大丈夫、あたし今日は暇だから
あんたの側に居てあげるから
大丈夫、あたしに電話くれたら
もっと大事な物あげるから
出典: 大丈夫/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
優しい嘘をついて男性の側に寄り添い続ける女性。
一方「大丈夫」の歌詞には男性の言葉は一切登場しません。
ただし彼が取ったであろう行動は読み取ることができます。
嫌なことがあったから彼女に電話をかけました。
これは2人のいつもの行動パターンだと思われます。
電話をかければどんな時でも駆けつけてくれることを知っているのです。
そして「大丈夫だよ」と言ってくれる。
自分のしてほしいことは全てしてくれることも分かっているのです。
「自分勝手な男性」と「献身的な女性」という構図が浮かび上がります。
言葉の住人 尾崎世界観
大丈夫、誰にも言わないから
こんな事言ってもつまらないから
大丈夫、あたしには話してよ
今日は離さないでいてあげるから
出典: 大丈夫/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
「大丈夫」に登場する男性は自尊心が強いのでしょう。
彼女に愚痴を言っていることを周囲に知られたくないのです。
そんな彼の内面を先読みして「2人だけの秘密だから」と愚痴を聞いてくれる彼女。
これもいつもの光景なのでしょうね。
このパートでは尾崎さんらしい言葉遊びが展開されています。
他人に話しても面白くない話題だから❝つまらない❞。
これはどんな愚痴を聞いても私の心の許容量は❝詰まらない❞ことにかかっています。
また3行目と4行目の❝話す❞と❝離す❞は同音意義です。
尾崎さんは❝言葉❞の世界の住人なのだと改めて感嘆してしまいます。
身勝手な男性、その正体は...
嘘をつけない尾崎世界観
大丈夫、どんなに情けなくても
あんた歌ってる時は格好良いから
大丈夫、だれかに騙されても
あたしずっとずっとずっと信じててあげるから
出典: 大丈夫/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
同時に尾崎さんの正直すぎるパーソナリティが分かります。
Aメロの段階で男性の正体が尾崎さん自身であることをほのめかすのです。
勘違いのなきよう補足しますが、尾崎さんは自分を格好いいと思っているわけではありません。
そう言ってもらいたい情けない自分がいることを描いてしまうのです。
所属レーベルとの確執に傷ついたことも...。
尾崎さんなりにぼかしていますが嘘が付けない人ですね。
だからこそ私たちはクリープハイプが好きになってしまうのでしょう。
疲れたココロを癒すのは
自己の内面を見つめるのは?
あー、辛くてたまらないなら
酒飲んで酔っ払ってそのまま朝になるまで寝てれば良いよ
もう大丈夫だから
出典: 大丈夫/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
比較的穏やかな曲調の「大丈夫」。
もっともエモーショナルのサビのパートでは尾崎さんが落ち込んだときの対処法が描かれます。
しかしそれはアルコールに頼ってしまう弱い自分、そしてそれを肯定してほしい弱い心の内です。
「大丈夫」に登場する女性は弱ってしまったココロが作り上げた幻想なのかもしれません。
欧米の子供たちの多くが経験するイマジナリーフレンドのような存在。
たとえ幻想だとしても自己の内面を肯定することは精神の均衡を保つ上で大切なことだといわれています。
しかしアルコールの過剰摂取は思わぬ副作用を招くのでした...。
文筆家としての”業”
あー、痛くてたまらないなら
薬飲んで横になってそのまま朝になるまで寝てれば良いよ
もう大丈夫だから
出典: 大丈夫/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
2回目のサビでは頭痛持ちであることも明かしてしまいます。
アルコールの過剰摂取による二日酔いかもしれませんね。
しかし自身のこととはいえあまりにも赤裸々な歌詞が続きます。
人気絶頂バンドのカリスマ・フロントマンとして祭り上げられることへの密かな抵抗。
そんな思考も無意識化に言語化してしまうのが尾崎さんの文筆家としての業なのでしょうね。