彼らが必死に答えを探している問いが、ここでより詳しく明かされています。
何よりもこの問いが難しいのは、環境やタイミングによって答えがいくつも出てくること。
いまこの時点での正解は、明日には不正解になっているかもしれない。
そして明日の正解はきっと、明後日の正解にはなり得ないのです。
まさに歌詞にある通り、未来はまったく見えません。
答えの導き方さえわからない、こんな難しい問いに日々挑み続けている彼ら。
授業で習う問いに飽き飽きし、反発したくなる気持ちもわかる気がしますね。
高校生たちが反抗する理由は、こんなところにあるのかもしれません。
知りたいことは何1つとして教えてもらえない。
わたしたちが本当に知りたいことはそんなことじゃないんだ。
4行目の「用はない」という強い口調から感じられるのは、若者たちの強い想いです。
答えのない問いを追い求める若者たちの心の叫びが、最後のフレーズに詰めこまれているのでしょう。
自分にとって君の存在は…
君のおかげで僕は
これまで出逢ったどんな友とも 違う君に見つけてもらった
自分をはじめて好きになれたの 分かるはずない
君に分かるはずもないでしょう
出典: 正解/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
さて、ここで主人公の友にスポットが当たります。
歌詞を見るだけで、主人公にとって友がとても大切な存在だったことがわかりますね。
もしかすると主人公にとっては、「友を見つける方法」も答えのない問いだったのかもしれません。
必死に答えを探す中、逆に彼から見つけてもらった主人公。
答えを見つけられず自己嫌悪に陥っていた主人公の存在を、あたたかく受け入れてくれました。
そのおかげで自分の存在意義を見いだせたことに、深い感謝の念を抱いています。
ただ仲の良い友同士というわけではない、深いところで結びつく2人の絆が表現されていますね。
若者世代の承認欲求
人は少なからず承認欲求というものを抱いています。
自分自身という存在を他人に認めてもらうことで、安心できることもあるでしょう。
18歳前後の若者は特に、承認に飢えています。
自分はいったい誰なのか。自分とはどのような存在なのか。
こんなことを考え思考の無限ループから抜け出せず、悶々とした日々を送ることも多いはずです。
そんなモヤモヤから救い出してくれるのが、他者からの承認ではないでしょうか。
何1つとして答えがわからない中で、ただ黙って肯定してくれること。
自分で自分のことが受け入れられなかったはずなのに、君が受け入れてくれたことの安心感。
その人の価値観を大きく変えてしまうほどに、この承認欲求は大切なものだといえそうです。
僕にとって君はこんな存在だった
並んで歩けど どこかで追い続けていた 君の背中
明日からは もうそこにはない
出典: 正解/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
主人公にとって特別な存在だった友。
先ほども書いた通り、主人公が見つけられていなかった答えを彼はすでに持っていました。
自分とは違う、そんな友に対して主人公は尊敬の念を抱いていたのでしょう。
友は肩を並べていると思っていてくれたかもしれない。
周りの人たちも、似たもの同士だと思っていたのかもしれない。
でも実際には彼が常に前を歩いていたことを、主人公自身が誰よりもハッキリと感じていました。
もちろん悔しさもあったでしょう。
しかしそれに勝る、憧れや敬意があったからこそ、主人公は友を追い続けることができました。
そんな特別な存在との時間も、永遠ではありません。
卒業。
当たり前のように訪れるイベントは、華やかなようで寂しさに満ちています。
これからは背中を追っていた友がいなくなる。
つまり主人公の指標がなくなるということです。これはとてつもなく大きな変化でしょう。
明確に示されてはいませんが、主人公の複雑な想いが感じ取れます。
不安、恐怖、寂しさ…ネガティブな感情を抱えているはずです。
しかしそれでも前に進むしかありません。
かつて友の背中を追って進み続けたように、これからも歩みを止めるわけにはいかない。
主人公はきっと、悲しみの中にきちんと光を見出しているのではないでしょうか。
僕等が探していることは…
誰にも頼れない問い
あぁ 答えがある問いばかりを 教わってきたよ そのせいだろうか
僕たちが知りたかったのは いつも正解など大人も知らない
出典: 正解/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
主人公を困らせるもう1つの要因。
それは、これまで全ての答えを教えてくれた大人たちでさえ正解を知らない、ということ。
聞けば教えてもらえた。
聞けばなんでも解決した。
そうやって頼ってきた大人たちでさえ、正解を持たない問いがあるのです。
こうなると彼は、誰にも頼れぬまま自力で答えを探し続けなければなりません。
八方塞がり。迷宮に迷い込んでしまった彼らの中で、様々な感情がうごめいています。