マドンナのステップアップ途上

マドンナ【クレイジー・フォー・ユー】歌詞和訳&解説!主人公はどれだけ相手に夢中?ロマンチックな名曲の画像

Trying hard to control my heart
I walk over to where you are
Eye to eye we need no word at all

出典: クレイジー・フォー・ユー/作詞: John Bettis, Jon Lind 作曲: John Bettis, Jon Lind

ふたりの距離がいよいよ近付きます。

「自分の心をコントロールするのも大変なの

あなたがいるところまで私は歩いてゆく

眼と眼を交わせば ふたりに言葉などまったく無用」

ドキドキした心を抱えて私はあなたの元へと歩いてゆきます。

煙った部屋の中をおずおずと歩いてゆく姿を思い浮かべてください。

視線を交わすことで会話が不要になるとも歌います。

運命的な恋というものはこうしたものなのでしょう。

こうした表現は愛の歌の中ではすでに陳腐になってきた頃でもあります。

「クレイジー・フォー・ユー」の新しさは総体として赤裸々に愛を告白するマドンナそのものの姿に依存します。

マドンナがシングルとしてラブバラードを選択したこと自体がセンセーショナルだったのです。

マドンナ自身がこの後に自身で歌詞を書き始めます。

彼女自身の言葉の方がより新鮮味のある作品を生み出しました。

スペイン語をあしらった「ラ・イスラ・ボニータ」など新鮮な傑作シングルを輩出します。

「クレイジー・フォー・ユー」はマドンナがさらにステップアップしてゆく過程の曲といえましょう。

距離が縮まる

高鳴る気持ちを抑えられない

マドンナ【クレイジー・フォー・ユー】歌詞和訳&解説!主人公はどれだけ相手に夢中?ロマンチックな名曲の画像

Slowly now we begin to move
Every breath I'm deeper into you
Soon we two are standing still in time
If you read my mind
You'll see

出典: クレイジー・フォー・ユー/作詞: John Bettis, Jon Lind 作曲: John Bettis, Jon Lind

いよいよふたりの距離が近付きます。

「ふたりはゆっくりと動き始める

息をするごとに私はあなたに深くハマってゆくの

すぐにふたりはまた立ち止まるわ

あなたが私の心を読めるのならば

あなたでも分かるわよね」

息するごとにあなたの中に深くのめり込んでいく。

出会ったばかりですから距離を詰めるとなおさらに鼓動が高まるのでしょう。

大人の愛を知らない若いリスナーにとってもこうした表現は身近に感じられるものでしょう。

淡い恋であっても相手との距離が近付くとドキドキするものです。

ときどき歩を休めてお互いの気持ちを探り合う瞬間。

どうしても手に入れたいあなたは直ぐ側にいるのにまだ触れることはできていません。

マドンナの時代

伝統的なラブソングであっても

マドンナ【クレイジー・フォー・ユー】歌詞和訳&解説!主人公はどれだけ相手に夢中?ロマンチックな名曲の画像

愛の欲望というものは人を一番狂わせるものであるでしょう。

マドンナは思春期から大人の階段を登ってゆくふたりの男女の愛の風景を歌います。

この愛の裏には両者の駆け引きが潜んでいるのです。

積極的な女性と相手をうかがう男性の恋の駆け引き。

ふたりの間柄はまだまだ成熟しきってはいません

それでも同じ愛の行為を目指していることが示唆されています。

このあけすけな点はマドンナが望んで歌詞に反映されたといわれているのです。

マドンナは時代のポップ・アイコンでありながら、新しい妖艶な色気を感じさせるシンガーでした。

新時代のマリリン・モンローともいわれています。

愛に対して包み隠さない表現を望む新しい時代のヒロインです。

「クレイジー・フォー・ユー」はどこか伝統的なラブソングの雰囲気ではあります。

それでも恋の悦びを素直に表現したいというマドンナの想いが反映されているのです。

「クレイジー・フォー・ユー」に新しさを求めるならば新世代のヒロイン・マドンナ自身の魅力を見ましょう。

あなたはどう反応する

恋心に憑依するマドンナ

マドンナ【クレイジー・フォー・ユー】歌詞和訳&解説!主人公はどれだけ相手に夢中?ロマンチックな名曲の画像

You'll feel it in my kiss because
I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new
You'll feel it in my kiss
I'm crazy for you
Crazy for you
Crazy for you
(Crazy for you)

出典: クレイジー・フォー・ユー/作詞: John Bettis, Jon Lind 作曲: John Bettis, Jon Lind

この間に完全なリフレインを含みます。

繰り返しになりますので訳出は割愛いたしました。

この箇所も繰り返された表現が見受けられます。

「あなたは私のキスでそのことを感じるの、なぜって

私はあなたに夢中なのよ

一度でも私に触れてみれば、それが本当だってあなたにも分かるはず

私はこんなにも誰かを欲したことなど一度もなかった

すべてが新鮮だわ、あなたは私のキスでそのことを感じるの

私はあなたに夢中になっているわ

あなたの虜なの

あなたの虜よ

(あなたに夢中)」

相変わらず私はあなたに夢中ですが、あなたの反応は描かれません

この調子でクライマックスを迎えるのでしょうか。

こうして男性の反応を隠したのは、とにかく私の恋心を鮮明にさせるためです。

これほどに愛されているのですから振り向かない男性はいないはず。

男性がなびく姿を書いてしまうと焦点がボケてしまうのでしょう。

どうしても描きたかったのは私の心のうち

この狂わんばかりの恋心に憑依するようなマドンナの歌唱を際立たせることに成功しています。

若いうちの恋愛は視線が交わっただけで両想いになったりするほどに情熱的なものです。

この燃える心を身体ごと奪ってほしいと願うのですから熱情というものは過激。

それでも若いリスナーにはぜひこれほどに身も心も捧げられる愛を知って欲しいと願います。

余計な分別がつくとこうした恋はできなくなるかもしれません。

情熱的な愛の交歓は若いふたりの特権です。

まだまだ若かった頃のマドンナの情熱的な歌唱。

それもまた若さの特権であったのかもしれません。

「クレイジー・フォー・ユー」と未来

ニュースターからトップスターへ