キミに会いたくて でも会えなくて
走り出す 黄昏 桜舞う
どんなにキミを追いかけても
どこまでも遠ざかる影
出典: キミの詩/作詞:MARKIE(Wee's Inc.)・茅野イサム 作曲:MARKIE(Wee's Inc.)
この曲において、"キミ"が誰を指すのかというのははっきりしていません。
筆者は、6振が思い思いに自分にとっての"キミ"を思い描いているのだろうと解釈しています。
このサビの部分では、Aメロを歌った3振がサビを歌っています。
今剣・岩融・加州清光にとって、会いたくても会えない存在というのは、やはりかつての主でしょう。
刀剣男士となった彼らは、たとえかつての主に出会うことが出来たとしても元の"刀の姿"で会うことは叶いません。
今剣が源義経に対してそうしたように、自分の正体を隠して関わるしかないのです。
人の姿を手に入れ言葉を交わすことが出来る存在になったのに、かつての主に名乗ることすら許されない。
達観した3振が歌うBメロ&サビ
自分の感情を知った先にあるもの
教えて欲しい
キミの瞳の奥が 潤んだ理由(わけ)を
出典: キミの詩/作詞:MARKIE(Wee's Inc.)・茅野イサム 作曲:MARKIE(Wee's Inc.)
石切丸(崎山つばさ)が歌うパートです。
Aメロを歌った3振は、感情に正面からぶつかっていっています。
一方、Bメロでソロを歌う3振はどちらかというと達観している雰囲気があります。
Aメロ冒頭で今剣は自分のなかにある感情に戸惑いを抱いています。
Bメロ冒頭では石切丸が自分ではなく"キミ"の感情を知ろうとしている対比が印象的です。
石切丸は自分のなかにある感情に対してある程度折り合いがつけられているように感じます。
もしくは、石切丸が神社に祀られ長い間多くの人たちの願いを聞いてきた影響かもしれません。
"感情"自体に戸惑うというよりも、もう一歩踏み込んだ部分を見つめているように感じます。
仲間から感じる痛み
出会わなければ
こんな痛み 分からなかったのに
出典: キミの詩/作詞:MARKIE(Wee's Inc.)・茅野イサム 作曲:MARKIE(Wee's Inc.)
石切丸に続き、小狐丸(北園涼)が歌います。
小狐丸は稲荷明神の狐が人に化け三条宗近と共に打ったとされる刀です。
実在した証拠がなく伝説上の刀とされています。
そのせいか劇中でもどこか浮世離れした雰囲気が漂う小狐丸が、顔を歪め"痛み"について歌うのはとても印象的です。
もしかしたらこの痛みは彼自身が傷ついて感じたものではないかもしれません。
しかし同じ刀剣男士の仲間である今剣と岩融が、かつての主の死を見届ける姿を側で見守っていたのは事実。
小狐丸も、その痛みに共感して痛みを感じていたのかもしれません。
三日月宗近にとっての永久
キミの横顔 夕陽が染める
その輝きに 永久(とわ)の意味知る
出典: キミの詩/作詞:MARKIE(Wee's Inc.)・茅野イサム 作曲:MARKIE(Wee's Inc.)
最後のソロパートは三日月宗近(黒羽麻璃央)が歌います。
三日月宗近は平安時代に打たれた、天下五剣のなかでも一番美しいといわれる国宝です。
あらゆる事象に達観しているように感じられるキャラクターでもあります。
とても長い時間、刀としてこの世に存在し続けた三日月宗近が口にする"永久"のひと言。
筆者には、とても重い言葉に感じられます。
刀の頃に知っていた"永久"とはまた違った意味を、"キミ"との関わりの中で見つけたのではないでしょうか。
ここで彼が歌う"キミ"は、ともに戦った刀剣男士の仲間であり、刀剣男士という姿を与えてくれたいまの主なのかもしれません。
3振が歌うサビ
キミに会いたくて でも会えなくて
叫んでも届かぬこの思い
どんなにキミを追いかけても
どこまでも遠ざかる影
出典: キミの詩/作詞:MARKIE(Wee's Inc.)・茅野イサム 作曲:MARKIE(Wee's Inc.)
Bメロを歌った石切丸・小狐丸・三日月宗近がサビを歌います。
1度目のサビとは2行目の歌詞が異なっています。
この3振にとっての"キミ"の解釈は、ひとつの意味に絞るのは難しいかもしれません。
前半の3振のように、特定の人物に対して強い思い入れがある刀剣男士たちではないからです。
3振は特別な刀として祀られたり、もしくは伝説の刀として語り継がれたりしてきました。
この歌詞は、そうやって現代までその存在を繋いでくれた人や環境に対してのメッセージのようにも受け取れます。
その名をこの時代に残してくれた数えきれない人たちへの思いのようなものを、筆者はこのサビから感じました。
数百年に渡り受け継がれてきた刀たち。
時代の流れのなかできっとたくさんの人の思いに触れてきたはずです。
もう会うことは叶わない、これまで出会った人たちへの行き場のない心の声のように聞こえてくるサビではないでしょうか。