ポップ・ソングにできること
休む事も許されず
笑う事は止められて
はいつくばってはいつくばって
いったい何を探しているのか
探すのをやめた時
見つかる事もよくある話で
踊りましょう 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
出典: 夢の中へ/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水
東西冷戦が終わってもこの歌は不滅の生命力を持っています。
自由を享受するのが中々難しい時代には、この曲は福音のように響きます。
とはいえ、駆け込む先が「夢」である限り、自由を求める具体的な手立てにはなりえないでしょう。
そこがポップ・ソングの限界かもしれません。
それでも「夢」だけが夜毎、私たちを現実の軛(くびき)から解き放ってくれます。
この曲を聴くと単純に気分がいいのです。
それこそポップ・ソングの真髄でしょう。
1位はミリオン・セラーを記録したシングル曲
巨匠たちの想いがいっぱいつまった名曲
第1位 「少年時代」 1990年9月21日 シングル発売 アルバム「ハンサムボーイ」収録
井上陽水にとって一番のセールスを叩き出し、ロング・ヒットを続けてミリオン・セラーになったシングル曲。
藤子不二雄Ⓐ先生が直談判して井上陽水に依頼した歌です。
両巨匠の想いがたくさんつまった名曲になりました。
井上陽水が新しい日本語を創る
夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された 私の心は夏模様
出典: 少年時代/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 平井夏美
夏まつり 宵かがり
胸のたかなりにあわせて
八月は夢花火 私の心は夏模様
出典: 少年時代/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 平井夏美
「風あざみ」同様「宵かがり」という言葉も造語です。
造語とはいえ見事に夏の夜の心沸く雰囲気を伝えています。
井上陽水は新しい日本語を創ってしまう数少ないアーティストといえるでしょう。
あの夏の日へのノスタルジー
目が覚めて 夢のあと
長い影が夜にのびて
星屑の空へ
夢はつまり 想い出のあとさき
夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
八月は夢花火 私の心は夏模様
出典: 少年時代/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水 平井夏美
追憶の少年時代の夏。
裸足同然のボロ靴で青空の下を走り回った想い出。
どれもいまは懐かしく美しい時代の記憶。
この曲がリスナーに郷愁を掻き立てる秘密は美しい日本語です。
正しい日本語ではなく、美しい日本語。
間違っていても、意味不明でも、造語でも、丹念に紡いだ詩は美しい。
井上陽水が歌う日本語の精髄をこの曲から感じます。
後世に残していきたい言葉と歌です。
まとめ:井上陽水の足跡を振り返って
メロディも歌詞も一級品
井上陽水という人は先述したとおり、The Beatlesに熱狂した青春時代を過ごしました。
そのおかげで一流のメロディ・メーカーになります。
しかし井上陽水の魅力は曲・メロディの良さにとどまりません。
歌詞に関しても唯一無二のセンスの持ち主です。
ときにユーモラスでナンセンス、ときにシビアでシリアスな眼差し。
歌詞の変遷を時代ごとに追うのも楽しいでしょう。