせられる宮沢賢治の「なめとこ山の熊」を連想させる歌詞です。

誰もが生きる事に必死で、それが連鎖して生きる事は成り立っているのです。

「悪い人間」

悪い人間がやってきて 全部奪ってしまったのは
歴史のちょうど真ん中辺り 神様も赤ん坊の時代
母親のこぼした涙が 焼けた匂いの土に染みて
それを太陽が焦がして 蒸発して出来た黒い雨雲

出典: https://twitter.com/__amazarashi_/status/926639415039950848

その雲は海を越えた砂漠に 5ヶ月ぶりの雨を降らせた
雨水を飲んで生き延びた詩人が 祖国に帰って歌った詩
それを口ずさんだ子供達が 前線に駆り出される頃
頭を吹き飛ばされた少女が 誰にも知られず土に還る

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/928577985514430464

「悪い人間」という部分や戦争が描かれていることから、BLANKEY JET CITYの「悪いひとたち」を思わせます。

表現はまったく異なりますが、自分は傷つかずに弱い者から奪っていく人を「悪い人間」とあらわすところに共通した考えを感じないでしょうか。

悲しい出来事は、別の場所では干上がった土地に雨をもたらすこともあります。そして、そこから希望を得た人の詩は戦場に向かう子供たちを支えていくのです。

そして、「悪い人間」が利益を得ている裏側では、誰にも知られずに少女は土に還るのです。

そこに育った大きな木が 切り倒されて街が出来て
黒い煙が空に昇る頃 汚れた顔で僕等生まれた
善意で殺される人 悪意で飯にありつける人
傍観して救われた命 つじつま合わせに生まれた僕等

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/928623281271275520

その少女の土に還った場所には、木が生えます。また、その命を切り倒して街は作られていくのです。

やさしさにつけこまれて命を落としていく人がいて、その逆に人の悪意によってお金を得る人もいるのです。

それに関わらず、ただ眺めて生きながらえる人がいることで、バランスを取りながら街は大きくなっていきます。

そして、失ったものを埋めるように、つじつま合わせに生まれたのが自分だと感じているのです。

誰もが人を信じられなくなる

【つじつま合わせに生まれた僕等/amazarashi】誦読のMVでファンがそわそわ!?コードを紹介♪の画像

高層ビルに磔の 価値観は血の涙を流す
消費が美徳の人間が こぞって石を投げつけるから
金にもならない絵をかいた 絵描きは筆をへし折られて
見栄っ張りで満員の電車が 走る高架下で暮らしている

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/928759181837864960

喜怒哀楽をカテゴライズ 人に合わせて歌が出来て
悲しい時はこの歌を 寂しい奴はあの歌を
騙されねーと疑い出して 全部が怪しく見えてきて
人を信じられなくなったら 立派な病気にカテゴライズ

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/928849775717314560

不健康な心が飢えて 悲劇をもっと と叫んでいる
大義名分が出来た他人が やましさも無く断罪する
人殺しと誰かの不倫と 宗教と流行の店と
いじめと夜9時のドラマと 戦争とヒットチャートと

出典: https://twitter.com/amazarashi_bot/status/907106500165779456

生きる事や信じる事の価値観が歪み、消費することで「悪い人間」が潤う社会は利益にならないものを虐げるのです。

「金にもならない絵をかいた」という部分に自分が信じる美しさを求めた人間は認められずに、バカにされてしまうという考えがあらわされています。

感情さえもパッケージングされて消費されるようになったと感じはじめると、何を信じてよいかわからなくなってしまいますよね。

そして、わからなくなった多くの人々が、誰かの正義をふりかざして断罪をはじめます。それは、誰にとっての正義なのでしょうか。

このような状況を本来であれば疑問に思ってもおかしくないのに、それを口にするとおかしい人間にカテゴライズされると批判しています。

誰もが転がる石なのに 皆が特別だと思うから
選ばれなかった少年は ナイフを握り締めて立ってた
匿名を決め込む駅前の 雑踏が真っ赤に染まったのは
夕焼け空が綺麗だから つじつま合わせに生まれた僕等

出典: https://twitter.com/placevo/status/928494414695038976

「少年はナイフを握り締めて立ってた」という部分は、THE BLUE HEARTSの「少年の唄」を思わせます。

消費する事を理解できず選ばれなかった少年は、どのように生きれば良いのでしょう。

弱いはずの人間がさらに弱い人を叩くという仕組みを成り立たせるために生まれたのでしょうか。

せめて愛してほしい

ふざけた歴史のどん詰まりで 僕等未だにもがいている
結局何も解らずに 許すとか許されないとか
死刑になった犯罪者も 聖者の振りした悪人も
罪深い君も僕も いつか土に還った時

出典: https://twitter.com/placevo/status/928494414695038976

その上に花が咲くなら、それだけで報われる世界
そこで人が愛し合うなら、それだけで価値のある世界
だからせめて人を愛して 一生かけて愛してよ
このろくでもない世界で つじつま合わせに生まれた僕等

出典: https://twitter.com/iKON_cham/status/918496050360418309

繰り返される歴史が行き着いた先で、正しさがわからない自分達は未だにもがき続けているのです。

たくさんの人が生まれ、死んでいくことが積み重なる事で世界は成り立っています。

そのため、自分たちは生まれてきただけで罪を背負っていると感じているのです。

何が正しいかわからない世界だからこそ、せめて人を愛して欲しいと願っています。

世界を継続させるつじつま合わせのために、僕等は生まれたのではないと信じたいのでしょう。

そして、「このろくでもない世界」の中で愛する事ができるのならば、ただそれだけで未来への光を見いだすことができるのです。