聴くと希望が湧いてくる
My Hair is Badの『次回予告』は『hadaka e.p.』の1曲目に収録されています。
ノスタルジックな音楽と柔らかい歌声によって紡がれる何気ない日常。
取るに足らない日々を描いた歌詞を読むと、大切な「今」について考えさせられます。
応援ソングというわけでもないのに、聴くと何故か希望が湧いてくる曲です。
言葉にならない感動が胸を打つ

曲の雰囲気は、穏やかでどこかぼんやりした感じ。
MVも曲の世界観に合わせて、わざと画質を粗くしているようですね。
レトロ感のある映像が曲の良さをさらに引き立てています。
この曲を初めて聴いたときは、メロディーに緩急がなく単調な曲に聴こえたかもしれません。
しかし、繰り返し聴いているうちに、この淡々とした曲調が癖になりませんか?
心に染み渡るような温かさ。
そして、突然湧き上がる言葉にならない感動。
気付いたときにはもう、この曲の虜になっていることでしょう。
素朴でありながら聴いている人を夢中にさせる。
この曲にはそんな魅力があります。
人間らしさが溢れる歌詞
いつまでも忘れられない
眠れずに眺めてたあのテレビ
僕らはいつまでも忘れられないまま
また今日が
出典: 次回予告/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
忘れられないのは、観ていたテレビ番組の内容でしょうか?
それとも眠れなかった理由の方か。
いずれにしても、たいした出来事ではなかったはず。
それなのに「いつまでも忘れられないまま」なのは、いったい何故なのか?
眠れない夜に何か心に残るような想像を巡らせていたのかもしれませんね。
休み明けの朝
日曜のままの身体の朝
起き抜けの肌 熱めのシャワー
身の残ったバナナの皮
スヌーズ機能のままのアラーム
雑な歯磨き 塵紙がない
戸締りの鍵 木々の真緑
休みは七分の二なのに
遊びたい休みたい 二分の二の日々
出典: 次回予告/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
休みの気分から抜け出せない、そんな朝。
覚醒しきらない身体に熱いシャワーを浴びせて、無理やり目を覚ましています。
続く歌詞では、だらしない生活の様子が詳細に描写されていますね。
この歌詞だけで「僕」が1人暮らしの社会人だということが想像できます。
休み明けの朝は特に起きるのが辛い。
社会人なら誰もが共感できることではないでしょうか?
目は覚めないし、部屋は散らかっているし……。
憂鬱な気分のまま外に出ると、木々の緑が視界に入ります。
緑の葉を茂らせる木々を見ながら、「遊びたい、休みたい」を頭の中で繰り返す。
1週間のうちに休みが2日しかないなんてあんまりだ!
そんな行き場のない不満を抱えながら「僕」は今日も会社に向かいます。
日常の中で感じる違和感
すべては遠い国の出来事
新聞もニュースも他人事の様に流れ踊ってる
今起こる戦争 暴動と喧騒
それより週末はなにしよう
出典: 次回予告/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
ここの歌詞で印象的なのは、「流れ踊る」という独特な言い回し。
メディアが毎日取り上げている世界各国の出来事。
それはあまりにも自分の生活から遠すぎて、他人事としか思えません。
新聞の文字もニュースの映像も、すべて頭の中を流れるように通過していくだけ。
今日もどこかの国で誰かが命を落としている。
それは間違いなく凄惨な出来事であるはずなのに、自分の心は何も感じない。
そんな様子を「流れ踊る」と表現したのではないでしょうか?
メディアが報じている戦争や暴動よりも週末の予定を考えることの方が大切。
これは不謹慎と言われても仕方のないことなのでしょう。
しかし、平和なこの国ではそれを咎められることもありません。