14thシングル「全部、君だった。」
6thアルバム『アトリエ』、ベストアルバム『BLUE PERIOD』にも収録
聴けば聴くほどその良さがどんどん胸にしみてくる、そんな山崎まさよしの音楽に魅せられる人は少なくありません。
今回はそんな彼の曲の中でも、屈指の名作と名高い「全部、君だった。」をご紹介します。
この曲のリリースは2003年。14thシングルとしてリリースされました。
オリジナル曲のシングルとしては、約2年振りのリリースとなり、待ちわびていたファンも多かったのでしょう、オリコン週間アルバムチャートでは3位を記録しました。
同年にリリースされた6thアルバム『アトリエ』にも収録されましたが、アルバムバージョンとして、少し違うアレンジのものになっています。
シングルバージョンは、リマスタリングされたものがデビュー20周年を記念して2005年にリリースされたベストアルバム、『BLUE PERIOD』に収録されました。
MVに注目
ツッコミどころ満載……!
優しいギターの音と、切々と歌い上げる声が胸に響きますね。
カフェのようなところにいるようですが、ひどく雨が降っているようです。
失った愛を歌う、この曲の主人公の心のままのような天気ですね。
このPVが面白いな、と思うところは、こうやってしんみりした気分で映像に見入っていたらいきなりメイキング映像のような、撮影シーンが挟まれているところ。
主人公の心模様そのままの雨だな……切ないな……と思っていたら、いきなりです。
カラス板に、雨の雰囲気を作り出す為にホースで水をかけるスタッフの姿や、新聞か雑誌を投げる役のスタッフの姿まで。
思わず、あの、せっかくのいい雰囲気が、台無しなんですけど、と突っ込みそうになってしまいます。
そうこうしているうちにカフェは明るくなり、山崎まさよしがギターを弾きながら歌うのをうっとり堪能。
そして最後にもまた、突っ込みたくなるところが……。
ギターの演奏が終わるや否や、おもむろに立ち上がるので、あ、このまま立ち去って、余韻を残す感じなのかな、と思いきや。
いきなり何か食べ物を持って帰ってきて、食べ始めます。
意外な展開に驚いていると、さらにびっくりな展開が。
二口くらい食べただけで、また席を立つ山崎まさよし。
えっ、今度は何?水でも取りに行ったの?と思っていたら、今度は帰ってきません。
意外な展開に、ちょっとあっけにとられてしまいました。
あの食事シーンは、いったい何のために?一瞬しか食べてないけど……???と頭の中は疑問符だらけ。
最初に見た時は、映像のインパクトのおかげで感動の名曲が頭からぶっ飛んでしまい、我に返った後でもう一度見直してしまいました。
「全部、君だった。」の歌詞
ではここからは、歌詞を見ていきましょう。
雨が連れてきた思い出
いつのまにか降りだした雨の音
急ぎ足で行く季節の終わりを告げている
ふいに窓を閉じかけた手が止まる
しばらくは君のこと思い出さずにいたのに
些細なことからの諍いは
いつも二人の明日を曇らせた
今ならあの夜を越えられるかな
君の涙に答えられるかな
胸も苦しくて張り裂けるほど
全部、君だった
出典: 全部、君だった。/作詞:山崎将義 作曲/山崎将義
急に振り出した激しい雨は、心に押し込めていた何かを思い起こさせます。
やっと、普段は考えずにいられるようになっていたのに。
思いもかけない瞬間にふと、思い出してしまいます。
例えばこんな、めったにないような雨の降りが激しい日。
”君”がいた頃にも、こんなことがあって、二人ですごいねと外を眺めていた。
またある日は、傘の嫌いな”君”がびしょぬれのまま帰ってきた。
そんな、”君”と過ごした雨の思い出がいやでも蘇ってきます。
それだけ日常は全て”君”で彩られていたのに。
お互いにそばにいることが当然になって、些細なことで不満をぶつけ合うようになってきます。
お互いが、お互いの愛に甘えているのです。
今から思えば、最後になったあの夜も、”君”がどれだけ大切だったが思い知った今なら、最後にしないという選択肢ができたかもしれません。
もう過ぎてしまったことなのに、そんな風に思わずにはいられない。
それくらい、彼の全部は”君”で埋め尽くされていたのです。
今なら……
互いのぬぐいきれない淋しさを
冷めた朝の光の中でうやむやにしてきた
心にもないうらはらな言葉で
わざと二人は傷つけあったね
今なら上手に伝えられるかな
いつも微笑みに応えたかった
胸も切なくてかきむしるほど
すべて、君だった
時は静かにかけがえのないものを
遠ざかっていくほどあざやかに映しだす
どんなにやるせない気持ちでも
どんなに明日が見えなくても
温もりだけをたよりにしていた
出典: 全部、君だった。/作詞:山崎将義 作曲/山崎将義
いつしかすれ違うようになって、一緒にいるのに淋しさを感じる時がありました。
でもその原因を突き止めることもなく、なんとなく過ごしてしまった。
二人でいる生活に慣れ、お互いのことが思いやれなくなっていたのかもしれません。
相手に求めることが多くなりすぎて、ぶつかり合うようになります。
時には引っ込みがつかなくなって、酷く傷つけあうことも。
そんなこと、本当はしたくなかった。
でもあの頃は、何をしても離れることはないと、もしかしたら自惚れていたのかもしれません。
こうやって離れてみたら、なんであんなに傷つけてしまったのだろうと不思議にさえ思えるほどなのに。
時が過ぎれば過ぎるほど、思い出は薄れていくばかりか、余計に切なくなるばかり。
”君”がいたあの頃は、外でどれだけ嫌なことがあっても、”君”のもとに帰ってくれば、それでよかった。
”君”がいてくれれば、どんなことにも耐えられた。
その気持ちに、ずっと変わりはなかったのに。