本当は感激や喜び悲しみを素直に表情に出すタイプの中森明菜。
それでもパブリック・イメージは不良少女のイメージで売り出したアイドルです。
クールな女性のイメージを井上陽水はうまく中森明菜に託しました。
この歌い出しはリスナーの心を見事に掴みます。
クールでも恋に生きる女性
飾りじゃないのよ涙は HA HAN
好きだと言ってるじゃないの HO HO
真珠じゃないのよ涙は HA HAN
きれいなだけならいいけど
ちょっと悲しすぎるのよ涙は HO HO HO……
出典: 飾りじゃないのよ涙は/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
クールな女性とはいえ彼女も恋に生きています。
涙を武器にしたり、その悲しみに自ら埋没してしまうのが嫌なだけなのでしょう。
女性心理を見事に描いています。
時代はバブル経済期ですから女性の社会進出が以前の時代よりも進みました。
そうした時代背景も強い女性、強がる女性の情感を歌うには適していたはずです。
いずれにせよ日本の歌謡史に残る名曲に違いありません。
5位はとても重い作品
ニュース番組のエンディング・テーマ曲
第5位 「最後のニュース」 1989年12月21日シングル発売 アルバム「ハンサムボーイ」収録
井上陽水と親しい間柄であった筑紫哲也が自らのニュース番組を開始するにあたって依頼した楽曲。
「筑紫哲也のNEWS23」のエンディング・テーマとして使用されます。
チャート・アクションは派手ではないです(オリコンチャート最高57位)。
それでも人類にとって切実なテーマを歌うこの曲に思い入れのある方は多いはず。
簡単に社会派で括られる歌ではないです。
一個人として生活を組織するときにどうふるまえばいいのか悩む等身大の私たちを切り抜いています。
闇に沈む月の裏の顔をあばき
青い砂や石をどこへ運び去ったの
忘れられぬ人が銃で撃たれ倒れ
みんな泣いたあとで誰を忘れ去ったの
出典: 最後のニュース/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
人類の月着陸の話題から一転して戦禍をこうむる世界の一場面を提示。
流れるように言葉を繰り出す歌い方で次々に悲劇を報じます。
葬った後に忘れ去ってしまう愚かさ、恐ろしさ。
しかしそれが人間の業なのだとどこか諦念のようなものを噛み締めるのです。
「過酷な現実」ばかりに耳が傾きます。
「現実は過酷」である限り、「過酷な現実」という言葉は同義反復なのでしょう。
絶望よりも辛辣な希望の響き
親の愛を知らぬ子供達の歌を
声のしない歌を誰が聞いてくれるの
世界中の国の人と愛と金が
入り乱れていつか混ざりあえるの
今 あなたにGood-Night
ただ あなたにGood-Bye
出典: 最後のニュース/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
この曲のラストのラインです。
深夜帯のニュース番組。
このエンディング・テーマを聴いて眠りにつく人々へ直接届くように歌います。
世界中の国の人と愛と金が
入り乱れていつか混ざりあえるの
出典: 最後のニュース/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
悲惨な現実も歌われますが最後に希望もまた歌われるのです。
しかしその希望がいつ叶うか分からない私たち人類の現状。
ときに絶望よりも希望の方が辛辣に響きます。
4位は井上陽水の代表曲の筆頭
大ヒットアルバムの表題曲
窓の外ではリンゴ売り
声をからしてリンゴ売り
きっと誰かがふざけて
リンゴ売りのまねをしているだけ
なんだろ
僕のTVは寒さで画期的な色になり
とても醜いあの娘を
グッと魅力的な娘にしてすぐ消えた
今年の寒さは記録的なもの
こごえてしまうよ
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
出典: 氷の世界/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水