当たり前のようにできたことが
自信がなくなって部屋を出たくない
情けない自分が腹立たしく思えて
命の無駄遣い 誰に謝るか
出典: 夜明けまで強がらなくてもいい/作詞:秋元康 作曲:山田裕介
1行目の歌詞から、以前の主人公は現在よりももっと自分の思いのままに動けていたことが読み取れます。
しかし、2行目。
自室に引きこもるほど思いつめるということは、何らかのミスでイップスになってしまったのではないでしょうか。
やり場のない自己嫌悪が脳内を支配し、怒りを感じてさえいるのです。
1番で表現されていた自責の念は、イップスによって思うように行動できないことが原因なのかもしれません。
「無駄遣い」という言葉を呟く主人公には、自己嫌悪がぐるぐると回っているのでしょう。
そして、謝罪に触れている言葉からは「誰かに迷惑をかけているのでは」という不安も垣間見えます。
自分自身を見つめているようで、自分自身を客観視できていない。
「自分は他人からどう見られているだろうか」ということをとても気にしているがゆえに、外に出たがらないのです。
自分を責めることで、ある意味自分を守っている。
「そんなことないよ」という誰かからの慰めの言葉を待っているようにも感じます。
もしかしたら、このように思いつめた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2サビ:前を向く
光はどこにある? 僕を導いてくれ
太陽は 太陽は 夢の背中を押す
明日はどこにある? ヨロヨロと立ち上がれ
夜明けまでは さあ かっこ悪くていい
出典: 夜明けまで強がらなくてもいい/作詞:秋元康 作曲:山田裕介
1サビとほぼ同じ内容に見えますが、少し前向き、あるいは素直な表現が見えてきます。
例えば「導く」という言葉。
主人公は自分の意志で立ち上がろうととしているのですが、どこに進んで良いかがわからない。
その現状を素直に認め、行くべき方向を示してくれる存在を求めているのです。
1サビでは、暗闇を照らす存在、主人公の周りを明るくするためにあった「光」。
その光がどこから照らされているかまで意識がなかったのです。
2サビでは、「太陽」という具体的な光源が示されています。
古より、太陽がどこにあるかで人類は時刻を確認したり、あるいは東西南北を把握していました。
つまり、この歌詞での「太陽」は単なる明かりだけではなく、方向を明確に示す存在として象徴されているのです。
3行目でまだ力強さは不十分ながら、立ち上がろうとする主人公の姿が描かれました。
4行目は「他人の目など気にするな」、「自分の無様を認めるのは恥ずかしいことではない」というエールになっています。
コーダの歌詞を考察
Cメロ:決意の朝へ遂に立ち上がる
朝日が見えて来た 弱音はもう吐かない
今日こそは 今日こそは 自分らしく生きる
出典: 夜明けまで強がらなくてもいい/作詞:秋元康 作曲:山田裕介
ここで主人公の心境が大きく変化します。
2番サビで前を向くことを決意し、そして朝日が昇り始めました。
まさしく「夜明け」です。
朝日は、新しい1日が始まることを意味すると同時に、主人公の新しい人生が始まることを意味します。
暗闇のなかで自己嫌悪と自責に潰されそうだった主人公。
そこから立ち上がろうとする主人公ですが、きっと何度も挫折を繰り返してきたのでしょう。
「今日こそは」という言葉に、心の奥底にある不安が感じられます。
ここに、この主人公の「人間らしさ」が現れているのです。
人はそんな簡単に、闇から光へ変れるものではありません。
もしそう見えたとしたら、それはどこかしら無理をしているはずです。
それでもなお立ち上がろうとする姿は、大きな共感を得られるのではないでしょうか。
ラスサビ:迷いが消え、前に進む
光はどこにある? 僕を照らしてくれよ
不安とは 不安とは 期待の裏返しか
希望はどこにある? 生まれ変わる瞬間
太陽よ 太陽よ 連れ出してくれるのか?
すぐに夜明けが来る
出典: 夜明けまで強がらなくてもいい/作詞:秋元康 作曲:山田裕介
この部分からは暗闇で泣いている主人公の姿は見えません。
弱々しかった主人公を慰める言葉も無くなりました。
2行目の歌詞からわかるように、主人公は不安や後悔が起きる理由を納得することができました。
自責の夜があったのは、まだ自分を諦めていなかったから。
不安に押しつぶされた夜は、それだけ未来に期待していたからだったのです。
太陽に導かれ前を進むことを決意した主人公。
今度こそ、陽の光の中力強く歩んでいって欲しいと、主人公を心から応援したくなるような歌詞でした。
まとめ
さて、歌詞に描かれている主人公とは誰のことでしょうか。
それは「乃木坂46」であり、さらには初選抜ながらフロントに立つことになった4期生でもあります。
そして、この曲を聴くリスナーも、主人公になり得る存在です。
- 何か大きな失敗をしてしまった
- 挫折を味わって思うように行動できなくなった
- 眠れなくなるほどの不安を抱えている
「夜明けまで強がらなくてもいい」はそんな人たちにむけた優しい応援ソングです。
ただ背中を押すのではなく、優しく寄り添って、ゆっくり立ち上がっていこうと付き合ってくれる曲です。
そして1つ区切りをつけて、前を向いて、明日に向けて歩いて行こうと語りかけてくれます。
辛い時、どうしようもなく不安な時、無理をして前に進もうとするだけが正解とは限りません。
「一旦弱音を吐いてから、前向きに切り替えていくことも重要」そんなことをこの歌詞は伝えてくれます。
優しく、それでいて力強く教えてくれる歌詞に、勇気づけられる方もきっといらっしゃることでしょう。
以上で歌詞の解釈を終わります。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。