楽曲「vogue」
浜崎あゆみ14枚目のシングル
1998年にデビューしてから数多くのCMタイアップを手掛けており、徐々に知名度を上げていきました。
そして女子高生から絶大な人気を誇っていた2000年の4月にリリースされた楽曲が「vogue」です。
14枚目のシングルとなるこの楽曲は、化粧品メーカーのコーセーのCMソングに起用されました。
タイトルの「vogue」には"流行"という意味があります。
あゆの個性的なファッションやメイクは女子高生を中心に話題になり、真似をする人が続出しました。
ギャルテイストが流行していた2000年代前半の世の中において、彼女はカリスマ的存在だったのです。
しかし「vogue」に描かれている内容は華々しい世界の話ではありません。
どちらかというと、流行の中心のようになっている自分についていけないあゆの様子が伺えます。
春を彩る花でさえもいつか散ってしまう…。
その咲いている花が今の自分だとしたら、私もいつか散るのだろうという悲観的なメッセージを感じます。
切なく儚い言葉が並べられた「vogue」には当時のあゆの心がありのまま込められているのです。
絶望3部作
「vogue」「Far away」「SEASONS」
「vogue」の後にリリースされたシングル「Far away」と「SEASONS」には繋がるものがあります。
ファンからは絶望3部作と呼ばれているこの3曲。
アーティスト浜崎あゆみとしての人生を一度リセットしたいという気持ちが3曲に込められています。
2000年という節目の年でもあり、世の中も変わり始めていた頃だったので多くの人々から共感されました。
3曲のジャケット写真とPVのストーリーはリンクしています。
「vogue」のジャケット写真は穏やかな表情で遠くを見つめているあゆ。
この表情を見る限りでは絶望感は全く感じられません。
「Far away」では「vogue」のジャケットの全体像が見えてきます。
あゆが写った写真は破られており、隣に誰かがいたことを匂わせていました。
つまり大きな括りだと失恋ソングともいえます。
そして「SEASONS」ではあゆ自身が過去の自分の写真を持っているジャケット写真でした。
絶望3部作のPVのラストでは黒い服に身を包んだあゆが過去の写真を持って登場します。
過去を捨てて、新しい自分になっていく様子が曲だけではなく映像としても表現されていました。
人気絶頂期の彼女にしか分からない葛藤が痛いくらい伝わってくる3部作です。
浜崎あゆみのノンフィクションが語るもの
小説に綴られた真実
3部作の序章である「vogue」は今までの自分を振り返るような歌詞になっています。
"あなたがいてくれたからここまで頑張ることができました"という感謝の気持ちを感じるのです。
2019年8月にあゆのノンフィクション小説が発売されました。
そこで彼女はかつて心から愛した恋人がいたことを公表したのです。
それによって「vogue」は彼への想いが詰め込まれた楽曲の1つだという事が分かりました。
絶望3部作はあゆ自身が実際に体験したノンフィクションの作品なのです。
それを踏まえながら聴くと本当に切ない気持ちになってしまいます。
「vogue」の歌詞を解説
満開に咲く花
君を咲き誇ろう
美しく花開いた
その後はただ静かに
散って行くから…
出典: Vogue/作詞:浜崎あゆみ 作曲:菊池一仁
ここでの"君"は"あゆ自身"のことを表しているのではないかと思います。
彼の支えによってあゆの人気は右肩上がりに成長していきました。
見事に綺麗な花が咲いて世間からは賞賛を浴び、華々しい世界が目の前に広がっていたことでしょう。
いつまでもその空間に浸っていたい…と幸せを噛みしめる前に、いつかくる別れの日を考えてしまうのです。
カリスマ歌姫でいられる人生はそう長くはないと自分自身で悟っていたのかもしれません。
人気が無くなれば知らない間に消えていく芸能界の様子を花が散ることと絡めています。