さっきまで窓に映った貴女
梅雨の中へと溶けて消えてゆく
“さあお乱れ、
最後の夜だろ?”
ありのままに踊り狂ってゆく

出典: サマーレイン・ダイバー/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta

1番と2番のあいだのコーラスは時間経過を表していたのかもしれません。

雨を背中で感じていた男性は、どうやら振り返って窓を見たようです。

男性の部屋に女性がいた昨日の夜は、窓に女性が映っていたのでしょう。

あるいは今日になっても残像のように女性の面影が窓に見えていたとか。

もしくは夜が明けて朝、女性は部屋を出て行ったばかり…という可能性もあるでしょうか。

ただこの解釈だと窓に映るというよりは、窓越しに実際の女性が見えるという話になります。

時間軸と「実像・虚像のどちらか?」については少々あいまい。

「つい昨日まで彼女の姿が窓に映っていたのになあ」という感じですが…。

彼女と別れた前後に雨が降っていたことによって、時間や彼女という実態がぼんやりかすんでいくイメージ。

女性との思い出が雨にかき消されてしまった。あるいは彼女が出て行って実際の姿が雨に消えた。

どちらの意味にも考えられます。

夏の雨を泳ぐ人

King Gnu【サマーレイン・ダイバー】歌詞の意味を考察!繰り返すフレーズに込められた意味とは?の画像

タイトルの「サマーレイン・ダイバー」を日本語に訳すと「夏の雨を泳ぐ人」という意味になるでしょう。

男性と女性が別れた時期は梅雨。そのため女性の姿、あるいは2人の最後の夜の出来事が雨と同化したわけです。

梅雨を夏に含めるのか、それとも梅雨のあとに夏が訪れると考えるのか。むしろサマーレイン=梅雨なのか…。

解釈には幅があります。

「昨夜、梅雨の雨と同化して泳いだ女性」あるいは「昨夜、梅雨の雨と同化して泳いだ2人」…。

もしくは「これからの夏を自由に泳いでいく女性」かもしれません。

最後の夜を回想

King Gnu【サマーレイン・ダイバー】歌詞の意味を考察!繰り返すフレーズに込められた意味とは?の画像

そしてドキドキさせられる“さあ~”の部分。これは昨夜の男性の発言を自ら反芻しているのでしょう。

そのあとの「踊り~」も昨夜の出来事。雨を見て、ムード満点だった夜を回想しているわけですね。

あるいは男性と別れても、女性は自分らしく生きていくだろう…という意味も重なるかもしれません。

ともあれ男性は女性が部屋を出て行ったあと、1人で女性との昨夜の出来事を思い出しているわけです。

雨=昨夜の出来事

少なくとも男性は女性が嫌いになって別れたわけではなく、むしろ未練たっぷり…ということがわかります。

さらっと受け流しましたが、いやはや濃厚なラブストーリーです。

美しいコーラスが繰り返される意味とは?

King Gnu【サマーレイン・ダイバー】歌詞の意味を考察!繰り返すフレーズに込められた意味とは?の画像

「サマーレイン」という曲の半分近くを占める美しいコーラス。

1番と2番の歌の前後に計3回出てきますが、ずっと同じフレーズが繰り返されています。

歌っているのはエルムホイ

“Dance dance, anyways,
it'll work.”she says.

出典: サマーレイン・ダイバー/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta

「とにかく踊ろう。何とかなるよ」と彼女は言った

そんな意味です。このコーラスのハイトーンボイスはermhoi(エルムホイ・愛称ホイ)さんという女性。

常田さん率いるミレパことmillennium parade(ミレニアムパレード)ではボーカルを担当。

ヌーの曲でもしばしばコーラスで参加されているアーティストです。

ただ「イントロ・間奏・アウトロ」と3回出てくるコーラスのうち、イントロでは男性の声も混ざり…。

アウトロではホイさんのコーラス・ボイスが多数重なり華やかになります。

曲にもよりますが基本的に音数(トラック)が非常に多いのがヌーの特徴。

じっくり聴き込むと「こんな音も入っていたのか!」と新たな発見があるのもおもしろいですね。

ライブバージョンもあり

ヌーのボーカルは七色の声色をもつ井口さんと渋い声の常田さんの2人。

ラブソングはどちらかというと井口さんがメインで担当することが多いものの、この曲は常田さんがメイン。

そして「コーラスのハイトーンボイスは井口さんじゃなかったの?」と驚いた人もいるかもしれませんが…。

ライブでは井口さんが美声を披露されますので、ライブバージョンもお聴き逃しなく!

私とあなたの物語

「サマーレイン」は男女の恋愛物語。

主人公の男性の心情を常田さんがメインで歌い、井口さんがハモリ。

女性の発言を含むコーラスをホイさんが担当しています。

つまり男性役を常田さん、女性役をホイさんが演じるドラマのような設定になっているわけです。

こうして歌い分けることで「私とあなた」という「個と個」の関係性がクローズアップ。

その結果「ヌーとリスナー」の距離感もぐっと縮まる…という効果が生まれています。

簡単にいうと「歌物語の世界観に深く入り込みやすい」ということですね。

むしろ「リスナーが深く入り込める曲」というコンセプトが先にあり…。

そのためにはラブソング、私とあなたという1対1のドラマにしよう!という流れでは?とも考えられます。

深層心理を表現

コーラスで繰り返されるフレーズは、男性作家が書いた小説の一片のよう。

「大丈夫だから踊ろう」と彼女は言ったんだ…と何度もループしています。

結局2人は別れましたが、1人になった男性の頭の中では昨日女性が言った言葉がよみがえるわけですね。

そして「彼女が大丈夫って言ったから大丈夫のはず」というような未練たっぷりの感情に深く溺れている、と。

踊りまくっている、と。

別れた現実をなかなか受け止められずに、昨夜の出来事ばかりが繰り返し思い出されるのでしょう。

そんな男性の深層心理、心の奥底の感情を描くために同じフレーズが繰り返されていると考えられます。

「サマーレイン・ダイバー」には深く愛し合うだけでなく、心の奥底に深く潜り込むという意味もあるでしょう。

むしろ「深く刺さる曲」のほうがメインテーマかもしれません。そのために美しいコーラスを繰り返し多用。

サウンド面での効果も見逃せません。