「ほんとう」を探す毎日

恋に堕ちた少女や、「wonderland」という曲名から、何だかファンタジーなイメージを抱かせる本楽曲

そんなイメージとは裏腹に、何が出てくるかわからないような真っ暗な森からMVがスタートします。

少し不気味なぬいぐるみを抱いて、森の中を彷徨う主人公の少女。

エコーのかかったように響くAimerさんの声が、より一層ミステリアスさを強調しています。

これまでにそうだったように、本楽曲でも惜しみなく披露されているAimerさんの魅力。

その1つが、体の芯を撃ち抜くようなハスキーボイスではないでしょうか。

一般的なラブソングも、Aimerさんの声が乗った瞬間に表情が変わる……。

そんな不思議な魅力を持つAimerさんだからこそ、「wonderland」が成立しているのかもしれません。

日々迷いながら探す

迷いの森にあるほんとう
探しに行く月のひかり
羊歯を踏んで足を濡らして
ひたりほとり夏の小道

出典: wonderland/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記

少女が何かを求めるように彷徨っているのは、「迷いの森」と呼ばれる不気味な森でした。

まだ幼いように見える少女ですが、たった1人で森へ入っていくのには理由があります。

それは「探し物をしているから」

月の光が辺りを照らす夜、こっそりと家を抜け出して森へ入っていくのも、これが初めてではありません。

少女は毎晩のように、「ほんとう」を求めて森へと入っていくのです。

葉に残っていた雨粒が足を濡らそうとも、少女が歩みを止めることはありません。

初めて恋に堕ちる

よく笑って泣いて見つめあって
おそるおそる恋に堕ちた
ふたり歩き出した違う方へ
呼び合う声だけもどかしく
find me in the wonderland

出典: wonderland/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記

真っ暗な家の中で少女を囲んでいるのは、一見豪華にも見える料理の数々。

しかし少女は料理に手を付けることなく、ただ家族と思われる人々を見つめています。

お父さんやお母さんのふるまいも、まるでそこに少女などいないかのよう……。

家に居ても息が詰まると感じた少女は、家族が寝静まった夜にこっそりと外に出るのです。

そこで出会ったのは、「ほんとう」を教えてくれる存在。

感情を失いかけていた少女に、「笑顔」や「涙」、そして「恋」を教えてくれた人でした。

初めての感情に戸惑いながらも、彼のいる方へと進み始めた少女。

この時少女はまだ、偽りともいえる家族の元から離れる決心がついていません。

欲しいものが見つかった少女

みつあみをほどくことの意味

そろそろ手を汚して
自分の欲しいものを
追いかけてみる
みつあみをほどいて
同じ星を齧る
ふたりになる

出典: wonderland/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記

何かを始めるには、それ相応の覚悟が必要だ……。

そう教えてくれた彼のために、自分の気持ちに従うために、少女は自分の意思で恋に溺れることを選びます。

手を引いてもらうばかりではなく、自分からつかみ取りに行くことを決心するのです。

家族のしがらみの象徴ともいえる「みつあみ」をほどき、自由を手に入れた少女。

夜が来るたびに逢瀬を重ねる2人は、既に同じ気持ちを共有し、愛し合っていました。

少女の手元にあるブロックが描き出すのは、「FIND ME」の文字。

本当の私を見つけ、新たな世界へと引っ張り出してくれた彼を思い浮かべ、少女は窓の外を眺めます。

食べかけの心から始まるのは

寂しがって夜になって
まだ明るい夢のほとり
食べかけで残した心だって
ここから始まるうたになる

出典: wonderland/作詞:梶浦由記 作曲:梶浦由記

夜といえば、多くの人が寂しさや不安感を覚えるものです。

しかし、少女にとって夜は待ち遠しい時間に他なりません。

大好きな彼に会えるのは、決まって夜だけ……。

まるで、夢の中でしか会えない想像上の人物のようにも思えます。

少しだけ彼の心に齧りついて、その味を知った少女。

まだ全部を知るには時間が足りないけれど、2人の物語はまだ始まったばかりです。

これからどんな歌を紡いでいくのか……少女は素敵な未来を描き、笑顔を浮かべます。