大ヒットアルバム「無罪モラトリアム」
「箸休め」としての役割
1999年2月24日に発売された椎名林檎のアルバム「無罪モラトリアム」。
170万枚を超えるミリオンセラーを達成した彼女の大ヒット作です。
今回はこのアルバムの7曲目に収録されている「積木遊び」をピックアップします。
椎名林檎によるとこちらの楽曲は、アルバムにおける「箸休め」の役割があるとのこと。
他の収録曲とは違うニュアンスなのですが、椎名林檎の巧みな言葉遊びを存分に楽しめます。
「無罪モラトリアム」の意味
「積木遊び」についてご紹介していく前に、「無罪モラトリアム」がどんなコンセプトなのか見てみましょう。
アルバムについて、椎名林檎はこう語っています。
「人として真面目に生きていこうとする以上、社会に適合できないモラトリアムな瞬間はきっと誰にでもあるのだから、自分自身のためにも『それは無罪なんだ』と言いたい」
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/無罪モラトリアム
「モラトリアム」という言葉は一般的に、一人前の社会人として見做されるまでの猶予期間として使われます。
成人した大学生がそれにあたりますね。
「無罪モラトリアム」は精神的に未熟であることへの許しを求めていると、解釈できるでしょう。
「積木遊び」でも未熟さゆえの歯がゆい気持ちを読み取ることができます。
2つのライブver.
「下剋上エクスタシー」
2000年4月から6月にかけて行われた「実演ツアー 下剋上エクスタシー」。
その映像をDVD化したのが「下剋上エクスタシー」です。
「積木遊び」は10曲目に収録されています。
まさに「箸休め」のポジションですね。
こちらのバージョンは本物の琴の音色が使われているのだとか。
「無罪モラトリアム」ではシンセサイザーを琴の音色に見立てています。
また、ビリビリとした重低音が爽快です。
「座禅エクスタシー」
2000年7月30日に「椎名林檎 (稀)実演キューシュー 座禅エクスタシー」というコンサートが開催されました。
その後、デビュー10周年を迎える2008年9月17日にこのライブ映像がDVDリリース。
ライブを行っていた時期は「下剋上エクスタシー」と近いのですが、アレンジや表現が大きく異なります。
まず、「積木遊び」は1曲目に収録。
消え入りそうな椎名林檎のハスキーボイスは、どことなくセクシーで儚げです。
そしてサウンドはよりシンセサイザーの効いたエレクトロニクスになっています。
さて、次は歌詞の内容を見ていきましょう。
一枚上手な「あなた」
「積木」の意味
あなたはいつもそうやって
丸い四角を選ぶ
あたしも特に気にせず
三角をのせてしまう
出典: 積木遊び/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
そのままの意味で捉えると、「あなた」と「あたし」は一緒に積木で遊んでいることになります。
「あなた」が選んだ積木は「丸い四角」。
「丸」なのか「四角」なのかハッキリしない表現ですね。
筆者は「円柱」のことを言っているのだと思いました。
「円柱」は上から見れば「丸」、横から見れば「四角」です。
そして「あたし」は「三角」を乗せてしまった…何が問題なのでしょう?
おそらくこれは2人のコミュニケ―ションの比喩と思われます。
ハッキリ言わずにはぐらかす「あなた」。
そして素直に「あなた」に転がされている「あたし」。
2人のやりとりは常に「あなた」が手綱を握っているのでしょう。