宇多田ヒカル「HEART STATION」
アルバム先行シングルとして好発進
宇多田ヒカルの『HEART STATION』は、2008年2月20日に発売された20枚目のシングルです。
『Stay Gold』との両A面シングルであるこの曲は、2008年3月19日に発売されたアルバム『HEART STATION』の先行シングルでもありました。
来るアルバムのタイトルトラック、つまり試食的役割も果たしたこの曲は、オリコンチャート週間3位を記録しました。
6枚目のアルバム『HEART STATION』は、タイアップが収録曲のおよそ半分である6曲もあり、宇多田ヒカルのナチュラルな魅力を味わえる楽曲が揃っています。
さらに「音楽ダウンロード=宇多田ヒカルの楽曲」という流れがあたりまえとなるなど、携帯電話で彼女の曲を聴くのがトレンドでした。
「レコード会社直営♪」(後の「レコチョク」)のCMソング
『HEART STATION』といえば、音楽ダウンロード&聴き放題の国内最大級サービス「レコード会社直営♪」(後の「レコチョク」)のCMソングとしてもお馴染ではないでしょうか。
2008年10月末に着うた、着うたフルが10億ダウンロードを記録したニュースが駆け巡りましたが、その2008年にCMキャラクターを担った宇多田ヒカルと、聴きたい時にダウンロードして聴くロマンを伝える『HEART STATION』起用のイメージ戦略も、この記録に大きな貢献を果たしたに違いありません。
「HEART STATION」動画再生ランキングは?
再生ランキング1位は公式PV動画
Youtubeにて「HEART STATION 宇多田ヒカル」と検索した時、再生回数トップに表示されるのは、宇多田ヒカル公式のPVです。
再生回数はおよそ700万回。
本物の宇多田ヒカルの歌を見たい、聴きたいというユーザーの想いが伝わります。
誰にも言えない秘密の恋の歌
「HEART STATION」とは「以心伝心するエリア」といったところでしょうか。
心に秘めた言葉を、声には出さずとも伝える術を持っている人々、そんなエスパーめいたイメージが、真っ白な衣装に身を包み、ヘッドホンで耳を塞ぎ、ひたすら瞳を覗き込んでくるミュージッククリップの宇多田ヒカルから伝わってきます。
ほどほどに混雑した地下鉄の車内で、他人に見向きもせず、射るような視線でこちらを見つめてくる彼女に、「HEART STATION」という優しげな曲名の裏に隠された、固く鋭い意志を感じます。
それでは、秘めた恋を綴った歌詞の世界を味わいましょう。
1番の歌詞の解釈
またいつか会うことを夢見て分かれる二人
肌寒い雨の日
ワケありげな二人
車の中はラジオが流れてた
さよならなんて意味がない
またいつか会えたら
素敵と思いませんか?
出典: HEART STATION/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
静かな雨の日、寒さをしのぐように車の中でよりそう二人は、どうやら別れ話の途中のようです。
ラジオから流れる音楽をBGMに話し合うのですが、想像するに二人の心が離れたわけではなく、原因は他の事情にあるようです。
ゆえに、形だけの「さよなら」には意味がないのは明らかです。
「またいつか会う」ことを夢見て、今は離れるしかない二人のストーリーが始まります。
私の声が聞こえてますか?
深夜一時のheart station
チューニング不要のダイヤル
秘密のヘルツ
心の電波届いてますか?
罪びとたちのheart station
神様だけが知ってる
I miss you
出典: HEART STATION/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
その歌声を聴いて誘惑された船乗りは、船の操縦を誤り崖に激突して海に沈む。
そんなギリシャ神話のセイレーンの歌声のように、宇多田ヒカルの透明感ある静かな問いかけが胸に迫ります。
「私の声が聞こえてますか?」
車の中で「さよなら」を伝えたはずの相手の声が、チューニングもしていないのに心の中に響きます。
深夜一時にどこからか届く秘密のヘルツ、「I miss you」と歌う相手の思念がハートに直接響いている罪悪感は、お互いと神様しか知りません。