「上を向いて歩こう」は「SUKIYAKI」として、1963年5月にアメリカで発売されます。
そしてなんと、ビルボートのHot100で3週連続第1位という快挙を達成するのです。
日本のアーティストとしてはもちろん、日本語で歌われた曲が全米1位になったのは初めてのことです。
そして、現在に至るまで全米1位を記録した日本人アーティストは坂本九ただ一人です。
今でも、多くの外国人は「SUKIYAKI」としてこの曲を知っているのです。
全世界でのシングル売り上げは約1300万枚とも言われています。
欧米のポップスとは違う抒情的なメロディーは新鮮だったのかもしれません。
また、当初日本では不評だった坂本九のロカビリー歌唱が欧米ではすんなり受け入れられたとも言われています。
いずれにせよ、「上を向いて歩こう」は海外で最もヒットした日本の曲となったのです。
歌詞について
悲しみに暮れる主人公
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
思い出す 春の日
一人ぽっちの夜
上を向いて歩こう
にじんだ星をかぞえて
思い出す 夏の日
一人ぽっちの夜
出典: 上を向いて歩こう/作詞:永六輔 作曲:中村八大
それでは、「上を向いて歩こう」の歌詞を詳しく見ていきましょう。
主人公は悲しみに暮れています。
その理由はわかりません。
ただ、涙をこぼしたくない。
涙がこぼれないように、上を向いて歩くのです。
空に輝く星が涙でにじみます。
今日も一人で夜を過ごす主人公。
孤独に耐える彼の姿が、季節感たっぷりに歌われています。
幸せは空の上に
幸せは雲の上に
幸せは空の上に
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
泣きながら歩く
一人ぽっちの夜
出典: 上を向いて歩こう/作詞:永六輔 作曲:中村八大
涙がこぼれないように上を向いている主人公。
その、目線の先にある空には幸せがあるはずだ。
そんな希望が歌われています。
非常に切ないメロディーと相まって、感動的に聞こえますね。
続く2番では、Aメロの部分が口笛になっています。
この部分も非常にいいアレンジだと思います。
本当に思いがあふれている時には言葉が出てこないものです。
この口笛の部分にこそ、この曲の核心があると思えるほどです。
米軍への皮肉が込められている?
悲しみの理由とは?
思い出す 秋の日
一人ぽっちの夜
悲しみは星のかげに
悲しみは月のかげに
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
泣きながら歩く
一人ぽっちの夜
出典: 上を向いて歩こう/作詞:永六輔 作曲:中村八大
悲しみに耐え、涙をぐっとこらえる孤独な主人公。
一体、彼の悲しみの理由は何なのでしょうか。
実は、作詞した永六輔がこの曲について語ったことがあります。
「上を向いて歩こう」が発表される前、1959年から1960年にかけて日本は大きく揺れていました。
日米安保条約の改定をめぐり、反対運動が激しく行われていたのです。
日米安保条約は1951年、サンフランシスコ平和条約と共に締結されました。
これは太平洋戦争の終結からGHQによる統治を経て、日本が独立国家として復帰するものでした。
しかし日米安保条約の改定は在日米軍を優遇し、引き続き日本がアメリカの傘の下に入るというものだったのです。
こうした動きに反対したのは学生たちだけではなく、文化人にも多く反対派がいました。
永六輔もその一人だったのです。
1960年には学生のデモ隊と機動隊が衝突し、東大生が命を落とすという悲劇も生まれました。
そして反対運動もむなしく、日米安保条約の改定は可決します。
永六輔はこうした流れをすべて、目にしていたのです。
安保闘争に敗れ、悲しみに暮れとぼとぼと歩く帰り道。
それでもぐっと耐え、未来を信じ前を向こう。
「上を向いて歩こう」はこうしたことを歌った曲と言われています。
「歌は世につれ 世は歌につれ」とよく言われます。
大衆音楽というものはどんなジャンルであれ、多かれ少なかれその時代を反映するものです。
「上を向いて歩こう」もそうした歌なのだと思います。
永六輔の反骨精神と、日米安保や米軍への皮肉が実は込められているのです。
しかし「上を向いて歩こう」の歌詞には何も説明がありません。
主人公がなぜ悲しいのか、泣いているのか、その理由は語られないのです。
そして歌詞の中には何も難しい言葉はありません。
小学生でもわかるような簡単な言葉だけで作られています。
そこが素晴らしいのです。
最後に
坂本九の「上を向いて歩こう」をご紹介しました。
日本の歌謡史に残る名曲であり、全米1位になった唯一の日本語曲でもあります。
そしてその中には、永六輔の悲しみが込められているのでした。
この名曲を改めて、多くの人に味わっていただけたらと思います。
最後に、坂本九の別のヒット曲についての記事をご紹介します。
こちらも永六輔が作詞した曲です。ぜひ読んでみてください。
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