失恋ソングの王道的作品?
失恋ソングながら力強いサウンド!
「りばいばる」は中島みゆき得意の失恋ソングでありながら、じめじめしたイメージは一切描かれていません。
曲の冒頭から力強いメロディが響きます。スローバラードではないロックを思わせる力強さです。
中島みゆきといえば「暗い」というイメージがどうしてもつきまといますよね。
数々の彼女の代表曲を聴けば、そのイメージがついてくるのも無理はないかもしれないでしょう。
しかし、「りばいばる」からはそんな暗いイメージは微塵も感じられません。
むしろ失恋を踏み台にしてたくましくなっていく一人の女性を想像させます。
この曲を従来のイメージで聴いていたら、いい意味で裏切りにあった気分になるでしょう。
天才、中島みゆきの魅力はこの曲を境にして新たな境地を見つけたのかも分かりません。
80年代に向かってのメッセージ?
世の恋愛模様は時代の推移と共に変わってゆくものです。
この曲が発表されたのは1970年代も終わろうかという1979年の9月。
来るべき80年代の女性の恋愛に対する意識の変化を表していった1曲なのです。
曲の歌詞中には、失恋に対する悲しみや辛さといった表現は一切見当たりません。
どちらかといえば、終始カッコいい女性像をイメージさせるのです。
そう、間違いなく女性は強くなっていったのです。
失恋して、泣いて恨んで辛い思いをしていた過去の姿とは決別したのでした。
来る80年代に向かって、女性の愛を取り巻く姿は確実に変化していくようです。
では、早速1番の歌詞からみてまいりましょう。
リバイバルソング
ふっと耳に聞こえてきた…
忘れられない歌を突然聞く
誰も知る人のない遠い町の角で
出典: りばいばる/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
この曲の主人公は、自立して1人で暮らしている女性です。
恐らく仕事も恋も、バリバリ行えるレディーなのでしょう。
そんな主人公が、ふと耳に懐かしい曲を拾いました。
懐かしいその曲は、確かあの当時流行っていた曲。
それが今この時になってまた世に出ていたのです。
通常、リバイバルソングというものは2~3年程度の間隔では世に出ません。
最低でも10年は間を空けるでしょう。
つまり、今バリバリ働いている女性の失恋は10年以上前の出来事だということになるのです。
女性によぎる過去の思い出
10年ひと昔といいますが、10年という時間はそう簡単には過ぎ去りません。
つまりこの10年間、女性は失恋の痛手を引きずっていたのです。
別れてしまったあの日、今まで住んでいた町から移りました。
過去の思い出も、辛い現実も全て忘れ去るため、行ったことのない場所に移りました。
しかし、その当時の思い出をそう簡単に忘れられる人間はいません。
いくら無理をして忘れようとしても、歌というものは人の心の奥底に眠っています。
そして今まさに、過去の思い出を掘り起こすようにリバイバル・ソングが耳をよぎったのです。
リバイバル・ソングは女性に、あの頃を思い出させるのに格好のきっかけになります。
それほど、歌というものは人の心に刻み込まれるものなのです。
女性の愛は「大恋愛」
好き過ぎて自分を見失うほど
やっと恨みも嘘もうすれた頃
忘れられない歌がもういちどはやる
出典: りばいばる/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
しかしリバイバル・ソングには何の罪もありません。
それにしてもこんなに鮮明にあの頃の記憶を甦らせてしまうとは。
歌というものには本当に不思議な魔力が備わっているかのようです。
主人公の女性は、苦い過去を思い出してしまいました。
ようやくここ2~3年思い出すこともなかったあの頃を。
女性がこの記憶を忘れるために費やした年月は、10年近い時間が必要だったのです。
それだけの時間を要するほど、女性は別れた男性を愛していたのです。
仮に今が30歳だったとしたら、当時は20歳。
酸いも甘いも知っている今と違って、見るもの知るもの全てがバラ色だったはずです。
自分の存在を見失うくらい愛した男性に尽くしていたのです。