壮大なラスト曲
ライブのラスト曲として演奏されることの多いKing Gnu(キングヌー)の「サマーレイン・ダイバー」。
1枚目のアルバム「Tokyo Rendez-Vous」(ランデブー)の最後を締めくくるのもこの曲です。
壮大なオーケストラサウンドと生演奏、常田大希さん&井口理さんのハモるボーカル。
そして何度も繰り返される美しいコーラス。聴き応えたっぷりの名曲です。
1番の歌詞を考察
なかなか始まらない
1番が始まるのは1分近く経った頃。
歌モノ楽曲であることを忘れ、コーラスとサウンドに酔いしれた頃、唐突に常田さんのボーカルが始まります。
しかも「ハ~イ」と英語の挨拶のような出だしなので「いったい何事が起きた?」ととまどうかもしれません。
そのぶん一気に歌物語に引き込まれる美しい歌詞になっています。
雨を背中越しに感じる男性
背後の雨は昨日の2人
青く深く染め上げてゆく
最後の手触りは心の痛みに
深く潜ってゆく
出典: サマーレイン・ダイバー/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
どうやら天気は雨模様。
主人公の男性はこの雨を背中越しに感じているようです。これだけでもう格好いい男性しか浮かびません。
いや、男性は格好つけているわけではないようです。
おそらく1人で自宅にいて、窓の外の雨音が気になったのでしょう。
でも振り返って、実際に降っている雨を確認する気分ではない。もしくはその気力もない。
ただ雨音に感化されて、昨日の出来事を思い出し、ブルーな気分になった。
雨=昨日の出来事。
そんな情景が見えるようです。
恋人との別れ
では昨日の出来事とはいったい何なのでしょうか?
わかりやすい言葉だけが淡々と綴られた歌詞ですが、そこから浮かび上がるのは切ない心象風景。
窓の外で降っている雨は、自分の心の中に流れる涙のよう。なぜなら昨日、恋人と別れたから。
昨日、男性は最後の日とわかりながら女性と一緒に過ごしたのでしょう。
男性の後ろで降る雨ということで…。
昨日という過去、恋人との思い出を表したかったのかもしれません。
1番はこれだけなのですが、「ハ~イ」から始まる短い歌詞だけでも非常にドラマチックですね。
手触り…
泣きたい気分のときに雨が降っていると、天気と心の中がシンクロしている…と感じることがあります。
ただ恋人との最後の逢瀬を「手触り」と表現するのは男性もしくは恋愛上級者ならでは…かもしれません。
ものすごく具体的な表現にドキッとさせられますが、その言葉によって導かれるのは失恋の悲しみ。
もう彼女と会うことはないという事実を、雨だけでなく手の感覚によっても深く実感しているのです。
プルーストの小説「失われた時を求めて」ではマドレーヌという味覚で過去を思い出しますが…。
音楽家は雨の音という聴覚、ギター弾きは手触りという触覚が敏感なのでしょうか。