楽曲について
インターネットの歌い手界隈に衝撃を与えたハイトーンボイスの持ち主ウォルピスカーター。
そんな彼の渾身のアルバム『40果実の木』のリード曲がこの「徒花の涙」です。
この楽曲の作詞作曲は針原翼(はりーP)さんが担当しています。
針原翼(はりーP)さんといえば前回「泥中に咲く」でウォルピスカーターさんとコラボしました。
今ではYouTube上で2000万回再生を越える大ヒット楽曲。
そんな最強タッグともいえる二人が織り成す楽曲「徒花の涙」について歌詞を解釈していきます。
バラード調の楽曲に込められたメッセージはどのようなものなのでしょうか。
自分の命の価値
生を全うすることさえも拒んだ
一人っきりあの子は泣いていた
逃げ出した過去の無力思い出して
大切な記憶をひた隠し
生まれてはいけなかったと泣いていた
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
真っ暗な部屋の中、ただ一人で泣き崩れている子供の姿が映ります。
心の底から蛆虫のように湧いてくるネガティブな感情。
何もかもが信じられなくなり、自己肯定感はほぼ皆無です。
そして歌詞の4行目で描かれているものが全て。
自分はこの世界に存在するべきではなかったといっているのです。
何故そのような思考に至るほどに追い詰められてしまったのでしょうか。
自分の存在価値すらも否定される出来事。
それはいじめに始まり、虐待や誹謗中傷だけにあらず、世の中の閉塞感や圧迫感も要因として考えられます。
自由にさえも疑問を呈する
事変の荒波が畝りをあげてゆく
いづれ誰もが通る別れ道へ
後戻りができない僕らの自由とは何だろうか
出会ってしまう迷路
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
自分に対して異常なほどの不幸が襲い掛かってくる日々。
歌詞の2行目ではそんな中でいつかは死に向かうといっています。
大した良い思いも出来ずにただただ今を耐え忍んで死んでいくだけ。
そんな一過性の命に対して苦言を呈しています。
本来、自由とは何者からも干渉されずに自分の意志に従うことです。
そんなことすらもままならない、レールの上に乗せられた一つの命。
歌詞の4行目に描かれていることについて掘り下げていきます。
ここの歌詞からは本来であれば回避したかったというニュアンスが感じられます。
よってここで出会い続けているのは艱難辛苦の日々なのです。
迷路といえば彷徨って他の誰にも会えない、たどり着けないというイメージ。
しかしその中で煩わしい日々だけが自分にまとわりついてくるのです。
心の号哭
生まれた代償ばかりに罪を抱いて 死に損なった心が
のこされた愛も奪ってしまって からっぽになった
解いてよ 痛いよ 殺してくれよ うなされた夜の行く末は
決めつけられた 痛烈な惨状 苛烈業苦の中で
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)
これほどに自身の心の号哭を呈した歌詞も珍しいと思います。
歌詞の一つ一つが組み合わさって生み出される負のパワーは強大。
自分がこの世に生を持っていることに対する憂いと罪悪感を抱きます。
歌詞の3行目にある「解いて~」には主人公の生きたいと縋る想いが描かれています。
始めから「殺して」という単語を出さず、「解いて」と助けを願っていました。
誰しも死にたいわけではなく、誰かの助けが欲しいということを示しています。
生きているのではなく、ただ生かされているだけのような毎日。
サビでも特に具体的な辛い出来事は述べられていません。
これは、この世に蔓延る全ての艱難辛苦を表しているからなのでしょう。
だからこそ誰しもが自分のことのように感じられ、共感性が増すのです。
下がり切った自己肯定感
哀れな存在
泣き止んだあの子は不吉な子 あいつはあいつは孤独なんだ
矛盾をかき集めて 捨てにゆく姿 自分には相応しいと荷を下ろした
出典: 徒花の涙/作詞:針原翼(はりーP) 作曲:針原翼(はりーP)