電気グルーヴの30年を振り返る
一刻も早い販売・配信解禁を祈って
この記事は2019年5月下旬に執筆しました。
配信サイトなどから電気グルーヴの作品が引き上げられているため人気曲の客観的指数が不明です。
そのためランキングはごく私的な記憶と印象を元にしています。
その分、大胆なランキングになりました。
選外に漏れた名曲は膨大にあります。
記事を読んでいただいて「私ならこういうランキングにする」と思っていただけたら嬉しいです。
一日も早く理不尽な配信・発売停止が解かれることを願いながらこの記事をお届けいたします。
作品には罪も毒もある
逮捕・監禁されないのが芸術
電気グルーヴの作品には罪も毒もたくさんあります。
徹底して享楽的であることが彼らの持ち味です。
この記事は作品無謬論には立ちません。
罪も毒もない作品に果たして芸術としての魅力などいったいどれほどあるでしょうか?
書店に行けば坂口安吾・太宰治・三島由紀夫、果ては妻を殺害してしまったルイ・アルチュセール。
彼らの作品が回収などされることなく背表紙を並べています。
議論は飽くまでも受け手の中で行われるもの。
作品を版元が自粛して作品を回収することは表現の死です。
電気グルーヴの作品を真っ向から語ることができますように。
所謂“芸能村”の縛りから自由な成熟した寛容な社会の到来を願ってランキングを大胆に発表します。
第10位 「電気ビリビリ」
1991年4月10日発表、電気グルーヴのメジャー通算1作目のアルバム「FLASH PAPA」収録曲。
初期の作品から1曲選びました。
石野卓球、ピエール瀧、CMJKの3人で電気グルーヴだった時代です。
マンチェスター・ムーブメントの余波の中、実際にマンチェスターでレコーディングを敢行。
本場のアグレッシブな音作りと電気グルーヴの諧謔的な歌詞が交錯しています。
電気グルーヴの作品をご紹介するのに歌詞を参照することは如何なものかなとも想います。
それでも石野卓球が紡いだ言葉も電気グルーヴの大いなる魅力であるため避けては通れません。
歌詞を見ていきましょう。
スラッシュビートに乗っかって
電気ビリビリデジタルDG スラッシュビートで突っ走れ Go! 踏み込めアクセル
エンジンふかせ 目的地まではノンストップ
邪魔な奴らはブッ飛ばせ特に砂かけババアは高得点 目指せデジタル・エルサレム
Ha サジタル・シティの秋葉原 Go!
デジタルスラッシュ
Ah D・I・G・A・T・A・L
出典: 電気ビリビリ/作詞:石野卓球 作曲:石野卓球
クライマックスから抜粋しました。
スラッシュビートに乗せて人間業とは思えないスピードでライムを繰り出す。
ライブなどでは圧巻のパフォーマンスを魅せつけてくれます。
石野卓球だけでなくピエール瀧も存分に仕事をしているのです。
マンチェスターでのレコーディングは打ち込みに関する概念を変えられたと語る電気グルーヴ。
日本国内でレコーディングしていたらスラッシュビートがここまで成功していたかどうか?
マンチェスター・ムーブメントは偉大です。
第9位 「電気グルーヴ30周年の唄」
2019年1月23日発表、電気グルーヴのメジャー通算14作目のアルバム「30」収録曲。
アルバム冒頭の「電気グルーヴ10周年の歌 2019」と同様に電気グルーヴ結成30周年を祝う曲です。
どちらの曲も捨てがたいのですがバックトラックのサンプリングの音の「怖さ」に惹かれてこちらを選択。
サンプリングの先駆者・This Heatのチャールズ・ヘイワ-ドが好みそうな硬質で金属質な触感の音。
めでたいはずの歌なのですがどこか不気味で不穏なアレンジに惹かれます。
歌詞を見ていきましょう。
「不穏な曲」として一級品
首から下はシータケよ
すべからく質がいいだけよ
XTC獲たけりゃ シータケを
これ電気グルーヴの30年
不思議な不思議なパラダイス
不思議な不思議なパラダイス
“パラダイス!”
出典: 電気グルーヴ30周年の唄/作詞:Takkyu Ishino 作曲:Takkyu Ishino
こちらもクライマックスからの抜粋です。
エクスタシーへの言及があります。
深読みしてもキリがないので深く考えすぎずにいたいもの。
30周年のお祝いの歌が不穏なアレンジであったことが後の災いを想起させもしますがそれも後付の解釈。
今はこの曲の「不穏な曲としての完成度の高さ」を愛でたいです。
電気グルーヴの一挙一動に注目が集まっているのですからある意味で過酷なパラダイス。
すべて結果オーライとなる未来を信じます。
「電気グルーヴ30周年の唄」がありのまま祝福されますように願うものです。