藤井風「青春病」
「青春病 EP」に収録された表題曲
YouTubeで様々な楽曲のカバー動画をアップしていたことから話題となった藤井風。
その後シンガーソングライターとしてデビューし、2020年にはネクストブレイク間違いなしといわれていました。
そんな彼が2020年12月11日にリリースしたシングルが「青春病 EP」です。
そのシングルの中で表題曲となっている「青春病」はその名の通り、青春がテーマとなっている楽曲。
今回はその歌詞に注目し、その意味を考察していきます。
R&Bを基調としながらもそのメロディは日本的であるという彼の楽曲のオリジナリティが存分に詰め込まれた楽曲です。
MVはYouTubeで公開中
そんな「青春病」ですが、MVがYouTube上で公開されています。
YouTubeから人気に火が付いたアーティストであることから、再生回数は2021年1月現在170万再生を突破。
その勢いは止まる所を知りません。
仲睦まじい仲間たちの姿が印象的でありながら、映像の色調はどこか寂しさを帯びています。
青春という言葉にある輝かしさよりもノスタルジーに焦点を当てたような映像です。
この楽曲の持つ魅力を更に引き出すようなMVとなっています。
青春という名の病
別れを告げる
青春の病に侵され
儚いものばかり求めて
いつの日か粉になって散るだけ
青春はどどめ色
青春にサヨナラを
出典: 青春病/作詞:藤井風 作曲:藤井風
冒頭からタイトルに入っている「青春」という言葉と「病」という言葉の2つが登場しています。
この楽曲において青春というのは病であるといっているのです。
青春という言葉からは、若さによって将来に対して強い希望を持っている状態を想像させられます。
しかしながらこのパートの3行目ではいつかそれが「散る」と歌っているのです。
これは青春がいつか前触れもなく終わるということを意味します。
そして5行目においてはそれが「どどめ色」であると歌っているのです。
この色は熟した桑の実をつぶした際の黒紫色を意味します。
この楽曲の主人公は青春というものはどこか暗さを帯びていると考えているのでしょう。
そして、6行目では彼は青春に対して別れを告げようとしています。
彼が歳を取り、大人へと変化したことを表しているのでしょう。
弱い自分
ヤメた あんなことあの日でもうヤメた
と思ってた でも違った
僕は 自分が思うほど強くはなかった
出典: 青春病/作詞:藤井風 作曲:藤井風
ここでは主人公が何かを「やめた」と歌っています。
そしてそれを「あんなこと」と歌っているから彼にとってマイナスなことであることは間違いがありません。
しかしながら、その後の2行目で「やめた」ことを撤回しています。
具体的に何をやめたのかについては言及していませんが、これは世間一般的にやめるべきものであるのでしょう。
だからこそこのような葛藤をここで吐露しているのです。
自分で思っているよりも自分は弱い人間だと自覚して、何かをやめられずにいるのでしょう。
これはもしかしたら青春そのものを意味しているのかもしれません。
青春という時代から卒業しようとしながらも、まだ若者のままでいたいという意志の現れであるといえるでしょう。
葛藤と焦燥
葛藤する主人公
ムリだ 絶ち切ってしまうなんてムリだ
と思ってた でも違った
僕は 自分が思うほど弱くはなかった
出典: 青春病/作詞:藤井風 作曲:藤井風
次のパートでは冒頭で逆に断ち切れないと歌っているのです。
しかしここでもそれを2行目で覆しています。
3行目では自分が強い人間であると歌っているのです。
前述のパートと合わせて、主人公は真逆のことを歌っています。
ここには彼の葛藤が表されていると考えられるでしょう。
彼は恐らく青春時代と大人の間で揺れ動いているのではないでしょうか。
大人になりたいけれど子供でいたい。
どちらにもなりきれない状態なのです。