まず聴いてみる
3rd「VECTOR」は掛け値なし、文句なしの傑作
突き抜けた。「VECTOR」を最初に聴いた時の感想です。 マジで日本のロックの伝説達と肩を並べる存在になってくれた。
このバンドには死角がない。というか、なくなりました。 「ここがもう少し良きゃなぁ」というところが見当たらないのです。
ロックが好きでたまらない少年達の理想がそのまま形になったようなヴィジュアル、サウンド、そして歌。
4人が4人とも絶対的な個性を持ち、それぞれが他をスポイルする事がない。
メンバー同士がお互いの音を信じ、尊重し合っているのがわかります。
(バンド内の力関係って、どうしても音に表れてしまいますからね。)
サウンド、メッセージ共に死角なし
私も音楽を評論する立場として、ベタ褒めするしか能がないのか、と思われたくないのでひとつだけ言います。
Thee Michelle Gun Elephantやアジカンやクロマニヨンズにあるような、格調高いほどの文学性は正直、あまり感じません。
しかし、それが弱点になっていない。というか、そんなもんBLUE ENCOUNTには必要ないのです。
ファンならみんな思うはず。 「格調高い文学性?何それいるの?」と。
不器用で荒削りな言葉でも、伝えずには、歌わずにはいられない。
この歌だからこそ、そんな想いが伝わってきます。
この詞でしか生まれ得ない美しさがあります。
一体他に何が必要だというのか?
ギター、ベースにしてもドラムにしても、彼らより上手いプレイヤーなんて世界中にごまんといるのでしょうが、この4人にしか出せないヴァイブ、ケミストリーがあります。 それがこの3rdでは、いよいよ極限の域まで高まってきたと思えます。
こればかりはいくら言葉で説明してもしょうがない。聴いて、感じてもらうしかないです。
検証してみる
実際に走ってみる
では「RUN」を聴きながら、実際に走ってみます。
ウィンドブレーカーの胸ポケットにスマホを入れて、某ストリーミングアプリで鳴らします。
月々の定額料金¥1,000ほどで、アルバム「VECTOR」全曲聴けます。聴き放題です(幸せ)。
「RUN」は、「VECTOR」の5曲目です。ヘッドホンをつけて、さあ走り出します。
嘘…やだコレ。何これ…。
合う…。
いやね最初は、こんなテンポの速い縦ノリパンクに合わせて走れるわけねえだろって思ってたんですよ。 フグには毒があるってみんな知ってますよね。なんで知ってるんですか?フグの毒に当たった人がいるからですよ。
私の命を犠牲にして、「RUN」聴きながら走ったら死にますよって、みんなに教えることになるのか。これが死のロード(第一章)か。何でもないようなことが、幸せだったと思うなぁ…。
ところが実際に聴きながら走ってみると、意外なほど合うので驚きました。 ドラムは性急すぎると思っていたら、イントロの4つ打ちのテンポに合わせて走り出し、そのままAメロ~サビに合わせて走り続けても、意外と苦ではありません。
ギターのフレーズにも、秘密があるようです。
技巧的にして天衣無縫
冒頭で「RUN」は「アルバム中最もシンプルでストレートなパンクロックスタイルの曲」と言いましたが、それはあくまでも曲調の話。
よく聴けば、ギターのアレンジ超緻密。めちゃくちゃ弾きまくってます。 こんなふうにギター弾けたら気持ちいいだろうな、と思うのは私だけではないはず。 BLUE ENCOUNTのサウンド面を特異にしているのはやはり、このギターのフレージングだと思います。
とにかく独創的、変幻自在、自由奔放!
バキバキのリフを奏でていたかと思えば、次の瞬間には、サイケデリックな浮遊感のあるフレーズが聞こえてきます。
一曲の中にリズミックで多彩なギターフレーズが次々と現れる為、極端な話、どんな動作でも合ってしまいそうです。スキップだって出来てしまった。
そして、ずっと言いたかったのですがこのバンド、本当にドラムがいいなぁ…。
他の曲も聴いてみる
他にもランニングにぴったりのおススメ曲を、一曲だけ紹介しますよ。
爆風スランプ「RUNNER」
なんとBLUE ENCOUNTのメンバーが某ラジオ番組に出演した際、(「RUN」は)この曲「RUNNER」の2018年版です、という趣旨の発言をしたらしいのです。マジでか。
1988年にリリースされたこの曲は、爆風スランプの押しも押されぬ代表曲にして、最大のヒット曲。
「走る走る俺たち 流れる汗もそのままに…」というサビを知らない人はいないんじゃないか?という位、国民的な認知度のある曲です。
高校野球のスタンドでブラバンが演奏する、定番曲でもありますね。
BLUE ENCOUNTのメンバーは、この曲に思い入れがあるのかな?
わかりませんが、「アンダーグラウンド出身であるはずのブルエンが、爆風スランプの曲を意識してる?そんな事言っちゃっていいんだ!」と驚いたのは、私だけではないはず。
1984年にメジャーデビューした爆風スランプも、元々はアンダーグラウンド出身。デビュー当時は、コミカルさと暴力性、情緒性が同居した独特のロックが身上でした。(渋谷陽一さんも、自身のラジオ番組などでよく取り挙げていらっしゃいました。)
ところが、バンドの先鋭性を一手に担っていたベーシストがこの「RUNNER」のシングルを最後に脱退。残ったメンバーは一念発起、その音楽から暴力性の部分を極力排し、「RUNNER」や「リゾ・ラバ」のような誰にでもわかりやすく、ポップなヒット曲を連発するようになり、国民的なお茶の間ロックバンドに成長して行きました。
しかし、初期の手の付けられない暴れっぷりや、親たちが顔をしかめるような下ネタが好きだったファン達は一抹の寂しさを感じていたのも事実。「もう俺たちだけのバンドじゃなくなった…」なんてね。