ニューミュージックの旗手、チューリップ
ルーツはビートルズ
1968年に福岡県、博多でチューリップの前身、ザ・フォーシンガーズとして結成され、1972年にデビューを果たしたグループ、チューリップ。
70年代の音楽シーンを代表する、ニューミュージックの先駆けともいえるグループでした。
このころは、同じく九州出身の武田鉄矢率いる”海援隊”や、南こうせつの”かぐや姫”、甲斐よしひろの”甲斐バンド”がチューリップとならんで活躍した時代でもありました。
”ビートルズ”に影響を受けたというチューリップは、それまで日本の音楽シーンの主流であったフォークでも歌謡曲でも、ロックでもない、ニューミュージックという新しいジャンルを切り開きました。
日本語ロックという斬新なスタイルは当時の若者たちの多くの支持を集めました。
ニューミュージックは、今のJ-POPにつながっているとされています。
初のワンマン野外コンサートを開催したグループ
チューリップは1978年、本格的な野外コンサートを初めてワンマンで行ったグループでもあります。
「ライブ・アクト・チューリップ・イン・鈴蘭」と銘打ったこのコンサートは全国からファンが集まり約8000人を動員。
チューリップのルーツであるベンチャーズやビートルズ、ウィングスのカバーも披露し、40曲にも上る曲が演奏される白熱したコンサートとなりました。
そのあとも繰り返し野外コンサートを敢行、その中には豪雨に見舞われ大きな機材トラブルが起こったこともあったといいます。
チューリップ・ランド登場!
コンサート1000回記念には、なんとよみうりランドを貸し切りにして”チューリップ・ランド”に。
昼間はチューリップ仕様に飾り付けられた園内でイベントや遊園地を楽しみ、夜はコンサートを堪能と、一日がかりでチューリップの世界を楽しめる大規模なイベントを開催しました。
チューリップが行った数々のイベントとコンサートは、現在のアーティストが行うイベントなどの先駆けになったともいわれています。
名曲「心の旅」
バンドの命運のかかった曲
今回紹介する「心の旅」は、メジャーデビューから3枚目のシングルです。
デビューはしたものの、リリースしたアルバム2枚とシングルは鳴かず飛ばず、このシングルがもし売れなければあきらめて東京を去るということも考えていたとか。
まさに崖っぷち、この作品の売れ行き次第でバンドの命運と東京での暮らし、そしてもしかするとアーティスト人生もかかっていた勝負の1曲となりました。
そのためか強く売れ線を意識して作られたといいます。
財津和夫が作詞作曲し、彼がヴォーカルの予定でしたが、歌詞が女性への想いをつづるものであり、売れることが第一条件だったため、女性受けのよさそうな甘い声の最年少メンバー、姫野達也が担当しました。
初登場時はオリコン71位でしたが、じわじわと順位を上げ、なんと発売から約5か月後にはオリコンシングルチャート1位に上り詰めました。
「心の旅」はチューリップ最大のヒット曲となり、無事彼らはこのまま音楽活動を続いていくことが可能になったのです。
このあとチューリップは「サボテンの花」、「虹とスニーカーの頃」などの名曲を生み出すことになります。
歌詞を紹介
ああだから今夜だけは
君を抱いていたい
ああ明日の今頃は
僕は汽車の中
出典: https://twitter.com/utakotobot/status/940062018815500289
”今夜だけ”。
別れの前夜でしょうか。
”僕”か汽車に乗って、どこか遠くへ行く様子が伺えます。
作詞者の財津和夫が上京する際の想いから描かれたというこの歌詞から見える風景は、実際に彼の身に起こったことなのかわかりませんが、実感を持って聴くものに迫ります。
明日、旅立つ。
迫りくる別れの時に、名残は尽きないようです。
旅立つ僕の心を知っていたのか
遠く離れてしまえば愛は終るといった
もしも許されるなら眠りについた君を
ポケットにつめこんでそのまま連れ去りたい
出典: https://twitter.com/114514PNS/status/940267317836922880
”君”は遠く離れれば”僕”との愛は続かないと見越しているようです。
今ならば携帯電話もあり、インターネットもあり、どこにいても声が聞けて顔を見ることも簡単にできる時代です。
ですがこの曲が作られた当時は携帯もなく、固定電話と手紙が離れてしまった恋人たちを繋ぐものでした。
現代であれば、もう少し事情が違ってきたかもしれませんね。
”僕の心を知っていたのか”と問いかけているのか、独りごちているのか。
どちらにしても、そういう問いかけの言葉がでてくるということは、明確な言葉で”君”に別れを告げてはいないのでしょう。
しかし”僕”の心は、この愛は故郷と一緒に置いていく愛だと決めています。
それなのに彼女に言わせてしまう、男の優しさという名のずるさを少し感じてしまいますね。
本当に彼女を連れ去りたければ、それも可能なはず。
名残は惜しいけれども、東京での新しい生活、そこで巡り合うだろう新しい出会いにも胸を膨らませているような”僕”。
きれいな別れをして、彼女の思い出もきれいなままで抱いていたいのでしょうか。
彼女の本音は違うかもしれないのに、確かめもせずに。
にぎやかだった街も
今は声を静めて
なにをまっているのか
なにをまっているのか
いつもいつの時でも
僕は忘れはしない
愛に終りがあって
心の旅がはじまる
出典: https://twitter.com/utakotobot/status/933653321881214976