楽曲について

ミテイノハナシの楽曲『忘れじの映画』。

ノスタルジックな歌詞とどこか耳に聴きなじむ優しいメロディーが魅力的です。

コンポーザーであり、自身で歌唱から映像制作まで務めるAruさん。

そんな彼のミテイノハナシとして織り成す世界観は、まるで1つの映画を見ているようです。

2020年6月17日にYouTubeにて公開された当楽曲は、公開3週間で20万回再生を突破。

まだ18歳という異例の若さから放たれるリリック楽曲の雰囲気をご堪能下さい。

早速、歌詞に込められた想いを1つ1つ解釈していきたいと思います!

心に残る憂いは君への想い

忘れられない思い出

古臭いままの映画館で 君と見た景色が
忘れられないのさ
言の葉を乗せた想いさえも ひらり舞うように
また同じようにと

出典: 忘れじの映画/作詞:Aru 作曲:Aru

この楽曲のテーマとなっているのは、懐かしい思い出と君といったところでしょうか。

2人で一緒に見た1つの映画が未だに忘れられないのだといっています。

ここから予測できることは、安直ですが、もうすでに君は隣にはいないということ。

歌詞の後半で述べられていることも、どこか哀愁を感じずにはいられません。

君を想った言葉は、空に消えてしまうだといっているのです。

そして歌詞4行目に登場する「また」というフレーズ。

これが表していることとは、まさに主人公が何度も君のことを想い返していることの表れだと解釈します。

タイトルにも使用されている『忘れじの映画』の輪郭が徐々に掴めてきました。

春の訪れ

薄暗いままの一人の部屋 ただ窓を見ていた
小春日の頃に
街行く人 流れる景色は
春を描いていく 失くさないように

出典: 忘れじの映画/作詞:Aru 作曲:Aru

景色の移り変わりとともに、時の変遷を切なく描き出している歌詞。

自分以外は、来たる春の風に乗っていく中、そうすることが出来ずにいるのです。

ここから読み取れることは、君との思い出は秋終わり~冬の間の出来事だったのだと解釈出来ます。

だからこそ、いつまでたってもそこから抜け出せずに、春が来るのを拒み続けている。

歌詞1行目に述べられているフレーズは、どこかぼんやりとしている主人公の心情が投影されています。

自分が好きでたまらなかった君との別れ。

いつまでも忘れたくないという想いと、心に漂い続ける憂いに嫌悪感を持つアンビバレントな感情です。

奥ゆかしい対比

とまらない風が 吹いていく
麗らかな空に 手を伸ばす
夕の中 曇る思い出が
雲一つもない 空に消えていく

出典: 忘れじの映画/作詞:Aru 作曲:Aru

ここで注目すべきは1行目の歌詞にある「とまらない」というフレーズです。

自分では不可抗力であり、どうしようも出来ない時の流れの無常さを表出しています。

歳月が経つにつれて、君との距離は遠ざかっていくばかり。

そして、歌詞の3行目と4行目には巧みで奥ゆかしい対比表現がなされています。

  • いつまでたっても曇り空が晴れない自分の心。
  • それとは真逆に、晴れ渡った春先の青空が広がる現実世界。

ずっと君に縛られ続けているのは自分だけなのだという虚無感が感じられるリリックです。

ただすぐに気持ちが変化するわけでもなく、ずっと曇り空は晴れることはありません。

いつまでも想い返す

また登る坂道を 描く思い出を
なぞる先に見えた 懐かしい君の顔を
日の沈む頃待ち合わせた この場所は
一人でも暖かいまま 今でも思い出すエンドロールを

出典: 忘れじの映画/作詞:Aru 作曲:Aru

ここのサビの歌詞でキーワードになっているのは「この場所」です。

深読みをすることもなく、単純に君と過ごした思い出の場所を指しているのだと解釈出来ます。

歌詞全体を読み取ることで、坂道を登った先にある眺めの良い風景が浮かび上がってきます。

1つ1つの言葉から具体的な情景が把握できる点がノスタルジックを演出。

久々にその場所に立ち返ってみると、フラッシュバックのように君との記憶が蘇る。

歌詞の最後にある「エンドロール」とはまさに君との別れを意味しているのではないでしょうか。

ここでもう1度タイトルを振り返ってみると、2通りの解釈をすることが出来ます。

  • 実際に2人で見た記憶に残り続けている映画のこと
  • 2人で過ごした時間こそが主人公にとって「映画」だったこと

どちらにせよ、それを忘れることは出来ないのです。