主人公の葛藤が直接表現されているのがこの部分です。

内気で臆病な性格でありながら、おどけて周囲の笑いを誘う主人公。

クラスの中では「お笑い芸人」のような立ち位置なのかもしれません。

そして、これはまったく独自の見解ですが、彼女の彼というのは結構なイケメンなのではないでしょうか。

つまり、「アイドル同士の交際」を見つめるお笑い担当の主人公という構図です。

話は変わって、この主人公の疑問に答えてみましょう。

彼女が微笑んだのは主人公の振る舞いに心から喜んだだけ、つまり「ウケた」のです。

それ以上のことはありません。

そして「目配せ」も、彼女からすれば主人公の視線を感じて「目を合わせただけ」とも考えられます。

もしかしたら、実際の彼女は笑いかけてすらいないのかもしれません。

こう書いてしまうとなかなか絶望的ですが、傍から見るとそういう風にもなっているのではないでしょうか。

止められない想い

Lalala ねぇ 声が聞きたいよ
Lalala 自分が自分じゃないみたいだ

出典: Raspberry Lover/作詞:秦基博 作曲:秦基博

部屋で1人になり、今日のこと、彼女の微笑みを思い出す主人公。

その声も思いだし、それが自分に向けてのものではなかったことに苦しみもだえるのです。

そして、自分の悩みを客観視すると、それがまるで意味のないことだと主人公は悟ります。

「自分は一体どうなってしまっただろうか」と、自分自身の変わり果てた様子に唖然とする主人公です。

しかし、それも仕方がありません。

恋とはそういうもの、人を盲目にさせるのが「恋」ですから。

ただ、この恋は叶わないと最初からわかっているところが、主人公の切なさを増しています。

「ラズベリー」の持つ意味

秦基博【Raspberry Lover】歌詞の意味を解説!夢中な彼女はどんな人?甘い実が示すものとはの画像

Raspberry Lover
奪い去る そんな勇気もないのに
何を差し出せば
この僕に その甘い実をくれますか

出典: Raspberry Lover/作詞:秦基博 作曲:秦基博

曲名ともなっている「ラズベリー」。

果物の「木苺」のことですが、英語のスラングの意味もあります。

raspberryは舌を唇の間にはさんで息を吹き出した際に出る屁のような音自体を指し、blow a raspberryでこの音を出す行為を、give a raspberryで誰かに向かってこの音を出す行為をそれぞれ表す。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ラズベリー_(スラング)

この説明だとわかりにくいですが、スポーツでラフプレーがあったとき起きる「ブー」という音に近いです。

ラズベリーが意味するもの、それは主人公の「寒い」お笑いなのかもしれません。

あるいは、好き合っている彼女と彼を揶揄する意味もあるかもしれません。

つまり、彼女の彼に対する主人公の嫉妬が「ラズベリー」に込められていると考えられるのです。

その一方で、果物としての「ラズベリー」もその意味に込められています。

「彼女の唇を奪いたい」という、ストレートな願望を意味する言葉が「甘い実」です。

主人公の狂おしいほどの熱情が、語尾の疑問形として表れています。

2番

顔に出せない

秦基博【Raspberry Lover】歌詞の意味を解説!夢中な彼女はどんな人?甘い実が示すものとはの画像

また ポーカーフェイスで会話を続けながら
一体 何回 頭の中で抱きしめるんだろう

出典: Raspberry Lover/作詞:秦基博 作曲:秦基博

恋人の距離感とは決定的に違う主人公と彼女の間柄ですが、クラスメイトとして普通に話はできるようです。

恋というのは不思議なものです。

「好きという想いを伝えたい」という願望と「好きなことを悟られたくない」という願望。

2つの相反する願望が同時に存在するのが、恋愛という感情ではないでしょうか。

「ポーカーフェイス」という言葉が、このアンビバレントな主人公の気持ちを端的に表現しています。

そして、主人公の片思いは加速していきます。

歌詞ではまだ穏やかな表現ですが、頭の中では妄想が爆発しているのではないでしょうか。

しかし、もしこの想いが伝わってしまったら。

彼女は警戒し、今のように普通に会話をすることはできない…かもしれない。

それを恐れる主人公は「ポーカーフェイス」を貫き通すのです。

ゆがんだ感覚

秦基博【Raspberry Lover】歌詞の意味を解説!夢中な彼女はどんな人?甘い実が示すものとはの画像

そう 彼の前では怒ったりもするんだね
なんで ガラスの靴を拾うのは 僕じゃなかったんだ

出典: Raspberry Lover/作詞:秦基博 作曲:秦基博

そして、彼女とのたわいのない会話の思い出に浸る主人公がふと視線を向けると、怒った彼女の顔。

ここで「よし、喧嘩別れしろ!」と思わないのが主人公の性格です。

彼女と彼の痴話喧嘩すらも嫉妬の目で見てしまい、その自分自身に失望する主人公。

もし、いま彼女に付き合っている人がいなかったとしても、この主人公とは結ばれない気がします。

そんなに自分を卑下し、ひがまなくても良いと思うのですが、これも本人には見えていないのでしょう。

ダメと言われても…