遠い街 遠い海
夢はるか 一人旅
出典: 遠くへ行きたい/作詞:永六輔 作曲:中村八大
この楽曲のキーワードでもある「遠い」を静かに繰り返します。
辞書的に解釈をすると「隔たりがある」「大きな距離がある」となる「遠い」。
移動に関するリアルな場面と、人と人の関係を表す、どちらにも使える言葉ですね。
歌詞にある「遠い」も2つの意味を持っているようです。
旅に出る目的地はここから長い時間をかけていく場所。
「街」や「海」まで行く移動の間も大事な旅の時間です。
そして今回の旅は「一人」で出かけることを決めています。
目的の場所は未定だけど、誰かを誘うことはしない旅。
もしかしたら、一緒に行こうとしていた人に断られてしまったのでしょうか。
だから自分だけで出かけると決めていたのかもしれません。
「夢」と名付けた望みを叶えるための旅なのでしょう。
そこに着いたなら1度は離れてしまった、心と心の距離を縮めることに出会える気がする。
次の歌詞は素直にその思いを歌います。
旅の目的は
出会いを求めて
愛する人と めぐり逢いたい
どこか遠くへ 行きたい
出典: 遠くへ行きたい/作詞:永六輔 作曲:中村八大
出かけるきっかけをストレートに歌詞に綴っています。
初めて行く街で出会った人と、その土地で恋に落ちることをイメージできる歌詞ですね。
そして出かけた先で出会う人と語るのは「愛」。
そこで出会った人と愛を交わせる間になりたいのでしょう。
歌詞を素直に読み取れば、顔を合わせた瞬間に両思いになるような出会いを求めているようです。
旅の楽しみにはもちろん人との出会いもあります。
場所によって相手が素敵に見える、スキー場マジックという言葉もありますね。
知らない土地に出かけて、その土地の魅力を語る人。
こんな出会いも旅というマジックを見せてくれるのかもしれません。
出会いを求めて計画するのも、旅のきっかけの1つであることは間違いないでしょう。
歌詞には求めるものに「人」とありますが、これだけではないことも歌詞には込められています。
1度も出かけたことのない場所に行く喜びと憧れ。
いつもと違う景色を見せてくれる、旅そのものを愛してほしいのです。
生涯旅を続けた作詞家、永六輔さんの思いがここにはあるのでしょう。
いつかは2人で
愛し合い 信じ合い
いつの日か 幸せを
出典: 遠くへ行きたい/作詞:永六輔 作曲:中村八大
旅への思いは、すでにそこを旅をしてきたようにどんどんと広がります。
初めて訪れた土地で出会った人と、旅を楽しんでいる様子を描いた歌詞ですね。
妄想といってしまえばそれまでですが、このような空想に浸れるのも旅の極意でしょう。
テーマ曲に使われたTV番組が始まった頃は、紙の地図で現地を調べた時代。
添えられた写真はあっても、知らない道を歩く想像力で旅への憧憬は膨らむばかりです。
そしてそこでの出会いが「幸せ」につながるのでしょう。
未知の土地への旅から生まれた出会い。その出会いがこの後の幸福までも連れて来てくれる。
旅することを純粋に楽しんでいた時代の歌詞だからこそかもしれません。
でも未だに歌い継がれているのは、どこかで出会いを求めているからでしょう。
忙しい毎日を過ごしていてもいつかは旅に出たい。
情報量が多くなっても旅の始まりはこの願望からですね。
旅はこの後も続いて
愛する人と
めぐり逢いたい
どこか遠くへ
行きたい
出典: 遠くへ行きたい/作詞:永六輔 作曲:中村八大
最後まで出かけることを望んで歌は終わります。
旅に出る目的はやはり出会いですね。
ここでもまだ旅の行先が決まっていないのもこの歌の魅力でしょう。
「遠く」の土地に出かけたいことは変わりはありません。
果てしなく広がるその土地への思い、そこを歩く自分の姿。
そこでしか出会えない愛の後に見る夢に思いを馳せます。
今の場所では知ることの無い自分がそこにいるはずです。
最後に
「遠くへ行きたい」の中に描かれた旅への感情は、今では薄れているのでしょうか。
前もって現地の様子そのものを見ることができる現代。
旅のすべてが「未知」となることはあまり無いのが現実です。
でもやはり出かけてみないと分からないことは沢山あります。
距離を重ねれば空気も温度も変わるでしょう。
ふと出かけたいという思いが心に浮かんだのなら「遠くへ行きたい」を聴いてみてください。
118文字で綴られた旅があなたを誘います。