夢を追いかけた高校生たちへ贈った音楽
【水平線】概要
back numberの【水平線】は前作「MAGIC」の発売から1年5か月ぶりの新曲となりました。
同曲は2020年8月18日にYouTubeで公開され、リリース予定はないといいます。
8月18日はその年のインターハイが開催される予定だった日。
2020年、新型コロナウイルスの影響でインターハイをはじめ数多くの大会が中止されました。
清水さんが、やり場のない悔しさを抱えた高校生たちの声を聞き作成した楽曲です。
歌詞に込められた想い
清水さんは同曲を「慰めでも励ましでもない」と語ります。
ただミドルテンポのメロディーは顔を上げて前に進む勇気をくれるように感じられるでしょう。
辛くて苦しい思いを堪えながら練習に励んできたこれまでの時間…。
勝っても負けてもいい、高校生たちはその場所に全力で挑むためにずっと頑張ってきました。
それが身を守るためとはいえ、大人の判断によりその機会を失ってしまったのです。
声をあげても届かない無力さ、やり場のない悔しさは一言では語り切れないでしょう。
何が正しいのか、どうすることが良かったのか正解はきっとありません。
あの日に立ち止まってしまったままの僕を【水平線】はどう導いてくれるのか…。
歌詞を深読みすることできっとまた少しずつ前に進むことが出来るのでしょう。
真面目で優しい気持ちを持っている
寄り添える人でありたい
出来るだけ嘘はないように
どんな時も優しくあるように
人が痛みを感じた時には
自分の事のように思えるように
出典: 水平線/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
とても真面目で思いやりを持っていることが伝わる歌詞から曲が始まります。
この歌の主人公はとても丁寧に生きようとしていることが読み取れるでしょう。
人は誰もが小さな嘘をたくさん重ねて生きているように思います。
なかなか自分の思ったことを全て正直にさらけ出すことは、良くも悪くもとても難しいことです。
しかし自分の気持ちにたとえ小さくても嘘を重ねることはいつか自分を苦しめるでしょう。
丁寧に生きたいのは、自分も相手も誰も傷付いてほしくないから。
見返りなんて求めていません。
嘘のない純粋な心で優しく寄り添いたいと思っている様子が窺えます。
思い通りにはいかないときもある
正しさを別の正しさで
失くす悲しみにも出会うけれど
出典: 水平線/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
正しくいようとするあまりに見失ってしまうことがあるのでしょう。
自分が良かれと思ってとった行動が誰かにとっては良くないことであったりもします。
特に人の感情は様々でひとつのものさしで図るのはとても難しいことです。
ただそうやって失敗を繰り返しながら人は少しずつ成長していくのでしょう。
答えはひとつではない
物語の捉え方
水平線が光る朝に
あなたの希望が崩れ落ちて
風に飛ばされる欠片に
誰かが綺麗と呟いてる
出典: 水平線/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
この曲でいう「あなたの希望」は高校生たちの大会へ向けた想いのことでしょう。
インターハイを目指すような子の多くはその競技を高校生になる以前から続けている子です。
中には小学生など小さい頃からやっている子もいるでしょう。
「インターハイに出ること」を目標にやってきた子も少なくないはず。
それが突然出てきた未知のウイルスの感染拡大により中止になってしまいました。
長年目標としてきたものが声をあげる間もなく崩れて消えてしまったのです。
このやり場のない悲しみや苦しさを抱えた様子をマスコミは連日テレビで流しました。
それを見た大人は分かったようなふりをして「可哀想」といいます。
悔しくて悔しくて枕を濡らすその涙を「綺麗」だとか「尊い」というのでしょう。
ですがそれは悪いことではありません。
諦めることになれてしまった大人にとって高校生の涙はどこか懐かしいものなのです。
感情を抑えきれないような姿は、大人の胸を熱くさせるものがあるのでしょう。