「雨とペトラ」とは
雨の日に聞きたいボカロ曲
ボカロP・パルーンの28作目として2017年3月9日に「雨とペトラ」は投稿されました。
映像はバルーンとのタッグで人気のアボカド6が手がけています。
「雨の日に人を待っているときに聴くといい感じになる」とバルーン本人がTwitterで語っており、ニコニコ動画のコメントには「雨が降ったので」というコメントが多く見られます。
投稿からおよそ4ヶ月が過ぎた2017年7月20日にバルーンにとっては当時2曲目となるミリオン達成を果たしています。
MVをチェック

雨とペトラのMVでは色褪せた人の存在を感じない街にいる一人の少女と黒猫が描かれています。
溜まった水たまりも降る雨も黒やセピア色で暗さが感じられますし、少女が立っている場所は路地裏や高架下などの人の気配のない場所ですね。
少女や街の風景は何を示しているのか…謎は深まるばかりです。
歌詞を深掘り!
タイトルやMVから見えることは?
色あせた街並みからタイトルに使われている「ペトラ」とはユネスコ世界遺産に登録されている「ペトラ遺跡」と関係しているのではないでしょうか。
ペトラはギリシャ語で「崖」という意味もあり、人の物が行き交う有力都市として栄えたペトラ遺跡は赤い岩石の切り立った崖の中にあります。
栄えた都市であったペトラ遺跡も今では色あせた遺物であり、現在もまだ80%以上が未発掘とのままの日の目を浴びていない部分が残っているのです。
こうした今では人の目ほどんど触れていない過去に栄えた場所であるペトラ遺跡とMVに登場する街がリンクさせてあるのではないでしょうか。
歌詞を深掘り
誰かが言った いつか空は灰になって落ちるって
妄想の世の中で 日々を喰らっている
出典: 雨とペトラ/作詞:バルーン 作曲:バルーン
「空が灰になって落ちる」とは物が燃え尽きて色を失った灰になってその形を失っていくように、今の良い世界が終わっていくことを表しているのでしょう。
でも毎日繰り返される良い日々を生きる人は衰退することなど考えないものです。
終わりを妄想して過ごす人はその妄想に囚われながら、やり場のない気持ちを抱えて日々をただ過ごしていくのでしょう。
境界線を引いてしまうのも 共感覚のせいにして
街の灯の海で 居場所を探している
出典: 雨とペトラ/作詞:バルーン 作曲:バルーン
共感覚とは文字や音に色を感じたり、形に味を感じたりと見えるものの価値や感じ方に多くの種類があるような状態です。
自分と違う感じ方をする他の人との間に境界線を引いてしまうのを、同じものを見ても違うものを感じてしまう感覚のせいにしてしまおうとしています。 1日が終わる夜に近づくと家々には電気が灯ります。
そんな街の明かりの海の中に、終わりを感じてしまう一人っきりの自分の居場所を探してしまうのです。
何処へ行くにも この足は退屈に染まって動かない
少しだけ先の景色が見たいだけなのにな
出典: 雨とペトラ/作詞:バルーン 作曲:バルーン
どの場所も今より少しだけ先に訪れる未来を見ようとする人はいない街。
そんな思考の刺激のない街はひどく退屈に感じるのでした。
ただこの街の少し先の未来を見据えて話せるそんな人と出会いたかっただけだったのです。
雨が降ったら きっと 頬を濡らしてしまう
枯れてしまった 色ですら 愛しくなるのに
目を瞑ったら もっと 遠く霞んでしまう
煩くなった雨の音 笑い飛ばしてくれ!
出典: 雨とペトラ/作詞:バルーン 作曲:バルーン
栄えていた時代も終わって今はもう衰退した街に一人足を踏み入れる少女。
雨が降ったらその雨と自分の目から流れる涙できっと頬が濡れてしまうのでしょう。
衰退した色や活気を失ってしまった街でさえ、過去の温かな思い出があって愛おしさが溢れてしまいます。
目を瞑って思い出に浸れば浸るほど、その過ぎ去った日々はどんどん遠へ霞んで消えていってしまうのです。
そんな感傷に浸っている存在の自分をひどく滑稽に思いながら、どんどんひどくなっていく雨に笑い飛ばしてほしいと感じているのでないでしょうか。