井上陽水という人は文学的素養をどのようにして磨いたのでしょうか?
詩的なセンス、イメージが容易に浮かぶような歌詞はこの人の真骨頂でしょう。
自分の青春時代を懐かしく想い出してカラオケなどで愛唱する人がいるのもよく分かります。
シングルB面曲の「帰れない二人」は忌野清志郎との共作でこちらも代表曲になっています。
8位は頑張る日本人を陽水流に描いた曲
様々な人によってカヴァーされる
第8位 「東へ西へ」 1972年12月10日 アルバム「断絶Ⅱ センチメンタル」収録
本木雅弘、布袋寅泰、中村あゆみなど錚々たる面々にカヴァーされた名曲です。
井上陽水の初期の代表曲(他にもいっぱいありすぎます)。
歌詞がいいですので紐解きましょう。
昼寝をすれば夜中に眠れないのはどういう訳だ
満月空に満月明日はいとしいあの娘に逢える
目覚し時計は母親みたいで心がかよわず
たよりの自分は睡眠不足でだから
ガンバレみんなガンバレ月は流れて東へ西へ
出典: 東へ西へ/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
当たり前のことをあえて歌詞にするとユーモアが滲んできます。
日常というのは実際にどこか可笑しく愉快なものなのでしょう。
嫌でも頑張ってしまう日本人を応援しているわけではなく、むしろ皮肉っているようです。
働きすぎ、頑張り過ぎには気をつけましょう。
7位は再デビュー・シングル曲
アーティストの本質はデビュー作にある
第7位 「人生が二度あれば」 1972年3月1日シングル発売 アルバム「断絶」収録
井上陽水名義での再デビュー曲。
「アーティストの本質はデビュー作に全部詰まっている」という格言にぴったりの内容です。
井上陽水を語る上では避けて通れない曲です。
父は今年二月で 六十五
顔のシワはふえて ゆくばかり
仕事に追われ
このごろやっと ゆとりが出来た
父の湯飲み茶碗は 欠けている
それにお茶を入れて 飲んでいる
湯飲みに写る
自分の顔を じっと見ている
人生が二度あれば
この人生が二度あれば
出典: 人生が二度あれば/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
地味な印象はありますが素晴らしい歌詞です。
この後、歌は母についても歌います。
すべての歌詞を読んでいただきたいのですが、スペースの関係で叶いません。
ぜひ検索して全文を読んでみてください。
若い井上陽水がこれほどまでに人間とその人生に肉薄しているのが恐ろしいです。
フォーク・ソングの王道
音楽的には当時の日本のフォークの王道のようにも聴こえます。
まだまだ若い才能でした。
そのためにどのシングルを発売するかなどの決定権がご本人にはなかったのかもしれません。
それでも人生をシリアスに切り刻む眼差しはすでにこの頃から完成していたように想えます。
6位はあの歌姫への提供曲
セルフ・カヴァーも2種類
第6位 「飾りじゃないのよ涙は」 2002年10月23日シングル発売
セルフ・カヴァー・アルバム「9.5カラット」「Blue Selection」収録
中森明菜がアイドルから一流の女性シンガーへとステップを駆け上がったのはこの曲のおかげでしょう。
井上陽水による中森明菜の切り取り方が彼女のパブリック・イメージとぴったりで大ヒットになります。
井上陽水本人によるセルフ・カヴァーも1984年と2002年の2ヴァージョン。
中森明菜による歌唱も素晴らしいですが、井上陽水本人によるものも固有の魅力があります。
女心を歌わせてみても井上陽水は一級品です。
誰もが知っている歌い出しを見てみましょう。
私は泣いたことがない
灯の消えた街角で
速い車にのっけられても
急にスピンかけられても恐くなかった
赤いスカーフがゆれるのを
不思議な気持ちで見てたけど
私泣いたりするのは違うと感じてた
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水