Perfumeのダークナンバー
ファンを困惑させた英語の歌詞
「edge」はシングル「love the world」のカップリング曲としてリリースされ、その後アルバム「⊿(トライアングル)」にミックス・バージンが収録されたナンバーです。
コーセーの化粧品ブランド「ファシオ」のCMに使われたので、リリース当時はよくテレビで流れていました。
曲名の「edge」は鋭利な刃物や縁を意味し、ビートを強調した曲調と相まってPerfumeの楽曲の中でもとりわけ攻撃的なナンバーといえます。
ライブでは凝ったライティングとダンスがカッコよく、海外のライブでも人気を呼んでいます。
プロデューサー中田ヤスタカが書く曲は英語を多用し、日本語のパートと絡み合った言葉遊びがちりばめられています。
「edge」はリリース当初からその解釈を巡ってファンを悩ませてきました。
そこで英語のパートを中心に読み解いてみたいと思います。
Aメロの日本語と英語の関係
本当に英文として読めるのか
だんだん 好きになる 気になる 好きになる
だんだん 好きになる 気になる 好きになる
だんだん 好きになる 気になる 好きになる
だんだん 好きになる 気になる 好きになる
出典: edge/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
Aメロの日本語パートをご覧ください。
よく見ると「だんだん」「好きになる」「気になる」「好きになる」の4フレーズに分けられます。
各フレーズは1行が単語または短いイディオム(慣用句)で構成され、それを4回繰り返しています。
この歌詞で最大の謎といえるのがAメロの日本語に続く英語のパートです。
ファンの皆さんも、その意味が一番気になるはずです。
結論から言うとこれは英文として意味を成していません。
このままでは日本語に訳せないのです。
じゃあどうすればいいか。発想の転換が必要になります。
言葉の並びにカギがある
Down Down a clip round you fall in drops set a trap
Down Down a clip round you fall in drops setting a trap
Down Down a clip round you fall in drops set a trap
Down Down a clip round you get the trick of it 1234
出典: edge/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
英語の歌詞も同じパターンと考えてみましょう。
1行目はこうなります。
「Down Down」「a clip round you」「fall in drops」「set a trap」
1行目から3行目は「fall in drops」までが同じで、2行目の4フレーズは「set」を現在分詞「setting」に変えています。
そして最後の4行目は3フレーズに前とは違うイディオム「get the trick of it」とカウント「1234」でAメロが終わります。
ざっくりまとめると、日本語の1行4フレーズに対応させて英語を並べる仕組みなんですね。
ただし、同じ4フレーズを4回繰り返す日本語パートに比べて英語パートは微妙に言葉を変えているので、ビートに乗せたボーカルの響きがゆらめくように聴こえます。
これが中田ヤスタカの真骨頂です。
ところで、「edge」でやった英語の仕掛けの元になっているのかもしれない曲があります。
「JUMPER」との共通性
言葉のつながりでイメージを生み出す
capsuleの「JUMPER」歌詞ページ。「JUMPER」は、作詞:中田ヤスタカ、作曲:中田ヤスタカ。
単語と短いイディオムが並んでいるだけです。訳してみましょう。
嘘、拒絶する(俗語では「困惑する」)、秘密、洗脳、ぶっ壊せ、起きろ、失せろ、打ちのめしてやる
意味、ない、予感、早くしろ、走れ、前に出ろ、跳び上がれ
意味のない言葉を並べただけに見えますが、なんとなく情景が浮かんでくるようです。
中田ヤスタカが書く英語の歌詞は特定の音を含む単語を重ねていくパターンです。
「JUMPER」では「p」を含む「slap」「up」「put」「stepping」「jumping」に特徴があります。